「あかり」が検出した謎の遠赤外線放射とは? [JAXA]

 謎の遠赤外線を放射する天体はどのようなものでしょうか。その大きな放射エネルギーを限られた宇宙全体の物質量で賄うには、高い放射効率が必要になります。図3をよく見ると、余分な明るさの成分は、全銀河の放射よりもピークが短い波長寄りにあり、銀河よりもかなり高温の物質による放射だと考えられます。さらに、それが遠方宇宙にある場合には、宇宙膨張の効果で波長が伸びて観測されるため、当時はもっと高温だったことになります。このような点から、放射源は星に暖められた生温いダストではなく、ブラックホールへ落ち込むときに高温に熱せられたガスやダストではないかと推測しています。

 「あかり」は、ここまで述べてきた宇宙背景放射の明るさだけでなく、見掛けの滑らかさ(むらむら)までも測定しました。詳しくは述べませんが、測定された宇宙背景放射が非常に滑らかであることから、その原因となる個々の天体は銀河よりもはるかに小さいことが結論づけられます。銀河の中心に座り込んでいる巨大ブラックホールではなく、宇宙初期に大量にあった小さめのブラックホールが謎の放射の原因ではないか、というのが私の見方です。

 将来の大型赤外線天文衛星SPICAでは、「あかり」より桁違いに高い検出能力により、予想されるほとんどすべての原始赤外線銀河を個別に検出できるはずです。そのとき、まだ謎の放射は背景に残っているのか?と考えるとわくわくします。我々が精力的に行っている近赤外線の宇宙背景放射を測定するロケット実験CIBER(『ISASニュース』No.338、2009年5月号・No.353、2010年8月号参照)をはじめ、小粒でもぴりりとスパイスの効いた観測ロケット実験を展開します。その延長線上にある、将来の宇宙背景放射探査ミッションEXZITでは、ソーラーセイルなどの惑星探査機で深宇宙に向かい、太陽系ダストの影響なく高精度の観測を行います。

SPICA楽しみですなあ。