平成23年宇宙開発委員会(第25回) 議事録 [宇宙開発委員会]

JAXA(常田)】 ESA欧州宇宙機関)ではSOHO(太陽・太陽圏観測衛星)、それからNASA(米国航空宇宙局)ではSDO(太陽観測衛星)、それからSTEREO(太陽立体化計画)という衛星が2基、TRACE(遷移領域・コロナ探査衛星)ということで、日本の「ひので」を入れますと、6基あります。

【池上委員長】 比較すると、「ひので」がいかにいいかというのは、はっきりわかるわけですね。

JAXA(常田)】 多少、役割分担もあります。「ひので」は解像度が高く、CCDのピクセルが限られていますので太陽の一部しか観測できません。それに対してNASAの衛星は、全体を観測しようと「ひので」と逆方向に行っています。細かいものは見えないけど全体の特徴をつかまえられるということで、図らずもある種の役割分担をJAXANASAでやるようになっています。次の衛星も、NASAは全体を見る部分を担当して、我々は日本の特徴を生かして解像度を追求した分解能の高い衛星をつくろうという方向で進んでいます。

【井上委員】 わかりました。ちょっと話が細かいですが、北極と南極に少しずれがあることは、こんな精度で今まで見られたことは多分ないでしょうから、たまたま見えただけで、このフェーズのような見え方のずれは、普通にあることかもしれませんよね。

JAXA(常田)】 そうかもしれません。地上では、磁場の1成分しか観測できなかったのですが、「ひので」は3次元的にとらえる機能がありますので、史上初めて正確な磁場ベクトルで方向を求めることができて、こういうことがはっきりわかってきました。地上の観測では、後から「ひので」のデータを見てみればそう見えたよねと、地震が起きた後に、このデータは予兆を示していたよねというところと似たようなことは言えますが、今回は紛れもなく「ひので」の高分解能の観測でわかってきたことなので、井上先生の質問は、高分解能でもっと前も見ていれば同じようなことが見えていたのではないかという御質問だと思います。

JAXA(常田)】 高分解能は、NASAも70年代からやろうとしていましたが、観測する対象の太陽がものすごい熱を持っているもので、光学系が熱くなってしまいます。それを防ぐ方策がなかなかできなくて、今回の「ひので」は初めて高分解能で太陽を観測することができるようになったということで、世界初です。

「ひので」パないですね。

JAXA(常田)】 そうですね。こっちがプラスでこっちがマイナスだと、ものが動くわけではないですが、極がサインカーブみたいに反転してしまいます。

【池上委員長】 ほんとうに変わるのですか。

JAXA(常田)】 地球は不規則に何万年に1回、パッと変わるようです。太陽は、古記録を見ると、今まではサインカーブ的に比較的規則正しく変わっていましたが、今回初めて2年ずれてしまいました。同じ極性になりそうだという変な状況になりましたね。

【池上委員長】 今のお話に関連して、通常は、磁場が弱くなると宇宙線量が増えて雲が増えるという話は噂ではなくて、ちゃんと議論した話なんですか。

JAXA(常田)】 ニ、三日前に「ネイチャー」にCERN(欧州原子核研究機構)の実験が出まして、地上でCERN加速器からの粒子を、大気を模擬した環境の中に入れて、雲の核みたいなものができるというニュースが出ました。

地球の磁場反転ってそんな一瞬なんですか。じわーっと変わるものだとばかり思ってました。太陽の磁場反転もそんなホイホイ起きているともちょっと知りませんでしたしスミマセン。ダイナミックですねえ。
にしても3日に1本の論文って。