「はやぶさ」帰還に感涙 くろーずあっぷ 神奈川 [読売]

 最初に手がけた試験衛星「たんせい3号」の仕事が忘れられない。先輩に連れられ、鹿児島県内之浦の発射場へ。ロケットに衛星を取り付けた。「勉強させてやろうという親心だったのでしょう。先輩の仕事から全体の流れが見えた。素晴らしい仕事だと、震えるくらい感動した」

 以来、18機の衛星を組み立ててきた。

 衛星の製造は一つ一つ異なる。設計図はあるが、現場の作業がうまく進まず、設計担当者と話し合って計画を変更することも多い。パーツを組み立てて試験をし、不具合が見つかればまた修正する。そんな根気のいる作業を繰り返し、2〜3年かけて1機を完成させる。

 衛星は高価で高品質を要求される。ぶつけるなどの不注意は許されず、神経がすり減る作業が続く。それだけに、打ち上げを見守る時は「子供を旅立たせる親の気持ち」になるという。

 「はやぶさ」は無事カプセルを地球に届けたが、自分が組み立てた本体は大気中で燃え尽きた。流星のように燃える姿に、「思わず涙が出た」と振り返る。

 昨年11月、34年にわたる業績が評価され、現代の名工に選ばれた。「驚いたが、名誉なことでうれしい。仕事のことで初めて家族に自慢しました」と笑う。

現代の名工」に選ばれたNECの西根さん。現在は次世代型衛星であるASNAROとSPRINT-Aに携わっておられるそうです。