小惑星探査機「はやぶさ」のイオンエンジン異常について [JAXA]

うわああああああああああ

小惑星探査機「はやぶさ」は平成22年6月の地球帰還に向けて、第2期軌道変換を実施中でしたが、11月4日(水)(日本時間)に、作動していた主たるイオンエンジン1基(スラスタD)の中和器の劣化による電圧上昇により、自動停止していることが確認されました。以降、同スラスタの調査及び復旧を試みてきましたが、現時点では、まだ再起動に至っておりません。

JAXAでは、現在、探査機の状況を確認するとともに、地球への帰還に向けた対策について検討を進めています。検討結果がまとまり次第、あらためてお知らせいたします。


【注】「はやぶさ」は主推進装置として4台のイオンエンジン(スラスタA〜D)を搭載しており、各スラスタの状態は以下のとおりです。第2期軌道変換ではスラスタC,Dの2基で地球への帰還を計画しておりました。

  • スラスタA:打上げ直後に動作不安定等があったため、運用を休止中。
  • スラスタB:中和器の劣化による電圧上昇があり、運用を休止中。

       (平成19年4月以降)

  • スラスタC、D:それぞれ中和器の劣化による電圧上昇の傾向が生じている。

       なお、スラスタCについては現在停止中であるが、稼動することは確認している。

とりあえず今回停止したイオンエンジンはDで、Cは劣化傾向が出ているが動作可能、Aは打ち上げ当初より不安定だったため予備と。現状としてはまだ何とか帰還可能なように見えますが、性能が落ちてきている分来年6月までに増速が間に合うかどうかがキモですね。いざとなればAも動かせなくもなさげですがこれが最も未知数。殆ど使っていないスラスタなので劣化の問題は無いわけですがどんなもんでしょうか…
しかし、リアクションホイールよりも先にスラスタにガタが来るとは。リアクションホイールに関しては万一停止した場合にでもイオンエンジンで増速しつつ制御できるプログラムが既に登録されているようですが、Dが使えない状況でも有効なのでしょうか。

はやぶさリンク:イオンエンジンに異常、ついにエンジン1基に [松浦晋也のL/D]

2007年4月にはスラスターBが、中和器(加速したキセノンイオンに電子を与えて電気的に中和する装置)が、電圧上昇を起こしたため運用を中止した。残るCとDも、劣化が進み、推力は5mN程度しか出なくなっていたと聞いている。

はやぶさは、来年3月までCとDを噴射し続けて、地球帰還に必要な速度を稼ぎ、残る6月までの慣性飛行中に、より正確にオーストラリアのウーメラ砂漠にカプセルを落とせるように軌道修正を数回にわたって行う計画だった。

今回この計画が崩れた。エンジン1基では3月までに必要な増速量を稼ぐことができない。

ここからは今後の検討課題であり、私の推測が入る。

エンジン推力が足りなくなったなら、運転期間を延ばすしかない。おそらく今後、はやぶさは残るスラスターCを6月の地球帰還ぎりぎりまで噴射することになるのではないか。
この場合、軌道修正は、地球に近づいてからの一発勝負となる。地球に近いと軌道修正のために必要な噴射量も大きくなる。もう化学スラスターは使えないので、例のキセノン生ガス噴射で最大限の補正をかけるしかないだろう。

残るスラスターCがダメになった場合は、危険承知でスラスターAを再起動することになるだろう。Aは電源系にトラブルがあって、B〜Dとの同時使用は危ないということで休眠状態にあった。逆にB〜Dが使えなくなれば、Aの使用をためらう必要はなくなる。

逆にAを使える状況になってきた、という話らしい。だとするとまだ余力はあると言えそうですが、とりあえずはやぶさチームの検討結果待ちですね。ここまで来たならもう信じるしかありません。

「はやぶさ」イオンエンジン1基に異常 [月探査情報ステーションブログ]

はやぶさは、合計で4基のイオンエンジンを搭載しています(スラスタA〜D)。このうちAは打ち上げ直後に動作不安定等があったため運用を休止中、Bは中和器の劣化のために2007年4月以降運用を停止しており、残るB、Cの2基を使って地球帰還に向けての運用を続けていました。

残るスラスタC、Dは、徐々に中和器の電圧上昇の傾向が見られており、既にCは運用を停止(但し、動作することは確認されています)、今回電圧の急上昇によりDの運用が停止したものです。

JAXAとしては対策を検討し、検討結果が出次第改めて報告する予定です。

(注)中和器とは、イオンエンジンの中に搭載されている装置の1つです。「はやぶさ」のイオンエンジンは、キセノンという気体のガスを電気的に分離させてイオン化し、それに高い電圧をかけることにより、イオンが電圧の力により加速されることで推進力を得ます。この際、イオン化されたガスをそのまま噴射すると、探査機自身が負に帯電してしまうため、電気的に中性にするための装置を通して、イオンを噴射します。この装置が「中和器」と呼ばれるものです。

こっちもちょっと詳しく。

探査機「はやぶさ」帰還ピンチ、エンジン1台停止 [読売]

宇宙航空研究開発機構によると、今月4日、作動していたエンジン1台が停止。9日まで復旧、再起動を試みたが、作動していない。劣化や動作不安定などの理由で、動かしていなかったエンジン2台についても再起動を試みたが、動かなかったという。

うむ、これはA・Bスラスタの事でしょうかね? とするとAは起動が出来ていない? ただ、単に起動するというものではなく若干の調整が必要になる場合もあるようなので、単に駄目になったのかどうかはまだ判りません。また、以前の情報になりますがBについても電圧の上昇が見られるものの動作は安定していたという話もありますし、あまり悲観ばかりしないでおこうと思います。帰って来い「はやぶさ」!