6月24日のキュレーション記者会見(後半) [松浦晋也のL/D]

NHK:サンプル回収作業のプレスリリースから、コンテナ内容の発表までどれぐらいかかるか。

藤村:イトカワ起源の物質が見つかり次第発表する。ただし、それを見つけるのが難しい。

川口:(当日配布の資料では、発表は8月となっているが)8月以降でなければ発表できないというわけではない。

朝日新聞:ふたを空けて中を見るのはいつか、

上野:キュレーション設備のチェンバー第2室に移動してすぐだ。
藤村:作業スケジュールは早くなったり遅くなったりするが、手順が前後することはない。

朝日新聞:ということは6月中に空けることはないのか(注:配付資料には「7月以降」と書いてあった)。

上野:ひとつしかないサンプルなので着実にやるようにしたい。
藤村:例えばボルトを緩めてはずす場合も、ボルトの緩み止めのワイヤをはずし、ボルトを回す。ボルトや緩み止めワイヤにもサンプルが付着している可能性があるので、すべて回収の上ナンバリングして保管する。ネジをはずすだけでもかなりの時間がかかる。

毎日新聞:採取できるサンプルはとても小さいものということだが、それは砂粒ぐらいと思えばいいのか。もっと小さなものを予想しているのだろうか。

藤村:微粒子だ。微粒子をサンプリングする体制を整えている。

日経新聞:サンプルコンテナは真空の宇宙空間で閉じているが、採取したガスはリークがあったというレベルなのか。

藤村:その程度(注:Oリングシールからのやむを得ない漏洩)のガス圧力だった。

日経:イトカワ由来のガスなのか。

藤村:まだなんとも言えない。

朝日小学生新聞:キュレーション設備はどの程度小さなサンプルを扱えるのか。

藤村:100倍の光学顕微鏡を装備しており、10μm程度のサイズのサンプルまで採取可能。

ニッポン放送:サンプルが採れたとして、どこまでデータを公開するのか。写真とかスペクトルとか。

藤村:科学データを出すと論文にならなくなってしまうので、事実関係のみを公表することになると思う。データの開示は慎重にやりたい。

読売新聞;打ち上げ時に比較対照用のダストサンプルを内之浦で採取していると聞いているが、比較はどの時点で行うのか。そこで何か分かったら発表するのか。

藤村:確かに比較用サンプルは採取してある。それらも同時に分析を進める予定。

川口:何かが入っているかといえば、まず間違いなく入っています。それはもう、打ち上げ時に紛れ込んだダストが往復飛行して戻ってきていますよ。イトカワ起源かどうかを確認し次第発表したい。

不明:NASAの協力者はキュレーション要員の8名に入っているのか。

川口:NASAとの間にはMOU(覚書)を交わしてあり、それに従って協力し合っている。初期分析で共同作業を行うが、キュレーション要員8名にNASA研究者は入っていない。作業には立ち会っており、モニタリングと助言を行っている。

読売:サンプルは実際問題としてどの程度の大きさのものまで回収できるのか。

上野:5〜10μmのサイズが限界になる。ただし将来の分析技術の進歩に期待して、コンテナ以下すべてのはずした部品は厳重にすべて保管する。いずれ1μmのサンプルも取り扱えるようになった時のために備えての処置。

採取されたガスの圧力は予想されるリークと同レベルだったらしい。となると、大半は地球大気でしょうか。リークが発生するのはどうしても仕方ないものですが、サンプルからの揮発成分が含まれる可能性もあります。あと打ち上げ時に紛れ込んだホコリなども含まれる可能性があり、部品単位でサンプルが付着している可能性があるので、確認作業はどうしても時間がかかる模様です。また、現在の設備では判別できないようなサイズにも将来的に対応するであろうことを見越してサンプルコンテナ以下は全て保管されるようです。