11/12/12: はやぶさ後継機に関する予算の状況について 〜川口「はやぶさ」プロマネのメッセージ〜 [月探査情報ステーションブログ]

遅くなりましたがこの件。川口先生かなり思い切った手に出ましたね。

小惑星を探査することは、地球を理解することつながる。実は、大地震を起こすプレートの運動をドライブするメカニズム、その理解にも通ずる。また地球の温暖化の鍵となる二酸化炭素の起源を理解すること、生命の進化を育んできた環境を理解することに通ずる。だが、イトカワの探査は後者にはまったく答えてくれない。我々の水と有機物に覆われた環境の起源と進化を探ることが、はやぶさ-2の目的である。まったく異なる天体(C型小惑星)を探査し、試料を持ち帰ろうという計画なのである。小惑星ちは小さな天体の総称。C型小惑星はまさに未知の天体なのである。政府・与党の意見には、はやぶさ-2に科学的な意義を見いだせないというものまであったという。まことに信じがたいことである。

震災の復興が叫ばれている、その通りだ。即効的な経済対策にむすびつかない予算は削減されがちである。しかし、耐え忍んで閉塞をうち破れるわけではない。

日本は、お手本と格付けがないと生きていけないかのようだ。はやぶさでこの分野で世界の最前線、トップに立ったが、トップに立つとどうしてよいかわからなくなるのだろう。NASAも欧州も、我々を目指しているのに、なにか安定しない。
進んでトップの位置を明け渡し、後方集団にうもれようとしているかのようだ。
どうして2番ではだめなのか、この国の政府は、またも、この考えを露呈したかのようだ。トップの位置を維持し、独走して差を開いて行こうという決断を行うことに躊躇してしまう。世界の2番手にいて、海外からの評価と格付けに神経をとがらせるばかり。堪え忍べと叫び、自らの将来を舵取りするポリシーに欠ける。
なんとなさけないことか。次世代を支える若者が、この国の国民でよかったと感じられなくなるようでは、将来はない。

いうまでもない。私の自己のために、私がさらにもう1つプロジェクトを行おうとして、はやぶさ後継機を進めよというのではない。もう身を引いている。それは、そうしなければ、後進が育っていく土壌そのものを崩壊させてしまうからである。
宇宙探査プロジェクトには時間がかかる。はやぶさ初代は、プロジェクトが始まってから15年を要した。飛行時間が長いのが宇宙探査プロジェクトを長くする特徴でもある。しかし、このことは、人材育成の難しさを明示している。15年毎にしかプロジェクトの機会がなかったとしたら、科学と技術両面で、継承・育成などかなうわけがない。今、はやぶさ後継機(はやぶさ-2)を立ち上げることができなければ、日本は、コミュニティに技術や経験が継承されるどころか、はやぶさ初代の成果をふりだしにもどしてしまうのだ。

はやぶさ後継機(はやぶさ-2)を進めることに政府・与党の理解を期待したい。
この文章をお読みになった方々から、草の根的であっても、それぞれの方法であってでも、政府・与党にメッセージを出していただければと思うものです。

これだけ政治的なメッセージを(かなりひっそりとしたページとはいえ)JAXAドメインで公表するというのは、まあ多分に川口先生の独断でしょうが、その是非を問う声もあるようですし、当然ご自身もかなりのリスクを負ってますよね。ただ逆に言うとそれだけ切羽詰まっているということですよね間違いなく。少なくとも今更常識論でどうこう言ってる猶予は無いでしょう。内部で進行していた事態がここにきてついに浮上したわけですから、それに対して打って出ているに過ぎません。2006年の時もここまで直接的ではありませんでしたし、少なくともご自身の影響力は当然考慮して、あるいは計算に入れてしたことに違いないでしょう。
あちらを立てればこちらが立たず、という状況かも知れません。応援してきたALOS-2ASTRO-HHTV-Rなどの意義は理解しているつもりです。「はやぶさ2」を推すことで他の様々なプロジェクトが圧迫されまいか?と慎重に、ともすれば二の足を踏む方もいるでしょうが、今まさに「はやぶさ2」がその立場に置かれていて、ましてやミッションの成立そのものに極めて重大な影響の及ぶ可能性があり、そこへ自分は「はやぶさ2」を実現して欲しいと思っている。ならば自明です。
はやぶさ2」のミッションが成立するだけの最低限の予算措置を要望します。
どのプロジェクトも満額回答を押し通すことは現状厳しいでしょう。そもそもALOS-2以外は軒並み大幅圧縮の方向が示されていますし、放っておいてもそういう状態な訳です。ならば再来年度で挽回できる程度に来年度予算の配慮が得られれば目は残されるわけで、そこが政治のバランス感覚ですよね。


はやぶさ2の意義は何か?」を根本的に再考するのも有意義ではあります。でもそれは「はやぶさ2」に限った話でないためそこに終始して決定的な時期を逃したら本末転倒な気がしますし、これまでそれなりに色々書いてきたと思うので今は迷いません。いかに波に乗った「はやぶさ」であろうとも予算問題と無縁ではないという教訓を改めて心に留めておきます。

「はやぶさ2」実現を 会津そらの会「折り鶴で国を動かそう」 [福島民友]

 同会は12日、会津若松市で会合を開き、あらためてはやぶさの成果を確認するとともに、はやぶさ2の実現に向け応援していくことで団結した。
 会長の知元さんは「はやぶさの偉業には、日本人としての誇りや、すごいと感じる子どもたちの心を育てる効果があった。お金に代えられない価値だった。いまの状況だからこそ希望の光が必要」と話す。

草の根でこのような応援があることは大変心強いのではないでしょうか。

はやぶさ2予算の件 その2 [有人宇宙港をめぐる冒険]

予算折衝の舞台裏を巡って松浦さん達から様々な見方が示されています。まだ全部には目を通していませんが。

これからの宇宙開発 [文科省]

プロデューサーズアイ
おかえり、はやぶさ」プロデューサー 田村健一氏

 〜「はやぶさ2」に関して〜

 宇宙開発は非常に長期間に及ぶプロジェクトです。あるプロジェクトに最初から最後まで関われるというのは非常に稀だからなのかもしれませんが、宇宙開発に携わっている人たちは次世代の育成に熱心です。また、若い研究者は先達の知識や経験を貪欲に受け継ごうとしています。世代が移り、人が変わってもプロジェクトが継続・成功するために、培われたものなのだと思います。

人間が世代交代して継続していくだけではなく、プロジェクトや探査機にも継続性があります。「はやぶさ」は火星探査機「のぞみ」という先達から大きな成果を得ることによって、世界初の偉業を成し遂げることができました。そして、「はやぶさ」の成果を受けて「はやぶさ2」は次のステップに進むことができるのだと思います。

 これらのことから、宇宙開発とは人間の営みそのものだという気がしてなりません。親から受け継ぎ、さらにそれを次世代に引き渡していく。私が『おかえり、はやぶさ』を製作するにあたって強く感じたのは、この流れを断ち切ってはいけないということです。いったん途切れてしまったものを取り戻すのは、継続するよりもきっと何倍も難しいはずです。

多分今回の件が表面化する前に用意されてきたコンテンツだと思いますが、今見ると非常にメッセージが込められていますね。