月周回衛星「かぐや(SELENE)」が明らかにした月内部からのカンラン石の全球表面分布とその起源 [JAXA]
久々にでかいネタが出てきました。
- 「かぐや」に搭載されたスペクトルプロファイラ(SP)を用いて、月全球にわたる7000万点にも及ぶ観測を行った。
- 得られたデータをカンラン石が持つ特有の波長(中心波長1.05μmの吸収帯)に着目して解析したところ、カンラン石に富む領域を新たに31か所(観測点としては約250点)発見した(図1)。
- また、過去の検出報告の多くは誤りであることが分かった。
- 以前から報告されていた3か所を含む、カンラン石に富む34の領域は、どれも地殻の薄い巨大衝突盆地の周りに限られていた(図2、3)。
- 月の裏側などの地殻の厚い部分や、従来カンラン石に富むのではないかと考えられていた中程度のクレーターの中央丘(※3)にはほとんどカンラン石は見い出されなかった(図2、3)。
- このことから、月の表面に見出されたカンラン石は、かなり深い(約100km)ところにある物質、すなわちマントルが、巨大天体の衝突によって掘り起こされたものと考えられる。
- さらに、今回見つかった領域の反射スペクトルを詳細に解析したところ、このスペクトルが、カンラン石に富む岩石の中でも、マントル起源と考えられるダンカンラン岩(ダナイト)に非常に近く、月の下部地殻にあると考えられているトロクトル岩(トロクトライト)とは一致しないことも分かり、月表面で検出されたカンラン石がマントル起源であることを裏付ける。
精度の高いスペクトルプロファイラの観測によりマグマより深いマントル由来のカンラン石分布が新たに発見され、さらに過去行なわれた観測による推定の誤りも明らかに。また、クリープと呼ばれる放射性元素に富む岩石の層がこれらと同じ場所には濃集した形で存在していない事から、月形成の過程に大きく関わる発見だろうという事のようです。