立川敬二 世界にも貢献できる宇宙開発に挑む [JAXA]

JAXA理事長のインタビュー。

JAXAの成果に国じゅうが感動し、あれほどまでに熱中したのは日本の宇宙開発史上、初めてです。2005年頃に行ったアンケート調査では、「日本の宇宙開発を担当している組織は?」という質問への正解率は10%に満たなかったんですが、「はやぶさ」の地球帰還でJAXAが広く知れ渡ったことを感謝しています。
はやぶさ」が地球の大気圏に再突入する瞬間は、JAXAのコントロールルームで見守っていましたが、これまで何度も「もうダメだ」という思いをさせられてきましたので、正直、正否は半々だろうと思っていました。宇宙に出た衛星や無人の宇宙船や探査機は、人の手が届かないので、トラブルが起きれば運用の継続は一気に難しくなります。そう考えると、「はやぶさ」はよく粘ってくれたと思います。

JAXA'sの対談でもおっしゃってましたが、成否はわりとドライに判断されるそうです。プロマネの川口先生も終始厳しく考えておられましたしね。裏を返せば何が何でも帰還させるという執念だと思います。

IKAROS」で実証した太陽の光子を利用する推進技術やソーラー電力セイルでの発電と、「はやぶさ」で実証したイオンエンジンを併用したハイブリッド推進に期待が寄せられます。地球の軌道や月など比較的近いところは、これから民間による商業化が進んでいくと思いますので、JAXAではさらに遠い天体の探査や、宇宙科学などの冒険的なミッションに取り組んでいきたいと思っています。

もちろん、常に成功率100%を目指していますが、宇宙開発に100%の保証はありません。常にリスクを伴っています。だからこそ、トラブルが発生してもいかにリカバリーできるかということが成功率をアップさせるのです。そういう意味では「はやぶさ」はいい例です。トラブルが発生してもあらゆる英知を注ぎ、問題を解決して成功に導くということが、JAXAには身に付いてきていると思います。「あかつき」は金星への軌道投入が100%駄目ということではありません。今後のリカバリーに期待していただきたいと思います。
そのほか、現在JAXAではさまざまな月・惑星探査計画が進められています。2014年の打ち上げを目指しているのは、ヨーロッパ(欧州宇宙機関ESA)と合同で開発中の、水星探査計画「BepiColombo」です。また、「はやぶさ2」の計画も予定しています。これは、イトカワとは異なる素性の小惑星からサンプルリターンをする計画で、今回「はやぶさ」が持ち帰ったサンプルと比較して、太陽系の起源についてさらに解明したいと思います。そして、月着陸探査機「SELENE-2」は、月面に探査ロボットを送り込む計画で、2015年に月に探査機を着陸させることも検討しています。

SELENE-2に関しては予算の都合でいつプロジェクトとして立ち上がるかが微妙なところですが。

2011年春頃から古川宇宙飛行士の宇宙長期滞在が始まります。また、2012年初夏頃からは、星出宇宙飛行士の長期滞在も予定されています。国際宇宙ステーションの運用は2020年まで延長されましたが、今後は宇宙飛行士候補生の3人も長期滞在をすることになると思います。今後、1年程度に1度日本人が宇宙に滞在するとなると、今いる宇宙飛行士だけでは足りなくなる可能性がありますので、新しく宇宙飛行士を募集する必要があるかもしれません。

何かまた募集かける可能性もあるそうです。随分賑やかになりますねw

こうのとり」の2つある貨物室の1つは、与圧空間、つまり、人間が乗っても大丈夫なようになっています。現に国際宇宙ステーションにドッキングした後、この与圧部分の貨物は、宇宙飛行士が「こうのとり」の中に入って運び出しています。与圧部分を打ち上げ、安全に地球に帰還することができれば、それは人が乗れる宇宙船を打ち上げ回収しているのと同じことです。したがってHTV-Rは、日本の有人宇宙船実現に向けての試金石になるものです。ですから「こうのとり」の有人化はぜひやりたいと思っています。

これもまあ、来年度予算で手付け金の5000万円だけは確保しましたので2号機をバッチリ成功させて気運を上げていって欲しいです。

このように、JAXA地球観測衛星が得るデータはこれからもどんどん増えていきます。ですから、きちんとしたデータベースの構築が必須となってきます。もちろん、現在もそれに取り組んでいますが、データを有効活用するための処理には大変な時間がかかり、マンパワーとコストがきわめて大きいという問題をかかえています。JAXAは宇宙から貴重なデータを得るのが本来の任務なので、データの利用や解析は別組織で分担していただくのが理想なのです。アメリカでは衛星やロケットの開発と運用はNASAが担い、得た地球観測データを蓄積し活用しているのはNOAA(アメリカ海洋大気圏局)です。少なくとも地球観測データを一括して扱う強力な組織、日本版のNOAAが実現されるといいですね。

これが現行の気象庁あたりの管轄になるんでしょうか。