はやぶさ帰還へ―宇宙で輝く日本の得意技 [朝日]
日本の小惑星探査機「はやぶさ」が7年ぶりに地球に帰ってくる。6月13日に大気圏に再突入し、本体は燃え尽きるが、切り離されたカプセルはオーストラリアの砂漠に落下する。
日本の宇宙技術にとって、大きな一歩をしるすことになるだろう。
往復の成功ばかりではない。カプセルには、小惑星で採取を試みた表面物質のサンプルが入っていると見られている。その回収に成功すれば、世界初の快挙となるからだ。無事な帰還とカプセルの中身を楽しみに待ちたい。
はやぶさが撮影した写真や組成に関する観測結果は、世界の科学者たちを驚かせた。米国の科学誌サイエンスは、はやぶさ特集号まで発行した。「これだけでも真にすばらしい」と、大先輩である米国の惑星探査関係者からは最大級の賛辞が寄せられた。
サンプル採取は、着陸した瞬間に弾丸を発射し、舞い上がるほこりをとらえる仕組みだ。実は、弾丸はうまく発射されなかったらしい。だが、着陸の衝撃で舞い上がったほこりがとらえられたのでは、と期待されている。
はやぶさは、精巧なロボットといってもいい。イトカワまでは電波の往復だけで40分かかり、いちいち地球からの指示を待つわけにはいかない。イトカワの表面の様子をカメラでとらえ、自力で観測や接近、また着陸などの作業をこなさなければならなかった。
ロボット技術は、日本のお家芸であることを改めて印象づけたともいえるだろう。
長い旅の間に、部品は次々に壊れ、「動いていることが奇跡的」と当事者がいうほどだ。7週間にわたって通信が途絶したこともある。何度もそんな絶望的な状況になった。
宇宙航空研究開発機構の探査チームはそのつど、知恵を絞ってやりくりし、残った装置を最大限に生かして危機を乗り越えてきた。当初の予定より3年遅れでの帰還にこぎつけた。
宇宙開発は多くの資金を要し、また範囲も広い。日本は何をめざすのが効果的か。独自の技術や発想が生かされたはやぶさの活躍は、大きな手がかりを与えてくれそうだ。
これは良記事。