QZ-vision:Vol.8 ライト スタッフ [JAXA]

みちびく人々:準天頂衛星システムプロジェクトチーム

―― ロケットでコスト削減ができたのですか?

岸本:当初は重量的にH??A-204で打つ計画でした。204の「4」はSRB(※3)が4本という意味です。それを、燃料が最も少なくて済むような軌道を解析して見出し、打上げ能力が少し小さいH??A-202でも打上げられるように計画を変更しました。打ち上げ地点(種子島宇宙センター)と太陽の角度は、時刻によって若干違います。また、その太陽と地球の重力との絶妙な関係で、最も軌道制御に使用する衛星の燃料が少なくてすむ軌道が分かり、その軌道に投入できる時刻にロケットを打ち上げることで、必要とされる打上げ能力を抑えました。これによりSRBは2本のみで打上げが可能になり、それだけで10億円以上のコストダウンになりました。

なんと、太陽の重力まで考慮に入れて打ち上げたんですね。SRB-Aの価格は1本5億強のようです。

―― 現在、どのような体制でみちびきを運用しているのですか?

寺田:打ち上げ直後は24時間3交代シフトで運用に当たっていましたが、今は24時間2交代シフトです(8時間と16時間)。

―― 引継ぎはどのようにしていますか?

宮本:一般的な大学ノートを引継ぎノートとして使い、必要事項を書いて、次の当番に伝達しています。JAXAの衛星運用では、昔から手書きノートで引き継ぐことが定番ですね。このノートは運用が終了しても運用室にずっと保管されます。

やはりノートが一番手軽ですよね。何書いてるのか分からない字を書く人がいるとちょっと難儀ですが…

寺田:世間には準天頂衛星の必要性について懐疑的に見る論調もあり、難しいプロジェクトだなというのが正直な気持ちでしたね。ただし、システムとしては非常に優れていると感じましたし、実用化一歩手前の衛星なので、やりがいもあるなと思いました。逆風の中でもやらなければならないと気を引き締めました。

確かに議論はありますが、逆に各方面からの注目度も高いプロジェクトでもありますので存分にやり遂げて欲しいと思います。

―― 一般の方々からの応援も多いそうですね。

明神:JAXAの運用室には、みちびきに関する手づくりグッズや励ましの手紙、お守りなどがたくさん届いています。今まで注目されるのは打ち上げのときだけでしたが、運用段階になってもこれだけの反響や応援があることは前代未聞です。

元祖JAXA宇宙機Twitterは実はこの「みちびき」。通常のプレスリリース以外にこういったところで毎日アウトプットしているのも地道な底上げになってるかも知れません。こうやって広がった流れは是非維持していきたいものです。

寺田:GCB*1が実用化されJAXAの手を離れたあとは、残念ながら実用段階まで行った衛星はありません。ほとんどが、一発限りのいわゆる技術開発衛星止まりです。ですから、QZSSは久しぶりにかつてのGCBを追いかけられる民生利用を目指した実用路線の衛星なのです。壁やハードルはありますが、2号機、3号機に打ち上げ、さらにはその先の実用システムを目指して、頑張っていきたいと思います。

ここに新たに測位(Positioning?)が加わるかどうかというところですね。

*1:Gは静止気象衛星(Geostationary Meteorological Satellite)の「ひまわり」、Cは通信衛星(Communications Satellite)の「さくら」、Bは放送衛星(Broadcasting Satellite)の「ゆり」