H-IIB3号機打ち上げ後記者会見 起こし

今更ですが、今回もNVSさんの中継動画から起こさせて頂いたので載せておきます。敬称その他略。

第1部

JAXA立川理事長・古川宇宙戦略担当相・文科省神本政務官から挨拶。

質疑応答

―理事長へ。無事成功した率直なお気持ちを
理事長:毎度緊張するわけでありますが、無事成功してホッとしている。特にこの成功をもって民間移管したいと考えてていたので成功して大変喜んでいる。


―古川大臣へ。物資輸送をというのはロシアや民間輸送船もあるが、改めてこうのとりを打ち上げる意義と今後の課題を。中国が2020年までに独自の宇宙ステーションを立ち上げるとのことだが日本の長期的な目標をどう掲げているか
古川大臣:こうのとり、日本は非常に技術的に優れており先日SpaceXが打ち上げた宇宙船でもこうのとりの技術が相当活かされているということで、こうのとりで開発してきた技術がリードしてきているのではないかと思う。我が国としては宇宙は国際協力の中で開発利用を進めていくという視点で続けていきたい。ちょうど総理が中心になって平成20年に作られた宇宙基本法を踏まえた法律改正を先日行い、宇宙政策を一体的に推進するための指令棟機能を担う宇宙戦略室が先日内閣に設置された。そのもとで宇宙政策全体を考える宇宙政策委員会を設置されることになっている。これらを中心に政府として中長期の研究・開発利用を含めたビジョン、政策を実行していきたいと考えている。当然今は厳しい財政事情の中であり、どう宇宙開発予算を重点化・効率化しつつ戦略的に進めるかが大事になってくる。


―古川大臣へ。今回のH-IIBロケット打ち上げ成功、宇宙戦略室の中での位置付けは。開発中のイプシロンロケットとの関係は。H-IIA後継機(H-III)をどのように考えているか。有人飛行について大臣の考えを。
古川大臣:H-IIBロケット連続成功、H-IIAから考えるとずっと成功している。日本のロケットの信頼性の高さを示したと思っている。前回(H-IIA21号機)は韓国の衛星を積んで打ち上げたが、今後こうした技術を世界の需要も取り込んでいく形で活かしていきたい。有人については、ISS参加やはやぶさイトカワ探査に代表されるような活動を行ってきた。これらは将来の人類の活動範囲を拡大したり宇宙の成り立ちの解明に寄与するものと考えている。こうした活動は国際協力の中で参加していくのが大事。実際ISSについては日米欧加露の5局15カ国共同で進めているが、その中で日本はアジア唯一の重要なパートナーとして参加している。そうした国際的な協力関係のもとでこうした有人宇宙活動や宇宙探査についても長期的な展望にもとづく計画を宇宙戦略室・宇宙政策委員会で検討し方向性を示していきたい。

―有人ロケットを日本で開発する選択肢も?
古川大臣:勿論そうした技術は開発していきたい。今回のこうのとりでも帰還を考えてデータを取るi-Ballも載せている。人を乗せて戻ってくるような技術も将来的にちゃんと持てるようにしていきたい。


―立川理事長へ。この成功をもって是非H-IIBを民間移管したいという話だったが、移管後は三菱重工にどのような運用を期待しているか。JAXAとしてはどのように支援していこうと考えているか。
立川理事長:戦略については三菱重工に聞いてほしい。既に移管したH-IIA静止軌道に約2tの打ち上げ能力。通信衛星などは大型が多くなっているのでそこにH-IIBで対応できるのではと考えている。バリエーションを増やして顧客対応するのに良いのではないか。ついでにHTVの今後の打ち上げも実施して貰いたい。小型衛星にはイプシロンを開発しているが、品揃えとして大中小が揃う。これも民間に移管して、あらゆる衛星打ち上げが日本で可能にするのが良いのではないかと思っている。


―古川大臣へ。HTV-R実現はいつ頃が望ましいか。有人実現はいつ頃までにと考えているか。
古川大臣:まさに先ほどから申し上げている宇宙戦略室・宇宙政策委員会で検討して方向性を出していきたい。


―立川理事長へ。H-IIB民間移管となるとJAXAが開発しているのはイプシロンのみとなり主力ロケットの開発がなくなる。次期主力ロケットH-IIIにいよいよJAXAとして本腰を入れ、純国産ロケット開発から始まったH-IIシリーズは一区切り付けて次のステップに移るという事になるか。
立川理事長:是非そうしたいと思っている。後継機としてH-III(仮称)と呼んでいるが、次期基幹ロケット開発に是非着手すべきではないかと考え色々提案しており、これを含めて宇宙戦略室で決めて頂くことになると思う。我々の観点では現在のH-IIAは使ってあと10年で、その間に次のロケットを用意する必要があるということでそろそろ研究に着手すべきではないかと前々から私は持論として申し上げている。実現に向けて頑張っていきたい。

古川大臣:まさにそこは戦略室として検討していきたい。


―古川大臣・立川理事長へ。大臣が先ほど世界の需要を取り込んでいくとおっしゃったが、そこでH-III開発についての考えを。世界では例えば米国は民間委託で低価格ロケットに繋げている。日本のロケットはコスト面での国際競争力を課題としているので、どう解決していくか。
古川大臣:先日の法改正で民間の開発にJAXAが協力できるようにした。今後国として民間に協力しコスト低下を。またそれは需要を増やすことに繋がるので、日本の技術を使って衛星を打ち上げたいという人たちを取り込む努力をしていきたい。
立川理事長:我々は国の方針でロケット開発を行ってきたが、アメリカは一部民間でできるようになってきた。日本も既にH-IIAの民間移管を行ったが、その改良は三菱重工に民間として行って貰っている。H-IIBもその段階に入る。次期基幹ロケットについて国としてやるのか民間としてやるのか、これについても宇宙戦略室で方向性が出た時に我々としては民間と国共同で行う手もあるだろうとも思っている。方法論として模索していきたい。


―古川大臣へ。ISSに滞在中の星出宇宙飛行士がこうのとりを待ち受ける、その思いを。星出さんに何か一言。
古川大臣:国産技術の粋が詰まったものが無事打ち上げられ、星出さんの待つISSに向かっていく。日本人として大変誇りに思う。無事キャプチャーされISSで活用されることを期待する。星出さんは我々に大きな夢を与えてくれている。特に次の世代の子供達にとって星出さんの活躍は何よりも元気と夢を与えること。宇宙政策を進めるためには国民の皆様による夢とサポートが重要であり、宇宙のすばらしさ、宇宙での研究が私達の将来の生活に様々な形で良い影響を与えていくことを伝えて欲しいと期待したい。


―古川大臣へ。民間移管で更なる打ち上げ機会の拡大をとおっしゃったが、需要拡大に国としてどうサポートしていくか。
古川大臣:宇宙以外の分野でも日本の素晴らしい技術をパッケージで海外に売り込んでいこうというパッケージ型インフラ輸出促進のための関係大臣会合を2年ほど開いている。この会合でもまさに民間から出席頂き、官民挙げて日本の技術を宇宙の分野についても世界に売り込み、活用して貰おうという位置づけて実施している。今後も需要取り込みに努力していきたい。


―立川理事長へ。イプシロンについても民間委譲の考えがあるという話だったが具体的にどの程度まで話が進んでいるか。イプシロンIHIさんの製品になると思うが、現状打ち上げサービスを提供している三菱重工さんとは別にサービスを提供するイメージなのか、新しい会社でやっていくのか。
立川理事長:現在開発中なので何とも言えないが、2・3回打ち上げないとなかなか引き受けて貰えないのではないか。当然製造メーカーであるIHIエアロスペースが担当することになると思うが、打ち上げ事業者の分散も良いことではないかと思っている。


―古川大臣へ。宇宙戦略室・宇宙政策委員会の最初の仕事は来年度の予算編成、宇宙基本計画の改定など、予算などの優先順位づけ作業かと思う。有人宇宙開発や輸送系・衛星利用、日本としてはどこに重点を置いて宇宙政策を進めていくのか、大臣の考えを。
古川大臣:バランスを取ることが極めて重要。準天頂衛星をはじめとして様々な形で私達の生活に直接的なメリットを与える部分がある。今政府で進めるエネルギー構造改革、気温を予想して電力のピークシフトのために衛星からの気象情報が非常に重要。様々な分野で宇宙の利活用により私達の生活をより快適で効率的なものにしていく面がある。そうした面はしっかりやっていく。しかし同時に時間もかかる。次々に優秀な技術者が入ってくることも重要。次の世代の皆様方が宇宙に対して夢や希望・憧れを持つのも極めて大事で、日本人宇宙飛行士が実際に宇宙で頑張る姿やあるいは「はやぶさ」に象徴される日本の技術が世界から賞賛を受けるような宇宙探査、そういった部分も大事。バランスを持ちながら進めていく。


第2部

打ち上げ執行主任・H-IIBプロマネ宇治野氏/HTV射場主任・HTVプロマネ小鑓氏
小鑓氏:ネームプレートの「鑓」の字が違っています。金偏に派遣の遣で小鑓です。(会場笑い)


宇治野氏:打ち上げシーケンス速報について補足説明。フライト前に予測値を出しているが、シーケンスは全て順調にこなしており、シーケンスの発生時刻は性能によって若干の変動がある。予想される範囲内でフライトできている。14分53秒後にHTVを分離している。軌道についても要求範囲のほぼ真ん中近くで非常によい結果。ロケットのミッションとしてはその後に2段の制御落下を含んでおり、先ほど1周回して種子島に戻ってきて機器が着実に作動していることを確認した上で第2回燃焼を行い想定落下域に制御落下し、ミッションとしては100%成功と考えている。


小鑓氏:我々は打ち上げて貰ってからが本業。投入された軌道は我々の要求するほぼノミナルに近いところ。先ほど筑波のフライトディレクタと話をしたが「非常に良いところに入れてくれた」と。燃料消費も減るのではないか。11時21分に分離、TDRSとのリンク確立が約2分後。一番心配していた三軸姿勢確率、12時03分に完了。ほぼ予定通り。国産スラスタを使っているので姿勢制御スラスタの検証になったのではないかと思う。高度修正マヌーバが本日18時40分頃、2回目が21時前。この時にメインエンジンを使うのでこれで1回目の国産スラスタの検証ができるのではないか。プレスの方に報告する。その後オリンピック開会式のある27日にバーシング。

質疑応答

―打ち上げ時に雨が強かったが、射場地点の降雨はどうだったか。打ち上げへの影響は何かあったか。これまでに雨での打ち上げはあったか。
宇治野:打ち上げ制約で降雨量8mm/h。主にフェアリング先端断熱材が飛翔時に雨滴で壊れる可能性を考慮。ロケット側は打ち上げに専念しているのでRCC(総合指令棟)の方でコントロールして貰っている。ブロックハウスの空いているカメラで雨の状況を見ており、かなり大粒の雨が落ちているなと私はハラハラしてどういう判断になるかX-10の判断以降もいつ覆るか気にしながらシーケンスを進めていた。雨天打ち上げはこれまでもあった。


―宇治野さんへ。アビオニクスの更新があったが、今回のフライトでどのような評価か。
宇治野:打ち上げ前にテレメータの電源を入れたりアビオニクス系はある程度動かしていた。機能確認を行っており、その時点ではアビオニクス機器そのものではないセンサの断線か短絡か、あるいはアビオニクスの中のアンプが1個不調だったか、そういう事象が出ていたが、フライト制御に使うものではないという判断で、データが1つ足りなくなるが別のデータで評価できるという考えでそのまま飛ばすことにした。アビオニクス再開発による問題は無かったと捉えている。元々沢山あるチャンネルの中の1つだけがそういう状況なので、基本性能は確認されているが製品の問題・センサの問題だったと考えている。


―宇治野さんへ。雨の影響でハラハラしながら進めていたということだが、今打ち上げ成功した感想を。
宇治野:ちょっと疲れたが皆と一緒に感激を分かち合って握手をして非常に充足感。


―宇治野さんへ。立川理事長が民間移管をとおっしゃっていたが、今回がH-IIBのひとつの区切りだったと思う。プロマネとしてどのようなお気持ちか。
宇治野:今この場でお話できるのはロケットの基本性能が確認できたということで、様々な改良事項や確認事項をこのフライトにかけて確認するつもりでいる。まだ詳細のデータを見ていないので、それを見た上で実感としてひとつ開発を終えた、となりたい。それによって周りもそういう方向に流れていくのでは。


―今回のこうのとりは星出さんが掴むことになるわけだが、宇治野さんは星出さんに物を送るという役割を果たしたことをどう思われるか。小鑓さんはこれからが正念場だが、星出さんに送り届ける意気込みを。
宇治野:非常に大事な荷物で、ISS事業の成果をもたらすもの。ぴったり軌道に入れることができて非常に安心している。あとはこうのとりに「本物」の荷物を届けていただきたいと思う。
小鑓:我々は輸送屋なので物を運んでなんぼの世界。まず打ち上げて貰ってこれからが第二ステップ。HTVはロケット・衛星・有人の3つの技術を足したもの。また荷物の中には日本で初めてとなる小型衛星放出機構やAQH(アクア)という水棲実験装置、ポート共有実験装置といった非常に重要な物、これらを運んで国際的に信用できる輸送機にもっていきたい。また星出宇宙飛行士がキャプチャーするかまだ分からないがサポートをすると聞いている。是非彼に掴んでもらえばHTVも喜ぶのでは。星出宇宙飛行士は宇宙遊泳も行うと聞いているので、そちらもしっかり成功して欲しいと思っている。


―宇治野さんへ確認を。アビオニクスの話だが、予定通りの軌道に入っているということなので全く問題なかったということでいいか。
宇治野:フライトデータはテレメータで送ってきているので、今日はクイックに見てある程度分かると思うが、ガイダンスコンピュータ・慣性センサユニットなどは具体的にちゃんと機能し、シーケンスもビタッと決まっているので、基本的な機能は既にミッション達成で示されていると思っている。機器内部の状態などはちゃんと確認したい。


―宇治野さんへ。今回海外から視察は来られていたか。
宇治野:どちらかというと小鑓さん?
小鑓:HTV関係でESAのドルダン長官やロシアの副長官、NASAの研究所所長などVIPの方々が来られている。


―小鑓さんへ。HTVで初めて運んだ生き物がクモだったことに関してご感想を
小鑓:googleが子供達に募集して出てきたアイデア。巣を張らずにジャンプしてエサを獲るジャンピングスパイダーが無重力でどうやってエサを獲るかという非常に面白い実験。宇宙飛行士が眠っているクモを起こして実験すると聞いているのでいい映像が撮れて子供達に面白い画像が送れればいいなと思っている。


こうのとりがドッキングするのはオリンピック開幕の前?
小鑓:キャプチャーが27日の21時頃。きちんと開会式の時間を憶えていないが、9時間の時差で向こうは昼なので多分開会式のちょっと前ではないかと思っている。


―宇治野さんへ。今まで技術者として開発に携わられ、今回はプロマネとして総括する立場で関わってきて、これまでの歩みと成功を振り返り言葉をいただければ。
宇治野:がむしゃらに色んな問題に対応してきたが、今日は短い時間でどれだけ成果に繋がるような課題の解決をするのかというバランスを取る上で多くのスタッフの意見を取り入れながら何とか時間内に上手くできた。非常にチームワークとして上手くてきたと思っている。


宇治野:先ほど正式にプレスリリースで出す前の情報を流してしまった。第2段制御落下に関してはまだプレスリリースしていない。口が滑った。
公報:このあと正式に皆さんへお知らせしたい。