宇宙竜巻の正体−回転ブラックホールからの双極ジェットの痕跡− [京都大学]

 鶴 剛 理学研究科教授(物理第二教室宇宙線研究室)、澤田真理氏、小山勝二氏(京都大学名誉教授)、岡 朋治 慶應義塾大学理工学部准教授らの研究グループは、謎の宇宙竜巻「トルネード」の正体を日本のX線天文衛星「すざく」と野辺山45m電波望遠鏡で明らかにし、回転するブラックホールが放出した高エネルギー粒子の双極ジェットが生み出した痕跡であることを突きとめました。

 宇宙竜巻「トルネード」は図1の写真にみられるように、螺旋状の渦巻き電波天体です。このような不思議な形状の天体は他に例を見ません。いったいその正体は何なのでしょうか。1960年の発見以来、その正体を巡って「エキゾティックな超新星爆発の残骸、遠方の巨大ブラックホールが放出する単方向ジェット、回転する中性子星」などの説が提案されてきましたが、いずれも疑問が残り、なにより決め手となる観測が欠けていました。

 その決め手を得るために、私たちは世界最高の感度を持つX線衛星「すざく」で観測を行いました。その結果「渦巻き」の両端からX線を放射する二つの高温のプラズマを発見しました(図2)。これらプラズマの温度、形状、大きさはほとんど同一で、まるで双子のようでした。プラズマまでの距離はちょうど天の川銀河の中心付近に一致しました。つまり天の川銀河系の中にいる天体だったのです。次に私たちは、野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡を使って観測を行いました。その結果、「双子プラズマ」と同じ位置に分子雲が存在することを発見しました。

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 トルネードの長さは約140光年、幅は30〜40光年。地球から約3万5000光年離れた銀河系の中心付近にあることも分かった。鶴教授は「次は14年に打ち上げ予定の新観測衛星で、回転ブラックホール自体の存在を確認したい」と話している。

先日に引き続き「すざく」の成果。画像凄い。