はやぶさサンプル回収;10月6日午後5時半からの記者会見 [松浦晋也のL/D]

(追記あり)

当初7日に変更されていたブリーフィングが、報道を受けてか急遽本日の記者会見に。ナイスレポが2つ来ております。ありがとうございます。

 前回のブリーフィングで電子顕微鏡での観察をするとお伝えしたが、それが実行できた。

 先週後半から、サンプルキャッチャーA室の壁面をへらでぬぐい取るようにこすって、そのまま電子顕微鏡で観察している。電子顕微鏡でしか見えないサイズの微粒子が見えた。
 ヘラの写真を出しての説明。ヘラの先の部分の長さが6mmぐらい、幅が3mm強。
 現在電子顕微鏡の画像を解析しているところ、画像の提供は今日ぎりぎり間に合わなかった。一両日中に画像を準備して提供する。作業自身は淡々と続いている。

どうやら電子顕微鏡が稼働し始めたそうで、これまで見えてこなかったものがグッと見えてきたようですね。新型のテフロン製ヘラの写真あり。

現在ヘラでぬぐい取った範囲は、1/10ぐらい。この作業を10回ぐらい繰り返せば捌けるだろう。ただし将来の進んだ採取技術のために全部をこすることはしないと思う。

読売新聞:電子線を当てると、元素の組成もわかるはずだが、100個のうちどれほどが初期分析にかけるに値するかはわかったか。
上野:元素構成だけで地上のものではないというのはかなりむずかしいと思う。これは金属片だから違うよというぐらいはわかる。蛍光X線だけでは同位体比や結晶構造はわからないので、初期分析をしないとなんともいえないだろう。

日本経済新聞:一ミクロンサイズでもサイエンス的な意味はあるのか。
上野:同位対比はわかるので、どこ由来かは確認できる。どうやってできたかまで

NHK:これまでの光学顕微鏡と異なる特徴のものが見つかっていると報道されているが。
上野:正直言うと、顕微鏡写真の外観だけは分からないなと感じている。今までも「地球由来じゃないの」という粒子があったわけだが、外観だけでは分からないというのが正直な感想である。明らかに金属片のようなものは見た目でわかるが、まったく判別できない領域(大きさ)のものを扱っている、まあそんな感じです。

先週末から今回のヘラをつかっての採取をやっているが、一サイクル一週間はかかっている。今月末ぐらいからB室にいきたいと思っている。Bの状態が見えてきたところで、総量の15%ぐらいを初期分析に回るということになっている。全部スプリング8で分析するというわけではなく、いろいろな手法を使う。

写真は撮っているが、写真の調整が必要なので。

NHKスプリング8の分析以外にどんな分析をするのか。
上野:粒子をスライスして顕微鏡でみると結晶構造が見えてくる。同位対比がわかると生成時の温度環境で分かる。また破壊的分析では蒸発させてガスを分析するということもできる。

不明:B室でも同じことをやるのか。
上野:そうだ、大きな粒子があったらその回収を行う。次にヘラで小さな粒子をすくう。ヘラを電子顕微鏡で見るのは当初からの予定ではなかった。小さな粒子をみるために考えた手法。

不明:初期分析に回す線引きはどこで行うのか。
上野:とりあえず数があるので、それぞれの分析研究者に配布はできる。
フジテレビ:スプリング8に回す時期と、結果がいつごろになるかは分かるか。
上野:スプリング8の試験予約を確認しなくてはならないが、いったん試験が始まれば比較的早く結果がでると思う。

記者:初期に見つかった大きな粒には明らかに地球由来のものがあったけれども、今回判別がつかない小さな粒がぐっと増えたということか。
上野:まあそうですね。正直、大きな粒子をみていた時は悲観的な雰囲気もあったんだけれど、可能性は広がったなと。確率的にチャンスは広がったということです。

はやぶさウィークリーブリーフィング第9回 [大塚実の取材日記]

ただ1つ問題なのは
今回見ている粒子
ほとんどが光学顕微鏡では見えないサイズ
分析自身はこのサイズでもできることになっているが
実際にはヘラの上から
どうやって分離して初期分析のチームに渡すか

Q NHK
同位体比がわかれば温度が分かるのはなぜ
スプリング8以外ではどんな計測装置があるのか

A 予定しているものは幅広い範囲に及んでいる
1つには全体の個々の粒子の構造が分からない
粒子をスライスして透過型の電子顕微鏡で見てやると
それぞれの粒子の中でどんな結晶が作られているか

構造が見えるとどんな環境で作られたかというのが
結晶構造からある程度見えてくる

太陽系の星雲がどのくらいの温度でできたか
一部の同位体以上が起きると予想されている
例えば酸素の同位体異常が見えると
どんな温度環境でチリが少ないかを予想できる

一部の分析は破壊的な分析になる
一部をスライスして蒸発させてガス成分を調べることも計画

そしてスプリング8を使った同位体分析というのも計画には含まれている

電子顕微鏡で見るときは窒素雰囲気か

A 若干圧力を下げた状態で測定している

Q 粒をヘラでとるときは

感触としてはやはり、地球由来と断定出来ないものが増えたという所のようです。そこでお待ちかねSPring-8! 初期分析に回すのは全体のおよそ15%くらい、つまり今回見付かったものがこの15%に入るという事ですかね。初期分析はB室がどんなもんか見てかららしい。B室を開けるのは10月末の見通し。あと今回のミソは新型のヘラが上手く機能したという事ですが、ここから初期分析のために分けていく作業がまた大変なようです。あと撮影した写真は会見を前倒ししたこともあって用意出来るのは数日後。
具体的にこれぞ!というものが見付かったというニュースではありませんが、候補の母数が大幅に増えたということでかなり明るい材料には違いありません。続報が楽しみです。

それにしても、と思うのだ。書き方でうまく逃げてはいるが、メディアには何よりも、分かりやすく伝える使命があるはずだ(しかも「成分の特徴が異なるものがあった」という部分は完全に誤報だ)。そういう書き方をしておいて、「アンタが勝手に誤解したんでしょ」という態度はどうなのよ。読売新聞、というか、これを書いた記者には深く反省してもらいたい。

確かにこの記述は誤解を生みますね。取材でどのような回答を得たのかは分かりませんが、どちらかというとこの部分、「地球由来の特徴がみられなかった」だと思いますし。正確な情報は正式な発表を待つことですね。