先行き混沌のGXロケット 鍵はJAXA宇宙輸送系の企画力 [日経BP]

選択肢は「GXを開発するか、否か」ではない。「技術開発とIHIの“売れるロケット”は両立するか」なのである。

ここで鍵になるのは、多分にJAXA宇宙輸送ミッション本部の企画力であろう。かつて、旧宇宙開発事業団の宇宙輸送系部署は、H-IIロケットを企画し、さらにその先にH-IIAロケットを企画する能力を持っていた。再突入実験を重ねて、無人ミニシャトル「HOPE」を開発するという構想は結局うまくいかなったが、ともかく新しい構想を次々と立ち上げる能力を持っていた。

H-IIAの液体ロケットブースター(LRB)がキャンセルされた時も、すぐに固体ロケットブースター(SRB)を4本装着したH-IIA204型の構想を提出できたし、ISSへの貨物輸送船「HTV」のための打ち上げ能力が必要となった時も、種子島の射点設備の改修が小規模に留まる、H-IIBロケットの構想を打ち出すことができた。

これら過去の事例に見るような機動的な企画を立ち上げる能力を、宇宙輸送ミッション本部が現在も保有しているならば、今こそGXの技術開発要素を救い、低コストで、なおかつIHIへの技術開発も含めた産業支援ともなる、あらたな提案ができて然るべきだ。それは、長年続いたロケットエンジンにおける「ロケットエンジン本体は三菱、回転機械であるターボポンプはIHI」というシェアの切り分けにも踏み込んだ、「国内ロケット2社体制」につながるものとなるだろう。

しかし、今のところそのような話は聞こえてきていない。

このままいくと、GXロケットは大変不幸な結末を迎える可能性が強い。単に開発を中止すれば、炭化水素系エンジン技術という、日本の宇宙開発の将来にとって不可欠の技術を開発するチャンスが失われることになる。開発を継続すれば、多額の出費が様々な宇宙計画を圧迫することになる。「GXさえなければ実施できたのに」と恨みの涙を流す計画がでてこないとは限らない。

プロジェクトのテコ入れ以来は順調に進み最近では実機型エンジンの600秒燃焼試験にも成功していてそれは大変良いことですが、何せ遅きに失してコストの肥大化を招いたのが痛いですよね。それも大半はLNGエンジン以外の部分で。