ありがとうセレーネ、さようならかぐや [JAXAクラブ]

噴射時間は2分20秒ほど。そして速度は秒速2.5mほど遅くなりました。秒速1,600mが秒速2.5m遅くなるだけですから、ごくわずかな変化にしかすぎないのですが、そのまま月の裏側を半周回り、南極付近から表側に出てきたときには、もう地上スレスレの軌道となっていました。

午前3時10分をすぎると、管制室に詰めている関係者は「かぐや」から送られてくる高度計のデータに注目しはじめます。レーザー光線で月面までの距離をメートル単位で正確に測る装置で、そのデータは1秒ごとに送られてきます。その数字の変化で、地面が迫ってきたことがはっきりと分かります。

3時20分には「約600mの高度です」とのアナウンスが流れます。管制室には間断なく「オー」とか「アーッ」、「近いー」との声がわいています。高度計のデータがグラフで表示されるため、その変化はまさに地形の凹凸を意味しています。それを眺めながら、思わず声が出てしまったようです。

3時24分「衝突予定時刻、1分前」とのアナウンスに一瞬管制室は静まりかえました。そして25分、管制室は拍手と歓声に包まれました。2時40分のエンジン噴射を終えてからはただ見守るだけでしたが、月を半分回った後、予定地点とほとんど違わぬ、狙い通りの地点に“制御落下”させることができたのです。

そして、記者会見では、「正確さを数字で言うと、どの程度?」との質問も出ました。数字を上げて説明するには分析を待たねばなりませんが、ざっと数km以内。相模原市を狙っても、町田市や八王子市(隣接している)に落ちることはない、というもの。月を半周回ってそれですから、すごいですね。「次の着陸機にも確実に生かせる」(佐々木プロマネ)技術だということです。

あの時の運用の様子が! どうやら直前までレーザー高度計で「かぐや」の高度を計測していたようです。 高度数百メートルを秒速1.6kmでカッ飛ぶ風景ってどんなんでしょうか。 しかし、最後までこれだけ密度の高い運用がなされてホント「かぐや」も幸せ者ですよ。