イプシロンロケットにかかる記者説明会

今回もNVSさんの中継動画から勝手に起こさせて頂きました。
来年打ち上げ予定のイプシロン初号機は53億円。試験費込みということと、オプションの4段目PBSを搭載しているということでこの価格になっています。定常段階の基本形態は38億円で、更に段階的に30億円以下にまで低コスト化するロードマップとなっています。また自律点検にも色んなカテゴリがあり、人工知能を育てていくという作業があるのが実にユニークですね。また肝付町としてもイプシロン運用開始に合わせ整備計画を打ち出しているようです。初号機打ち上げは絶対見に行きたい! 詳しくは以下で。



登壇者:永野和行肝付町町長 森田泰弘イプシロンプロジェクトマネージャー 峯杉賢治USC所長

イプシロンロケットの開発状況・内之浦の整備計画について

森田プロマネイプシロンロケット開発の意義とは未来に繋がるロケット開発、未来を拓くロケット開発。その目的はロケットの打ち上げシステムをシンプルにして敷居を下げること。期待の性能だけでなく設備をコンパクトにし取り扱いを簡単にし運用を効率化する、この3点セットを改革。内之浦での運用性はものすごく良くなり、1段目据え付けから計算して7日で打ち上げて片づけして帰る。M-Vで42日間。世界の他のロケットに比べても圧倒的。将来のロケットとは飛行機のように簡単に打てるロケット。それに向かって必要な技術。


代表的なイメージで話したが、3つの観点でご説明すると、ユーザー(衛星側)の視点、即応的な打ち上げ手段の提供。自律的にいつでも簡単に打てるシステム。宇宙科学のミッションにとってはとても大切で、例えば惑星探査のように特別な軌道はいつどこに打つかものすごくユニーク。大きなロケットの相乗りはやりにくい。もうひとつ、ロケットと衛星はこれまで単独で普及活動を進めていたがイプシロンと小型衛星を組み合わせて総合力で世界に打って出ようと考えている。打ち上げ能力は今後の小型衛星市場を睨んで低軌道1.2t、M-Vは1.8tで2/3くらい。衛星にとっての使いやすさ。第4段ステージをオプション搭載可能になっており、液体ロケット並みの軌道投入精度を得られる。


固体ロケットシステム技術の維持・発展という観点でもものすごく大切。これまで科学衛星の打ち上げに使われてきたが、はやぶさのように固体ロケットで惑星間軌道に探査機を送る技術は日本だけが持っている。固体ロケットの技術は世界でも最高レベル。ただしこれからは性能だけではないというのを冒頭話した。これからはシンプル性も良くしていかなければいけない。自律点検・モバイル管制など。世界でも最も簡単に打ち上げられるロケットを作る。つまりイプシロンとは「世界一から世界一への挑戦」。


3つ目は輸送系全体の話。世界では液体と固体の2つある。固体のいいところは、複雑な構造のエンジンがいらないこと。部品点数で言うと半分。開発する時間や費用がかからない。代表的なものでH-IIでいうと開発に10年近くかかっている。イプシロンは3年とコンパクト。新しいことにどんどん挑戦できる。専行的な技術を固体で開発し順次液体に適用、あるいは未来の再使用ロケットに適用しようという考え方。


イプシロンで取り組む技術。打ち上げシステムの改革が一番大きなテーマだが、モバイル管制や自律点検など世界でも初めての技術を実証するために来年試験機を打ち上げる。ただし総開発費は限られているのでそのほかの部分は既存技術を最大限有効活用。たとえばSRB-A、誘導制御や通信機器などH-IIA系で大量生産されていて比較的安価に入手できる。一方上段ロケットはまさに固体ロケットにとって生命線。1段目は基本的に推力が大きければいいという世界だが、2段目・3段目は燃費がよく機体も軽くないといけない。M-Vがなぜ惑星探査機を打てたかというと、まさに世界最高性能の上段ロケットがあったからこそ。ここはあまりケチらず頑張らなければいけない。そこで元々世界最高性能だったM-Vの3段目と「はやぶさ」にも使った4段目キックモーターをイプシロンの2・3段目に使う。ただ使うのではなくコストと性能を良くする。たとえば最新の素材で軽量化し、製造プロセスも工夫し簡単に作れるようにしてコストパフォーマンスを上げる。例えばモーターケース(ドンガラ)はCFRPの繊維に樹脂を浸透させてぐるぐる巻きにし熱を加えて固める。こうしてロケットの胴体は出来上がるが、M-Vの時代では圧力釜で焼いていた。これが大変だったが、イプシロンでは圧力をかけなくてもいい。買ってきたピザを温めるように。性能を上げるだけではなく作り方も簡単に。それがこれからのロケット開発の在り方。この辺を話し始めると1日あっても足りないので次へ。


イプシロンは全段固体の3段式と言っているが、オプションの第4段で小さな液体ステージを搭載可能。これにより液体ロケット並みの軌道投入精度を獲得。ちなみに液体エンジンというと大げさに聞こえるが、M-Vの時代から姿勢制御用に小さな液体エンジンを載せていて、ほぼ同じものを4段目に使う。非常に小型・コンパクトでイプシロンのコンセプトに影響の無いようにしている。


来年の打ち上げが迫っているので色々な試験も進行中。風洞試験で空力性能を測る。音響環境確認のための小型燃焼試験、打ち上げの音が地面で跳ね返ってくるとロケットの機械が壊れるのでそれを低減する。小型モーター燃焼試験、モーターケースは新しくするが推進薬は基本的に同じなので大きなモーターでの燃焼試験はいらない。ちょっと確認試験をした。制振機構、1段目が燃焼する時に大きな振動が出るので特殊な振動抑制装置を開発し試験するところ。4段ステージに相当する部分、ここにイプシロンの心臓部というべき誘導制御装置や計測・通信装置、電力分配機などが乗った状態で音響試験をした。順調に進行中。


イプシロン発射管制の運用計画。内之浦の変わる部分と変わらない部分があるが、劇的に変わるのは管制室。M-Vまではロケットのすぐ近くにあり管制装置や点検装置、それを見守る人が100人規模でいた。これからはロケットの人工知能で自分で点検してくれるのでこれらの装置が不要になる。正確に言うと1台に集約される。これまでの大人数の管制室はパソコン2台と数人くらいに集約される。管制室を持ち運べるくらい小さくなるので「モバイル管制」と呼ぶ。まさに世界一の試み。ロケットのすぐ近くで完成する必要はなくなる。宮原(みやばる)のレーダーサイトという離れた場所にプレハブのような建屋を作り管制する。他のところは改修して使う。M組立室、ランチャーは現物を改修して使用する。種子島、相模原、富岡、筑波などネットワークで繋ぐ。



整備塔とランチャーの改修。整備塔の外観はほぼ同じだが、内部はクレーンを増強している。M-Vの1段目は2分割だったがSRB-Aは1本丸ごとなのでクレーンを重いものに対応。ランチャーは音の反射を低減するために数値計算や実験を駆使。ロケットを支えるドーナツ状の支持部をシュラウドリングと呼んでいるが、その高さを10mほどかさ上げ。地面から離れることで音の衝撃を緩和。発射台の下で煙道というスロープを作り音の流れが跳ね返ってこないよう地面に水平に流れるように改修する。こうすることでM-Vの時に比べうんと改善する。


それからこれはマニアックだが、ランチャー。M-Vでは斜めに発射するために付いていた。イプシロンでは垂直に打つのでこのランチャーはいらないのではという話もあるが、実はアンビリカルケーブルをランチャーから繋げて宮原と結ぼうと考えている。有効に活用できる。ただし垂直に飛んでいくときに邪魔にならないよう反対側に退避するような形に調整して傾ける(5度)。


内之浦は世界的にも非常にコンパクトな射場と有名。普通はだだっ広い所に何十kmも離れて作っているが、内之浦では山の斜面を利用して谷間や山頂に施設を作っていて、上から見ると狭い所に集約できている。これはまさに簡単簡素なイプシロンのコンセプトに合致していると言える。


イプシロンロケットへの期待と町のこれから

永野町長:今日ここに入ってきたときにものすごく緊張した。こういう所でお話しさせていただくのは今日が初めて。よろしくお願いいたします。M-Vロケット廃止決定後に地元自治体として次期固体ロケット射場を内之浦に要望して陳情など取り組んできた。内之浦と決定しまことに喜ばしく、肝付町一同歓迎している。立川理事長はじめJAXA関係者ならびに関係各位の皆様にお礼申し上げます。


昭和37年2月の起工式から今年、内之浦開設50周年を迎える。日本の宇宙開発の父・糸川英夫博士が内之浦に白羽の矢を立て、射場選定調査で山道を歩いておられるときに地元のご婦人がおはぎを差し入れて以来、婦人会の支援や漁協の理解、そして宇宙空間観測所協力会の発足など、地元は常に歩んできた町。起工式が行われた1962年の6月、人手不足となった土木工事に内之浦婦人会が立ち上がり作業に従事した。その際に糸川博士が激励と慰問に訪れられた様子。4度の失敗という苦難を乗り越え、日本初の人工衛星おおすみ」が誕生し、これは日本中が喜びに沸いた夜、かねてより交流のあった婦人会の橋本さん宅に実験班メンバーが集まり祝賀会が開催された様子。これはM-V3号機で「のぞみ」打ち上げ成功を祈願する千羽鶴贈呈の様子。こうした支援と交流が長きにわたってきた町。


時は流れ市町村合併により肝付町が誕生した矢先の平成18年、7号機の打ち上げをもってM-Vは廃止された。観測ロケット打ち上げは継続されたものの訪れるJAXA関係者、報道関係者、観光客の激減により閉鎖する民宿も出るなど地域経済は落ち込み、町から活気がなくなってきた。この時改めて観測所の重要性を再認識し、前出の要請行動等の取り組みを行った。開設当初に糸川先生が地域と基地の共存を掲げて以来、半世紀にわたり良好な関係を築いてきた。車の両輪にも似た関係であったのかもしれない。平成18年9月23日、「ひので」を打ち上げた7号機がM-Vの最後の姿だった。この日以来、あの地を割るような轟音は体感していない。


次期固体ロケット・イプシロンの射場を内之浦としていただくため陳情・要望活動に加え町内各所に懸垂幕や看板を掲げた。こちらは中学生が作成した看板。こうした状況にあった平成22年6月13日、平成15年5月にM-V5号機で打ち上げられた「はやぶさ」が7年60億kmの旅から地球へ帰還した。町ではJAXAへの祝電や花束贈呈、庁舎への懸垂幕設置など祝福に盛り上がった。また「はやぶさ」帰還は肝付町の状況に大きな変化をもたらした。世間の宇宙への関心が高まり、そして内之浦への関心も高まり観光客も増加した。そして翌平成23年1月12日についにイプシロンの射場が内之浦宇宙空間観測所と決定した。待ちに待った射場決定ということでこの時ばかりは防災無線により町民にその旨を伝え、広報紙の号外を発行した。左側は肝付町地域女性連絡協議会のご婦人が観測所職員に花束贈呈を行う様子、右側は庁舎に懸垂幕を掲げた様子。この数ヶ月前から広報紙で特集を組み、「はやぶさ」の成してきた偉業を紹介してきた。峯杉所長からもコメントを戴き、お手元の号外を出した。射場決定に続き「はやぶさ」も3本も映画化され、内之浦でも大勢のエキストラを集めての撮影が行われた。観測所にもご協力いただき、初となるロケット組み立て棟への上映会も行い大好評を得た。こうした「はやぶさ」帰還や射場決定の喜ばしいニュースが続いたことでかつて程ではないにしても内之浦には少しずつ活気が戻りつつある。


イプシロンは私が申し上げるまでもなくペンシルから続く固体燃料ロケットとしての輝かしい系譜を受け継いでいる。その新たな特徴であるロケット知能化やモバイル管制・低コスト化などで新しい時代を切り開こうとしている。低コスト化が図られることで滞在するスタッフ減少も危惧されるが、逆に打ち上げ回数増加が期待される。また管制区域が拡大されることに伴い周辺住民の日常生活や漁協等に影響があることは必至ではあるが、それを承知の上で住民・漁協も打ち上げの日を楽しみにしている。このように未来を切り開こうとしているイプシロンに私共地元としても惜しみない支援と出来得る限りの協力を行って参りたい。そして観測所と共存しイプシロンとともに新たな未来への可能性を切り開いていくため「肝付町スペースサイエンスタウン構想」を掲げることとした。開設50周年を迎える今年は日本の宇宙開発の父・糸川博士の生誕100周年にもあたる。肝付町では内之浦への射場建設をはじめとする業績を残されまた地域とともに歩んでいただいた恩人でもある生誕100周年記念事業を実施することとし、博士の銅像を建立する。感謝の思いを形に残すとともに、困難に立ち向かう強い意志と希望を次の世代へと繋ぎたいと考えている。除幕式は施設特別公開に合わせて11月11日に行う。銅像建立に際しては広く募金を呼び掛けたところ、全国から多くのご厚意を寄せていただいた。この場をお借りし心から感謝申し上げます。


また来年には待望のイプシロン初号機が打ち上げられるが、それに向けて町がロケット打ち上げ見学場および駐車場の整備などを行う予定。そして子供達に宇宙を志すきっかけを提供できるようなサイエンスキャンプの実施や学校教育に宇宙関係カリキュラム導入を図るなど宇宙の魅力を活かした教育活動へも取り組みながら、観測所を拠点とした宇宙公園の整備など肝付町スペースサイエンスタウン構想の目標としている。最後に、イプシロン打ち上げ成功を心よりお祈りし、またその開発にたゆまぬ努力と挑戦をしておられるJAXA関係者・関係企業の皆様に敬意を表したい。以上をもって肝付町からの期待と御礼の言葉としたい。


質疑

以下敬称略で。


―産経:3点。来年度ということだが来年のいつごろか。打ち上げコスト、M-Vとくらべてどうか。将来打ち上げビジネスに乗ったときにどのぐらい競えるかコスト面での実用性。イプシロンの名前の由来。過去にあった質問かもしれないが
森田:打ち上げ時期は夏期8月〜9月。コストはM-Vで75億円だったのが38億円となる。約半分。能力としては2/3なのでコストパフォーマンスは30%ほど良くなる。また38億円というのは来年打ち上げるイプシロンが定常打ち上げに乗ったときにいくらになるかというもの。初号機は試験機で様々な試験が必要なためこれよりはかかる。低コスト化について、2年前の宇宙開発委員会でも議論されたがイプシロン計画は二段階で進めることになっており、第一段階は来年打ち上げる機体の開発、第二段階はこれに加えて抜本的な低コスト化研究開発を行った低コスト版イプシロンを平成29年度目標で進めている。30億円以下になる。イプシロンクラスで世界のロケットを調査するとだいたいこの値段になる。これに加え諸外国は廃棄するミサイルでタダであったり政府支援で安くなっていたりしているが、全てを含めるとこのくらいである。これを踏まえ価格的に戦えるようにするためにはこのくらいに下げておけば大丈夫だろうと考え第二段階の研究を進めている。イプシロンの由来は、今日言えるところまで話すとMロケットから続く固体ロケットの最新鋭機ということでひとつにはギリシャ文字、アルファベットに置き換えられる物にしようと。イプシロンなら「E」。皆さん新聞に書くときに困るのでそういう工夫も。固体ロケットの先輩方と相談しながら進めた。ひとつの案はMの後継機だからN(ニュー)。しかしMロケットを超える部分がある。打ち上げシステムとしての改革。EにはExcellence、Exploration、Education、イプシロンが進むところを表す言葉の頭文字になっている。正直に言うともうひとつあり、物凄く大事なポイントで、これは晴れてイプシロンロケットが打ち上がり記者会見を無事に開くことができたあかつきにお伝えしたいと思っているので、現在の所はこの説明でご了解頂きたい。
―現在申し上げられないのが主たる部分?
森田:いい質問。半分、50%。


―読売:イプシロン1号機はSPRINT-Aだが、今後のスケジュールは見えているか。
森田:2号機は計画段階だが、2015年度を目指してERGというジオスペース衛星といって地球の主に磁気圏を観測する小型衛星を上げる。3号機以降は全く選定されていないが、約20個の小型衛星候補があり、ワーキンググループとして概念検討を進めている。近々選定作業が始まると考えているが正式にはアナウンスされていない。
―1年1機の予定で進めていくのか。また開発費は。
森田:総開発費は205億円。我々は年間2機くらい打てるよう定常状態では持っていきたい。試験機段階では去年の宇宙基本計画で紹介されたとおり5年で3機ペース。これに加えJAXA内の宇宙利用、技術実証など別分野の小型衛星が計画されており、その他JAXA以外にも他省庁や団体を含め小型実用衛星を構築しようという計画が進んでいるので、それらとタイアップすることで定常状態では年間1機以上に持っていきたい。


―日経:人工知能で自動点検というのは例えばどのような?
森田:2つのカテゴリーに分かれている。1つは点検自体は非常に簡単だが準備や安全確保に時間がかかる、たとえば点火系の点検。万一があると大事故に繋がるので安全上の管理が厳しい。点検装置は簡単に言うと電流電圧計。それをロケットに差したとたんにスパークが飛んで火が付いてしまうなんてことが無いように細心の注意と細心の装備をもって出掛ける。点検装置を差すだけで1日がかりの大仕事、しかも決死隊。これを省略するのはまさに自律点検。ロケット内に電流電圧計を持っているので、点検を命令するだけで瞬時にやってしまう。10人ぐらいで行っていた作業が1人もいらないようになる。もうひとつのカテゴリーは、ロケットにはバルブが乗っていて、これは機械と電気の集大成で非常に壊れやすい。どうやって点検するか。バルブは電気を流すとちょっと動いて流れを調整するもの。実際に電流を流してバルブを動かし、熟練エンジニアが時間をかけて波形を見て正常か異常かを判定している。これを機械が瞬時に点検する。簡単に言うと心電図。医療の分野でもこうなりつつあり、これをロケットの分野でもやろうとしている。


NHK:定常では38億円とあったが初号機ではいくらか。自律点検・モバイル管制は初号機から実現されるか。
森田:初号機のコストは地上の追加試験等を含めて53億円。先ほど申し上げたとおり自律点検には2つのカテゴリーがある。1つは電流電圧計のようにセットアップにかかる時間を節約するもの。やってることは電流電圧計で測るだけというようなものは初号機から全て搭載される。一方、より人工知能的な波形の点検など、これらは熟練エンジニアがどんな波形でどういう判断をしているか色々な試験ケースを作って、あるいは開発過程の波形判定をエンジニアにさせてそのノウハウを機会に教え込むという作業が必要。初号機の時点で「完成」とはならない。ロケット開発を進めながら逐次ノウハウを機械に教えていく。2号機・3号機と知能が増していくという性質のものなので初号機はあくまで「最初の状態」。


―SMC:森田さんに二点、永野さんに一点。まず森田さんに、定常運用時までに何機打ち上げるか。低コスト化まで何機くらい打ち上げるか。
森田:なるべくたくさん試験機を打ちたいというのが正直なところだが、予算事情も考えると恐らく4機目、もしかしたら5号機からが定常運用の狙い目。固体ロケットは開発期間が短く高頻度に打ち上げられるのが特徴。段階的なアプローチを組み合わせ、「今日から低コスト版」というのではなく、フライト結果を見て改良するものなどと連動してステップバイステップで開発を進めることで、おそらく定常運用形態と低コスト形態を同一のものにできるのではないか。改めて開発費や開発期間を設ける必要は無くなる。
―森田さんの思いとしてはイプシロンに今後どういう衛星を載せたいか。
森田:まず我々は「宇宙をもっと身近に」というものがあるので、色々な分野から宇宙に参画できるようにしたい。色々なニーズに応えられるような衛星をどんどん打っていきたい。もうひとつは宇宙科学と切っても切れない関係なのでこちらも推進していきたい。たとえば惑星探査。こちらも小型化の流れがある。最先端の探査技術を早く実証したいというところで貢献できる。


―永野さんへ。打ち上げ見学場の整備をされるとのことだが、何人くらいが見学可能になるか。交通の便が不便だと聞いているがこれを改善する取り組みはあるか。
永野:何名くらいというところまではまだ想定していない。現在の見学所は手狭になっているということと、交通の便は陸の孤島大隅半島ということで、高速道路が平成28年に全て完成するので空港から高速で2時間ほどなのが1時間半ほどになる。それ以上の短縮は難しいのでは。リムジンバスが鹿屋まで来ているがその先は無いのでご迷惑をおかけしている。レンタカーが一番。


フリーランス大塚:開発が順調かと思うが多少苦労する点があると思う。今どこに苦労しているか。
森田:ちょうどいい人が横に座っている。固体ロケットは上段が生命線。1段目にSRB-Aを使って性能的にちょっと損した部分を上段ロケットで最高のものにしようという試みをしているが、元々世界で最も軽いモーターケースを更に軽くするということで、先ほどは簡単に言ってしまったが挑戦的な部分。開発過程で様々な試験を行い様々な知見をひとつひとつ潰しながら進めている。順調な開発過程の中でよく起こることだが、世界一の部分を改良するところで我々は一生懸命頑張っている。
―以前大型化の話もあったと思うが、今後のロードマップとしては現状のプランや個人的な考えは。
森田:ユーザーのニーズを考えると、小型に活路を見いだしている人が沢山いる。もうひとつはH-IIAなど大きな所に実用衛星のニーズがある。中間層をどうするかこれから我々が考えていくところ。M-Vで上げていた大型科学衛星を少し超えるようなミッション。「あかつき」のような金星探査機をH-IIAで上げたが、元々M-V打ち上げを計画していた。これらをH-IIAで上げている状況がある。これをこのまま続けていくか、あるいはイプシロン大型化かは選択肢になり得るので大型化の検討も進めていきたいというのが私個人の意見。



こちらにぶら下がり動画もアップされています。Mシリーズのようなウルトラマンカラーリングはされないだろうが、何かデザインすることはあるかも!? 色によって熱設計が変わるのでそこは慎重になる部分ですが。またSRB-AにM-Vの上段を組み合わせるという部分での工学的な苦労はあったようですが、そこはうまく最適化して結果的にコスパ向上に成功しているそうです。


今日のはてなブログ:イプシロンロケットに係る記者説明会 [Imamuraの日記]

自分はほぼそのまま起こしましたが、今村さんが非常に読みやすくまとめられています。配付資料もアップされていますのでこちらも是非。