川口淳一郎JAXA教授記念講演 NASAでは「はやぶさ」は出せない [産経]

 構想は30代のとき。それまで宇宙は片道飛行だったが、資源の利用などを目指したら往復となる。アポロは月だが、地球の引力圏の外にあるもので小惑星となった。

 日本の宇宙開発は、あまりにも米・旧ソ連と比べ遅れている。外国の機関と勉強会を開いて、ビギナーにもできそうなものとして小惑星とのランデブー(接近飛行)を構想していたが、なかなか実施に移せなかった。NASA(米航空宇宙局)はそれをいとも簡単にやってしまった。

 宇宙開発は先進的とみられるが違う。企業の人も分かるだろうが、試作品でクレームが出ないことはまずない。それで実験をやるので、どうしても保守的にならざるを得ない。

 でも、私どもは保守的になるのはどうしても嫌だった。それで、「はやぶさ」のように世界初をねらった。NASAでは「はやぶさ」のようなものは出せない。

 世界初で、全く試みられていない、テキストも論文もない最初の道だった。高いところに登って展望すると技術の水平線がみえてくる。その観点で宇宙開発のみならず、科学技術で、みなさんはテキストを作るようなことをしてほしい。

はやぶさ」が生まれたのは川口先生のこの負けず嫌いが発端らしいのですがw
こちらの寄稿によると「NASAがNEAR探査機やるならこっちはイオンエンジンでサンプルリターンだ(意訳)」と、いわば啖呵を切って見せたのがきっかけで立ち上がった工学実証探査機は「皆の予想を覆し」先日ついに月以遠の天体表面との往還に世界で初めて成功してしまいました。それは満身創痍でよろめきながらのゴールでしたが、こと小天体探査の分野においては結果的にNASAより10年は先んじる成果だと言ってもいいと思います(はやぶさ打ち上げは2003年なので)。
まあもちろん仮にNASA小惑星探査にガッツリ予算を注ぎ込んできたらものの4・5年で同クラスの探査機を仕上げてきそうな気はしますが、それでもこうやって挑戦しない限り決して見えてこない展望が実際に今こうして眼前に広がっているわけです。高い目標はどこかで持ち続けて欲しいですよね。