イトカワ着陸4周年

昨日の復活劇で失念していましたが、4年前の11月20日、「はやぶさ」は88万人の名前が刻まれたターゲットマーカーをイトカワに送り届け、それを目印にイトカワ着陸を果たしたのであります。その後本当に色々ありましたが、地球帰還まであと半年強。思い起こせばここまで本当に長かったような短かったような…

今週のはやぶさ君 2009年11月20日[更新] [JAXA]

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イオンエンジンは、プラスに帯電したキセノンイオンを電気の力で加速し放出するためのイオン源と、 負電荷を持つ電子を放出してキセノンイオンを中和するための中和器から成り立っています。
ですので、中和器が働かなくなってしまうと、プラスに帯電した粒子だけを放出する はやぶさ君本体が マイナスに帯電してしまうのです。はやぶさ君本体がマイナスに帯電してしまうと、 せっかく加速してイオン源から放出したキセノンイオンが、 静電気の力ではやぶさ君に戻ってきてしまいます。
プラスに帯電したキセノンイオンがマイナスに帯電したはやぶさ君にひきつけられてしまうのですね。
ですので、中和器が使えない状態では、はやぶさ君はイオンエンジンを使って加速することができません。

今のところ、はやぶさ君が持っているのは、 既に中和器が劣化して使えなくなってしまったイオンエンジンB, Dと、 イオン源の調子が悪いイオンエンジンAと、 まだ使えるが中和器がやや劣化し無理をさせられないイオンエンジンCです。
そこで、イオンエンジンのイオン源と中和器とを分けて考えることにいたしました。
イオンエンジンAはイオン源の動作が不安定なためにほとんど使用しておりませんので、 その中和器は「新品同然」です。
一方、イオンエンジンBとDは中和器が劣化しておりますが、 イオン源のほうは動作しております。
そこで、イオンエンジンBのイオン源とイオンエンジンAの中和機を組み合わせたところ、 順調に動作し、はやぶさ君が加速する様子も確認されました。

はやぶさイオンエンジンチームは、 打ち上げ前に中和器にバイパスのダイオードを組み込む工夫をしていて、 それは地上試験は行ったことは無かったのですが、今回、軌道上で試験をして機能を確認しました。
このバイパス回路によって、 別々のエンジンのイオン源と中和機を組み合わせて運転をすることができたのです。

地上試験が出来ないにもかかわらずあえて搭載していたこの機能、まさにぶっつけ本番の「こんなこともあろうかと」ですが、スラスタAのイオン源が使えず中和器だけが生きていたというのは今となっては逆に僥倖でしたね。