「はやぶさ」サンプル国際研究公募選定結果について [JAXA]

うむ、ついに出ましたな! しかも6月13日という狙ったかのような日w いやまあ水曜は普通に宇宙開発委員会の例会の日なんですけど。

「はやぶさ」サンプル国際研究​公募の第1回採択結果に関する​記者説明会 [Ustream]

今回もNVSさんが中継して下さっていたのでメモを起こしてみました。質問者と回答者は面倒だったので明記してません。

研究成果を最大化するための国際AO
3月頭の締め切り、選定 昨日最終決定 17件選定
世界の惑星科学の発展に貢献
補足すると、科学ミッションにおいて国際AOは普通のこと
3回を想定、今回第1回の最終決定をお知らせ
日常的にサンプルをサンプルキャッチャから拾っている
ある時期を見てNASAがハンドルする分を分配
同時に国際公募 提案受け付け、審査・分配というサイクル
日常的に拾い、提供する 年1回ベースで行う
来年第2回、再来年第3回
国際AO委員会がハンドリング
最終決定4日間朝から晩まで詰めて議論 最終的な結果に至った
6名の日本人、4名のアメリカ・スイス人
1人はマイク・ゾレンスキ(NASA
JAXAがAOを発すると世界中の科学者がそれを見て研究提案
それぞれのレフェリが専門性を活かして判断
31件の研究提案、200名の研究者
66名のレフェリ
17件、63個の粒子を分配
選定はどこの国の研究機関に属しているかは全く考慮せずに行われた
イトカワなど小惑星表面は宇宙空間に晒されている それで何が起きるかを研究できる
初期分析で思いもよらない結果が出ている 面白いテーマ 小惑星表面の宇宙環境
イトカワは衝突を経てきた天体 衝突史
年代測定 酸素同位体分析 太陽系のどの範囲から集まってきたか
初期分析で面白い結果 驚くべき事 更に検証
初期分析から生まれた疑問 そこから進めようという提案

質疑

―どういう所にポイントを置いて選定 どういう形で粒子を送るか
経緯 貴重なサンプルなのではやぶさサンプルならではの研究ができるか サンプルが物凄く小さいのでハンドルできる実績があるか
粒の数がどう決まったか 委員から貴重なサンプルなので一気に配るより非常に優れた提案でも欲しいと言ってきた粒子を全て配らず結果を見ながら様子を見ようと 小惑星表面から砂を持ってくるのは初めてなので、研究提案を見て合理的に期待できる部分はあるが実践としてどこまで行けるか見切れない 少し少なめに配るという判断もしている
粒子は大気に触れない形で取り出し保管されているの NASAに配った時に使用した輸送容器がある ステンレス製の密閉容器 直径約5cm 石英のスライドグラス1.5cm角ほど 深さ0.5mmほどの穴を複数個あけて粒子を置いてある 別のスライドグラスでカバーしてステンレス製5cm径ほどの蓋をして真空密閉 ボルトで締める チェンバーの中で行い取り出す
物凄く密閉性の良い容器 窒素雰囲気の中で行う 結構大変
今回採択しなかった中にも物凄く面白いテーマも 残念ながらサンプルは大変稀少なので本当にできるかどうかわからないものは残念ながら配れなかった 是非頑張ってできるということを示して欲しいという言い方をしている 落ちる・受かったという言い方はちょっと違和感 本当は提供できればよかったという状況


―17チームのうち初期分析に参加したところはあるか 63粒だが今現在見つかってる数は1500個から変化はあるか
リスト1・2・3・4番目の方は参加 それ以外は新たに挑戦された方 AOを出した時点で200個カタログを出した 60・70は初期分析から戻ってきた粒 140粒は新たに研究に提供される粒 今回の63粒はその200粒から 半分は初期分析から、もう半分は新たに 初期分析から戻ってきたものも再分析で科学的成果を出すことは十分可能


―今回のサンプルの大きさのばらつきは
初期分析のは100〜200ミクロン 新たな粒子は最大80ミクロン 100ミクロン以下中心 10〜100ミクロン中心


―面白い結果を確かめるというその面白い結果を詳しく
あるタイプの隕石の母天体だと確認された そのような隕石は地上にいっぱいある 酸素同位体検査はなされる ある隕石があって、イトカワがその母天体の一つだと思われている 隕石の酸素同位体分析結果は既にあるがイトカワの分析については少し違った分布 それの意味するところ 酸素同位体比はもともと太陽系のどの場所からやってきたかという良い指標
イトカワの生い立ち、隕石の関係を調べるのは酸素同位体は指標 隕石で予想している分類のばらつきに比べて イトカワのばらつきはちょっと大きく思える 精度なのか実際そうなのか何か理由があるか 広い範囲の物質からイトカワ母天体が成り立っていたか
―隕石研究からこういう領域から元の物質じゃないかと思われていたが、酸素同位体分析結果だともうちょっと広い範囲から元の物質が出来ていたということを示している、という理解でいいか
事実関係として あるタイプの隕石とイトカワが一致して対応しているように見える あるタイプの隕石ならば酸素同位体比がこうだという値がある ここが一致対応してるならイトカワの酸素同位対比も一致するのかなと普通思うが事実はそうではない ちょっと不思議 「もしかすると」分析精度の問題があったかもしれない 独立した人が提案すればいいのだが、まさに物凄く世界的に有名な人が検証しましょうと提案してきたので委員会としてはハッピー 採択


―詳細分析で更に何が分かるのか 初期分析で分かってきたことに加え詳細分析で新たに分かる可能性があること 美味く分析が進んで結果が出た場合、初期分析でまだ結論が出ていない 何が分かるか
イトカワ形成における色んな年代 はっきりできてない部分 分かってくれば大きな進歩 粒子が小さくて年代測定できる鉱物が見つかってなかったりする 分析技術を高めた提案があれば可能性が広がってくる
母天体年代の年代が分かる ターゲットはそれ?
それだけではない 衝突における年代など イトカワの母天体やイトカワができた年代など初期分析では結果として出ていない そういったところが楽しみ
―年代としてはその2つ?
また表層の進化という観点からすると表面のレゴリスにそうとうするものがどうリサーフェスしてきたのか 希ガスの分析からも分かってくると思う
希ガスの話も10億年後にはイトカワが無くなるという話も出ていた あれ以上に新しい話が出てくる?
あれは一つのある元素でやっているのでまた違う元素でやるというのもある 限られた数で初期分析しているので検証になるかも知れないし違う結果が出てくるかも知れない そういったところがひとつ楽しみなこと
―記者会見ということで手堅く答えられてるのだと思うが、もう少し可能性を感じさせるような必ず見つかるわけじゃないとしても詳細に分析すれば思いがけないこんな事が分かるかも知れないというような何かそういうことで言えることはないか?
なかなか答えにくいが今回のテーマは初期分析等に似たような感じでコンソーシアムみたいなことで提案してる研究テーマもあってもう一度粒子を総合的に期待しようという提案もある そういった分析は何が出てくるか分からないというのが面白いところ 新しい有機物が分かれば面白い 見つかってない鉱物が見つかれば面白い 確約は出来ないが 違った分析チームが新しい手法で新たな分析をすることに期待


―今回分析の成果 直近ではいつ頃に成果が発表されるか 全体で何カ国から応募があったか 選ばれた17件 研究者は何人か
類推すると100名強 5〜10名のチームを組んできている 採択されたのは日本イギリスフランスオーストラリアアメリカドイツ 提案があったのも 他に中国も1件あったがほぼそれらの国 基本的に1年間貸し手ある間に分析を終えてくださいという言い方 早ければ半年くらい? 1年の間に成果を出してくださいと伝えている もし結果が出ればキュレーターにすぐ伝えられる 研究の推移はモニタしている


―今回選定された提案で資料を失うような破壊検査を伴うテーマはあったか
この中では希ガスの分析と書いてあるものはだいたい粒子を熱して中からガスを分析するのでそれらは消滅する可能性がある
―提供する粒子 基本的に組成は同じようなものを選んでいる?
基本的には岩石質とよばれる粒子という意味では同じ それぞれ特徴がある カタログ公開していてそれを元に提案者がこの粒子が欲しい、とこういった鉱物が入っている粒子を分析したいという提案 それに見合った粒子をお配りする


―ちょうど2年 このタイミング 長かったか短かったか キュレーション作業手間取ったこともあったがようやく第1回の公募ができてこれから本格的な分析 科学的に見て早かったと見るべきかなかなか時間がかかったと見るべきか 感想というか意見を
私はキュレーターとして現場にいるのであっという間の2年間 やっと初期分析チームという限られたメンバーではなく全世界の研究者にオープンに粒子を配れるというのはやっとここまできたという意味で、あっという間だったが次のステップに進むということでちょうど2年という区切りの時にできるということは良いタイミングだったと感じる
ちょうど2年という話で気付いたが私自身は国際AO、外に開いていく立場といういうところから参加した立場でいうと、第1回国際AOははやぶさプロジェクトとして最後の大きな仕事となると思うが キュレーション活動(サンプルをきれいに保存して将来にわたって必要があれば全世界の研究者に配る)としては最初の第1歩になる 今後は長期的ビジョンを持ってキュレーション活動を進めていかなければならない 例えばアポロの場合は40年間保存して40年後に新しい分析技術が出来たから配るということをしている この先40年を見据えてキュレーション活動を進めていくというのはそれなりのボディを用意してきちっと議論を進めていかなければならない それらも今後整備していく 2年目にしてそのビジョンが見えてきたというのが私の立場からの感想


―初歩的な質問かも知れないが日本だけの分析から世界に開かれるということで 日本が得意なこと 日本ができる限界のこと むしろ海外のこういう経験・分析に期待できることがあるか 面白い提案で確実に出来るものを選んだということだが、装置のことなのか提案の説明の不備なのか
実は隕石の分析は日本かかなり得意 イトカワ試料分析もある意味延長線上にあるといえる そもそも小惑星の科学とリンクしている 太陽系起源のテーマは日本のお家芸と言える強い分野 その意味で今回の活動は自然な流れの上に乗っていると思う 日本が出来なくて海外が出来る分析 あくまでAOで、研究者の応募はこちらでコントロールできることではないので、ものすごい腕利きの分析をされてる方がいらっしゃるが、その方が分析してくれたらいいなと思うがこちらではコントロールできないので どんどん応募して下さることを期待しているがあくまで科学的成果が出ることを期待しているのであまり日本とか海外とかの区別はして考えていない
―応募件数についてはどう捉えているか 多いか少ないか
ものすごく良い質問 予想では50件来るかなと思っていた 30なのでまあ悪くないのだが 減った分は、アメリカに腕利きの方々がいるがその一部が応募してこなかった どうもアメリカ側の研究の進行で忙しかったと類推している さきほどコントロールできないといったのはそういった事情も踏まえている 研究者それぞれ色んなスケジュールで動いているので、こちらが期待してる方がいつも応募してきてくれるわけではないなというのが今回の経験
―腕利きというのはどういうところ?
学会の中の実績 過去の論文があって凄い装置を持っていて凄い分解能や精度で分析ができる方
新しいテクニックで提案3つ4つ 凄く面白く実現すれば有用だがたとえば小さいサンプルに対して残念ながらそれができるのかどうか必ずしも証明されていないので基本的にはそこ 技術そのものがあるのは知っている大きなサンプルに対してそれができるのは分かっているが小さいサンプルに対して出来るかどうか分からない あるいはその原理でもって出来るかどうか分からない それは実証した上でもう一度相談してくださいと答えている 基本的にはイトカワサンプルが小さいことに伴う理由


―専攻してNASAに15粒提供したが、そちらでNASAの腕利きの方が分析している可能性は高いと考えていいか
凄く良い質問 NASAの分はNASAが責任を持って配分することになっている 実はNASAではまだ配る準備が出来てないとも聞いている この時点ではまだ配っていないがNASAにも提案は出来る JAXAの国際AOとNASAの分は連携していて、同じテーマで両方に提案するということは禁止という取り決めになっている 国際AO委員会にNASAから1人いるが彼がコーディネートしている ある研究者がNASAかこちらかに出すかはこちらでコントロール出来ることではないのでわからない このテーマならこのサンプルがいいなというのは研究者各自で判断するだろう その意味ではどんどん粒子を拾ってカタログ化するのは大事だと思っている
―研究して論文誌に発表した時点でJAXAからもこういう発表が出たとアナウンスがあるか?
これから先は全て随時アナウンスすることはないだろうが、非常に皆さんが興味を持つ大きな発見はJAXA側もウォッチして公表することは考えている


―腕利きの方みんなが応募されたわけではないという話 今回の顔ぶれを見てどのような感想をお持ちか
難しい質問を連発されますよね(笑) ひとつ思ったのは9ページ2番と4番 2番はフランスの9つの研究機関がチームで提案 4番はイギリスの大学が5〜6つがチームで提案 フランスを挙げて、イギリスを挙げてサンプルを分析してやるぞという心意気を感じた その点では国際AOをやってよかったなと
―頼もしい?
こういう審査で科学者同士がお互いに評価し合うというやり方 良い論文を読んだ時どう感じるかというのと同じような話


―NASA15粒 国際AOではない?
NASAの活動としてやるものでこちらの関与するものではない 彼らのやり方で研究者に配るんだろうと思う
―世界に開放するという形はとらない?
やり方は違うが基本的には精神は同じだと思う
KEKやSPring8 そういった装置で代表的なものは
各研究者の所属機関の装置を使うのだと思うが、例えば土山先生はSPring8 他はちょっと今は分からない


―腕利きの方が応募してくれるとは限らないという話があったが 来年再来年JAXA側からこの人に分析して欲しいと 公募+打診という方式をとる可能性は
十分ある。ただ恣意的にやるわけにはいかないので国際AOを何度か経て判断していくとか 長期的なビジョンで キュレーター当事者が個人の判断でやるというよりもコミュニティを巻き込んだちゃんとした議論でそういった方針を決めていく 熟議を重ねて決断する方式
―単純に受け身だけでは駄目だという感想?
そう。面白い提案だが採択出来なかったというのはわりと今言ったような動機付けになっている その中には必ずしも隕石分析・地球物質の分析をされてない方が何名か応募されてきていた 今回は採択されてなかった ある意味競争力が無かったが、そういった方が別の分野からどんどん参加し、先ほど言った思いも寄らない結果というのはそういったところから出る可能性がある 日本は隕石分析に強いと言ったことと矛盾するようにもきこえるが、そこにも期待している フェアにやるということは考えないといけないが別の分野のテクニックが使われることをこちらから働きかけるのは面白いと感じている

なにせサンプルが微粒子なだけに、応募する側にも非常に高レベルな技術が要求されるようです。中には専門外の研究者からの面白い提案もあったそうで、今後も公募の機会はあるので是非またチャレンジして欲しいですね。