特集:はやぶさに挑戦心を見た 川口淳一郎さんと田中耕一さん対談 [毎日]

ホントに毎日はよくこんなに次々とインタビュー記事出しますよねいいぞもっとやれ。そして今回は対談形式で、お相手はあの方。

 −−田中さんは、早くからはやぶさに注目していたそうですね。

 田中 特に関心が強くなったのはイトカワに着陸したころ(05年)です。日本のチームが、米国も驚くようなことをやってのけたのだとびっくりしました。高品質と高い信頼性が日本のものづくりの神髄ですが、その分「失敗するかもしれないもの」が認められにくい土壌があります。それだけにはやぶさは、従来の日本にはなかったものづくりの成果ではないかと感じました。

 川口 日本には失敗を恐れる文化、あるいは100%過去の成功の蓄積の上に立った計画でないと進めないという悪い癖があるようです。はやぶさは、ひょんなことから実現しましたが、日本的な考え方からすれば、とても通らない計画だったと思います。

 田中 日本はこれまで欧米に追いつけ追い越せでやってきた努力の結果、世界の最先端に立つ分野が増えてきました。これからは「失敗してもいいから挑戦する」方向に進むべきです。

 川口 宇宙開発でも、若い人の中には「失敗は許されない」と話す人がいます。日本人には普通の感覚かもしれませんが、私は「とんでもない」と思います。新しい発想を評価する方法がない現在の教育は問題でしょう。「どれだけ完ぺきにできたか」をチェックする試験中心の評価法を変える必要があります。

 −−環境も重要ですか。

 川口 そうですね。私が大学院生として宇宙研(東京大宇宙航空研究所、現JAXA宇宙科学研究所)に来た時の印象は「変な人ばかりだなあ」。先輩たちには「こうだからできない」という発想がなく、「こうすればできる」しか考えていませんでした。新しいことを考えるのが当たり前、という環境で培われたものもあると思います。

 田中 いろいろな分野の人間が参加することは大切です。失敗しても失敗で終わらせない、逆に独創に結びつける発想の転換が生まれるのではないかと思います。私のチームでも、化学や医学の専門知識を持たない若い研究者が「ここがうまくできない」と、実験での失敗を相談してくれたことがきっかけで、開発を目指す分析装置の感度が1万倍向上した経験があります。

 川口 最近の大学院生や若手研究者は、教育を受け過ぎているように見えます。「研究は(本や論文を)読むことから始まる」と思っている。しかし、それらはすでに過去のもの。そんなものを読んでも新しい発想は生まれません。だから学生にはまず「本を読むな」と言います。懸命に新しいことを考える力、自分で切り開く力を付けなければ、どんな仕事もできません。

 田中 自分で考える癖をつけることが大切です。今の若手は学ぶことが多すぎて考える時間がない。考えなければ、失敗に耐える力も持てないのではないか、心配になります。

失敗の数を数えることだけに終始していては出来ない発想ですね。完璧さを追求するだけでなくあえて冒険することも教育課程で実践すれば、リスク対応レベルもより向上させることが出来ると。日本人の気質としてなかなか難しいところがあるかも知れませんけどね。

 −−はやぶさイオンエンジンが停止したとき、2基の故障していない部品を回路でつなげて復活させたエピソードは有名ですが、トラブルを想定した対策で、使わなかった工夫もあるのですか。

 川口 あります。最後に1台残った姿勢制御装置が壊れた場合のプログラムも、はやぶさに送ってありました。イオンエンジンの首振りを使って制御する方法で、すでに地上試験もしていました。

リアクションホイール無しで姿勢制御する方法。やはりこの機能も既に実装していたようです。これはこれで見てみたかったような…w