小惑星探査機「はやぶさ」のイオンエンジンに異常 [Robot Watch]

はやぶさ」のイオンエンジンには、A〜Dの4つのスラスタが搭載されている。今回、問題が起きたのはスラスタDで、中和器の劣化により電圧が上昇、安全装置が作動して自動停止したことが確認された。復旧を試みたが、今のところ再起動できていない。

スラスタAは、動作不安定等があったために、打上げ直後に運用を停止。3基のスラスタでイトカワに到着したが、帰路、今回と同様の問題により、2007年4月にはスラスタBの運用も休止した。スラスタCは稼働するものの、こちらも中和器の電圧は高い傾向にある。

現在の第2期軌道変換では、スラスタCとDの2基による噴射で地球へ帰還する予定だった。これが1基となると、加速が足りなくなる恐れがある。スラスタCのみで帰還する場合、噴射時間を長くとる必要があるので、再突入への難易度も上がる。早めに加速を終わらせて、地球からなるべく遠いうちに軌道修正する方が確実だからだ。ギリギリまで加速してからの軌道修正にはリスクが伴う。

一方、今回の帰還は諦め、新しい軌道を計算することも考えられるが、すでにエンジンの耐久年数を超えて運転しており、再度の延期によって、スラスタCまで止まってしまうことも十分あり得る。現在、JAXAでは対策を検討しているところだが、どのような方針であっても、リスクを覚悟する判断が必要となるだろう。検討結果がまとまり次第、改めて報告するということなので、それを待ちたい。

Cスラスタについては単独運転の実績があるので運用自体には問題無いと思いますが、これがいつまで持つのか、帰還までに必要な増速量を得られるのかがネックですね。「はやぶさ」自体既に設計寿命を数年超えてますし、Cスラスタも徐々に性能の低下が出てきています。いざとなると寿命寸前のBをギリギリまで動かすか、一か八かのAか。今まさに策を練っている所でしょうね… 今から帰還を更に延ばすというのもかなり危ういものになりますし。

折しも、日本では政権交代が起こり、予算の付け方が大きく変わろうとしている。予算の削減ばかりに目が行きがちだが、本来の目的は、必要な場所にこそ増やすことであるはずだ。前原誠司・宇宙開発担当相を始めとする政治の判断にも注目したい。

もっともな話なんですが、現政権がやってるのはどこを削るか、どこを削らないかという感じで、どこに予算を増やすかという所には目が行っていないようにしか見えないのが…。