12月17日午後6時からのあかつき事故原因究明の記者会見 [松浦晋也のL/D]

先日の報道で触れられた件も含めてFTA解析を実施中だそうです。

・姿勢異常を検知しての燃焼停止からの故障の木解析。資料中ハッチングしてあるのが現在可能性があると考えている事象。

現状で可能性があるのは
 異常燃焼による軸非対称燃焼
 その原因となるのは
  ・スロート後方後燃え:
  ・不安定燃焼
  ・インジェクタ噴射異常
     これらについては
     「実績のない燃焼条件で動作させた可能性があるので要因として否定できない」

 さらに原因として考え得るのは。
  ・フィルム冷却のクーリングの噴射異常
  ・燃料の高圧ガス加圧系に入っている逆止弁CV-Fの閉塞

読売:セラミックスラスターの耐熱温度は1500℃というが、実際にはどの程度の温度条件まで試験で確認しているのか。
稲谷:ものが壊れるかの判断は応力なので、応力で考えている。温度では考えていない。燃えかたによって条件のきつい部位は変わっていく。今、シミュレーションで、想定外の状況で応力がどう変化するかを調べている。温度だけでは議論できない。

稲谷:一般に最適混合比からはずして燃料リッチで燃焼させるほうが多い。少し最適より低い混合比で設計されているので、酸化剤リッチになると最適混合比に近づくので温度が上がっていく。設計点近傍では、酸化剤リッチで温度が上がっていく。

不明:今、どこか欠けているということには分かっているのか。そのことで6年後の再突入は。
稲谷:燃焼室とノズルでは、燃焼室は壊れていない。加速度が出ているので、ノズルはどうなったかは今検討中。今、予断を持つべきではない。
中村:今の状態を確認するのが先決。決してあきらめるようは状況ではない。楽観しているわけもない。

読売:インジェクターの温度は前回、150℃ほどで予定の範囲内だったと前回聞いているが、インジェクターには影響の及ばない設計だったのか。
稲谷:インジェクター温度が正常であることは、燃焼室が健全であることの傍証となる。

朝日新聞:不安定燃焼と、インジェクター噴射異常を細かく教えて欲しい。
稲谷:ある状態になると燃焼は安定せずにばたばたしたり息をついたりする。どうすればそういう状態になるかは、まだ分かっていない。インジェクター噴射異常は、吹き出し口の流量は上流の圧力と関係するかも知れない。燃料と酸化剤は混ざらないといけないが、圧力が予定と異なると、なにか部分的に詰まったり、よく混ざらなかったりする可能性がある。
稲谷:現象としては重なるかも知れないが、事象としては別。別に試験していきたい。
朝日新聞;フィルムクーリングの噴射異常とは?
稲谷:エンジンの冷やすために、燃料だけを内壁に沿って吹き出して、内壁全体を冷却している。この燃料を流すことをフィルムクーリングという。均一に流しているはずの燃料が均一でなくなったらどうなのか、とか、可能性を排除できないのでこの項目を残している。
朝日新聞:混合比を燃料リッチにしているというのはこのフィルムクーリングの分か。
稲谷:混合比は燃料と酸化剤の流量で定義している。フィルムクーリングの分も入っている。

朝日新聞:地上試験はもうやっているのか。
稲谷:現在計画中。ものをつくらねばならないので。すべてを年度内に行うのは難しいかもしれない。あかつき自身に噴射させる試験は、これで壊れたら後がないので慎重に行わねばならない。

青木:現在あかつきの運用は何人体制で
中村:海外局は使わず、クルージングフェーズと同じ運用をしている。

東京新聞:逆止弁は、特に新しい部品ではないということだが、具体的にどんなことが起きうるのか。
石井;得られたデータを説明できるよう調べている。非常にシンプルな構造。

共同通信:フィルムクーリングで何度温度下げることができるのか。
稲谷:やらないと壊れるのでやっている。
共同通信:燃料タンクの圧力が下がった場合、フィルムクーリングに向かう燃料のはどうなるのか。

毎日新聞:逆止弁が過去に閉塞した事例はあるのか。閉塞がはずれて今は復旧している可能性はあるのだろうか、
石井;どちらについても、おそらくあると思うが、これから調べる。ないということはないと思う。

松浦:今回の事故調査は人的組織的要因まで踏み込むのか。
稲谷;資料中にある「背景要因」はそこまで含む。
中村:すざくのXRS不具合調査も、人的要因まで含めて調査を行っている。今回もそこまでやる。

石井:噴射停止直前のデータを見ると、姿勢を元にもそうとする兆候がある。これはスラスターによる制御ができるということを意味する。(ノズル破損なりで)横方向の力がかかったとしても姿勢制御ができるということだ。6年後の投入の可能性はあると思っている。
以上

「あかつき」の金星周回軌道投入失敗の状況について [JAXA]

異常燃焼による過熱の他に後燃えや不安定燃焼、フィルムクーリングの異常などが想定されるそうです。地上試験については準備中。予断は許しませんが、現状でも姿勢制御が可能だろうという見通しにはちょっと安心させられました。

主エンジンに異常、破損か=あかつき金星周回失敗−宇宙機構が報告・文科省調査部会 [時事]

 主エンジンは三菱重工業などとの新開発で、燃焼器・噴射口を従来の重い合金製ではなく、世界で初めて軽いセラミックの一体成形とした。調査部会のある委員は記者団に対し「一体型のセラミック製の開発は過去、全部失敗している」と批判した。

このコメントした方、なんかセラミックスラスタのせいにしてますけどちょっと予断入りすぎじゃないでしょうか? 場合によっては従来のスラスタでも同様の事象が発生しうるんですし。