JAXAタウンミーティング 第39回開催報告 [JAXA]

MRJとかH-IIB/HTVとか。

石川:ホンダジェットの場合、いわゆる5〜6人乗りのビジネスジェットとして開発され、しかも純民間企業努力で開発しています。MRJに比べると、開発費のけたがひとけた半くらい違います。ホンダジェットの場合、ある種、企業のリスクと努力で20年近く前からやっています。まだ極秘の状態のとき、研究レベルでのサポートはしましたが、大がかりなサポートは相手側からの要請もありませんし、きちんとした形ではやっていません。
一方、MRJは、ある種、国策プロジェクトと定義されています。これも三菱重工に最初から決めたということではなく、公募したところ、三菱重工富士重工他のチームが応募し決定されたわけです。JAXAは、お金の面よりも、我々がもともと持っていた技術を更に発展させ、あるいは大きいスケールでサポートすることをやっています。
対価という意味では、いろいろと複雑ですが、基本的な考えとしてはもらっていません。しかし、風洞試験をやる場合、基本的には有償で貸しています。すべての作業に対価をもらうことはありません。

石川:つい最近、主翼が複合材料からアルミに戻すという発表がありました。細かいことは三菱さん社内のことですが、私どもにも説明をしていただいたのは、MRJの設計の場合、翼が三次元的に反った空力設計になっていて、それをCFRPで詳細設計していくと、実は余り軽くならないということがわかってきたという説明でした。もちろん、開発費用もCFRPにするとかさみます。幾つかのトレードをした結果、MRJの少なくとも最初のバージョンにおいてはCFRPを諦めることになったと思います。私もCFRPの研究をやっており、ある種残念です。アルミにすると重量増となりますが、最初はもっと重量が増えると思っていましたが、その差が若干しかないということがわかり、そのために相当のコストをかけるのであれば、アルミに戻しましょうという決断であったと聞いています。
もう少し突っ込んだ説明をすると、CFRPの場合、燃費のメリットよりも錆びないことからくる整備コストの低減が大きな採用動機です。錆びないことで生ずる整備費の低下をボーイング787でも売りにしていますが、MRJでは、とりあえず当初の機体はアルミでいくことになりました。
先ほどのライバル機、カナダの会社がMRJと同じエンジンで、主翼CFRPだと言っています。ところが、カナダの関係者が言うところですが、この会社は複合材料技術には弱く、実は今まで三菱重工がこの部分をつくっていたのですが、ライバルには当然供給を停止したので、これは個人の見解ですが、カナダは言っているだけで多分つくれる会社はない状況にあると思います。もちろんライバルそれぞれに優劣はあるのですが、少なくとも現状の設計では、空力抵抗にはライバルと相当な差があるので、先ほどの燃費の優位というのは当分維持されると思っています。
私の希望的な予測としては、将来のもう少し大きくしたバージョンでは、主翼CFRPにまたチャレンジされる可能性もあるかもしれません。すべての旅客機では、将来的には主翼CFRPになっていくという大きな流れがあり、そういう方向になってくると思います。

ホンダジェットには昔にほんのちょっと関わったことがある模様。炭素複合材は追々適用していきたいという希望を持っているそうですが、当面はアルミで競争力を付けていくそうです。

遠藤:H-IIBだけで言うとそのとおりです。しかし、H-IIBの構成要素は H-IIAと共通です。今、H-IIAは既に15機、1回失敗しましたが、このH-IIBは16機目です。そういう意味で言うと、来年くらいまでには20機の実績が出て、残念ながら1回失敗しているので、20分の1の実績が実証できると言えると思います。
競争力ですが、確かに静止打ち上げ能力というと、アリアンロケットは約9トン、今は8.9トンあります。H-IIBは約8トンなので、打ち上げ能力としては小さいです。経済性、国際競争力という観点で言うと、航空機と同じような話をさせてもらいますが、日本とヨーロッパでは仕組みが違います。国で基盤維持のために支えているベースが、アリアンロケットは日本の倍どころではありません。年間でいいますと100億近いお金が投入されています。残念ながらコストで言うと、正確には公表しませんのでわかりませんが、アリアンロケットは日本のH-IIAより高いと思います。しかし、基盤維持のためにヨーロッパが、要は基盤維持でベースを持っているお金がずっと大きいので、結果的にロシアのロケットと競争ができているというのが状況です。したがって、今の日本の仕組みで行くと、競争力は残念ながら落ちます。
ただ、今後、経済が均一になってくれば、私は日本は競争力が出てくると思っているので、長期的に見れば心配はしていません。すぐにはなかなか難しいと思います。

EUは強い後ろ盾があって盤石ですねえ。H-IIAは平均して毎年およそ2機ずつ地道に実績を積み重ねてきてようやく20機に手が届こうとしてますが、ホントよくここまで来たと感じます。1回でも失敗しようものなら最低1年はストップですから… いやまあ何も無くとも1年空いたりしてますけどw せっかく民間に移管されたんで、MHIには強気に行って欲しいですね。