12/06/22: ルナー・リコネサンス・オービター、月のクレーターに氷を発見 [月探査情報ステーションブログ]

おお!?

NASAの月探査機、ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)の観測により、月の南極地域にあるクレーター内部の表面物質に、22パーセントもの氷が含まれて可能性が高いということがわかりました。この発見を記した論文は、今日(21日木曜日)発売のイギリスの科学雑誌、ネイチャーに発表されます。

今回、かなりの量の水(氷)の存在が発見されたのは、月の南極地域にあるシャックルトン・クレーターです。このクレーターは、アメリカの有人月面探査でもたびたび有人基地設置場所の候補に挙がるクレーターで、これまでも水の存在についての議論が続けられてきました。
今回は、LROに搭載されているレーザー高度計のデータが使用されました。これによると、このシャックルトン・クレーターの底部は、近隣のほかのクレーターに比べて明るく(つまり、光をよく反射する)、このことが氷の存在を裏付けるということです。

さらにズーバー教授たちのチームは、クレーターの壁が底部よりも明るいということも発見しました。最初はなぜこのようなことになるのか皆目見当もつきませんでした。上でも述べたように、氷で反射率が上がって明るくみえるのであれば、氷が存在する場所として、クレーターの底部がいちばん可能性が高いからです。壁には日が当たるかも知れませんから、表面に含まれている氷は蒸発してしまい、明るくなる原因としては考えにくいということになります。
そこでこのチームが考えた原因は、なんと月の地震、「月震」でした。月で時折起こるこの月震により、表面のより暗い物質はクレーターの中へと崩れ落ち、明るい、より「新鮮な」物質が露出するようになると考えたわけです。LROに搭載されている高解像度のカメラがシャックルトン・クレーターの底部や壁面を撮影した画像により、この考え方が裏付けられたと、このチームでは論文の中で結論づけています。

なお、クレーターの明るさについて、ズーバー教授は、他にも説明はあり得るとし、「例えば、壁に沿ってより時代の新しい物質が露出しているというようなことも考えられる。」としています。

なんとレーザー高度計の反射率でこのような分析が上がってきたらしい。氷が存在する説の他に、フレッシュな地形が月震の影響で露出しているという説もあるそうです。
この記事でも補足されていますが、4年前に「かぐや」も同じくシャックルトンを観測しています。今回のLROはレーザー高度計ですが、「かぐや」は高感度な地形カメラの光学センサによってクレーター底部の観測に成功しています。それによると、クレーター底部に露出する形では氷は存在しないという分析結果を報告しています。言い換えると、存在するとしたらどのような条件になっているかという話になります。今回の分析結果は内外含めてこれまでの観測結果から比べるとかなり多めに見積もられていますが、いずれにしろこれらのデータを詳細に分析することで内部がどのような環境にあるかを更に絞れそうですね。