JAXA's + No.047(11月1日発行) [JAXA]

今更読みましたがこちらも新号が出ています。HTV「こうのとり」3号機で導入した新型国産スラスタなどについて。

「技術実証機から新型エンジンを、という考えもあるかもしれませんが、まずは実績のある部品やユニットを採用し、HTVを安全な輸送システムとして完成させることに力を注ぎました。出来上がったシステムを改良していく中で、国産の部品に置き換えていくという確実な道を選びました。

推進薬(燃料)にはヒドラジンの水素1つをメチル基で置き換えたモノメチルヒドラジン「MMH」が使われ、酸化剤には四酸化二窒素(NTO)に重量比3%の一酸化窒素(NO)を混ぜた「MON3」が使われている。いずれも軌道上で長期保管が可能で、2液を混ぜれば確実に着火する、信頼性が高く実績のある組み合わせだ。

「反応に関わるのはC、O、H、Nのわずか4元素にすぎませんが、燃焼室内では何十種類もの物質が関わる過渡的現象が起きており、コンピュータシミュレーションで再現するのはまだまだ非常に難しいんです」(同・液体推進技術室・松田奈緒己氏)

最初のヤマが燃焼室の異常な温度上昇。ここにはわれわれがこれまで扱ってきたヒドラジンとモノメチルヒドラジンの物性の違いが意外に大きく関わっていたことが、対策を通じ判明しました。次に起こったのが低周波の振動で、その対処にめどが付いたところで、高周波の振動の問題が出ました。いずれも振動が起きてしまと"フィルム冷却"が破れ、燃焼室の温度が上がってしまう。特に後者の高周波振動は1万回作動しても2〜3回起きるかどうかという再現性の低い現象でした」(松田氏)

「アプローチの際の細かな運用が変わり、NASAの安全審査が改めて必要になる部分もありましたが、審査する側に"日本が持ってくる話なら心配ない"という信頼感があったようです。技術実証機、2号機がパーフェクトな成功を重ねてきているおかげです。『こうのとり』の運用に携わるJAXAの方からも、"複数のエンジン間で性能のばらつきが小さい。熱的にも安定している"と喜んでもらえました」(中井氏)

IHIといえばBT-4というN2H4ヒドラジンを推進剤にした衛星用500N級スラスタが国際的に結構なシェアを持っていて実績がありますが、HTVで新たに開発したのはMMHモノメチルヒドラジンを使用する500N級のHBT-5と120N級のHBT-1。混ぜれば燃える推進剤といえどその開発には試行錯誤があったそうです。確かに筑波で聞いた話でも開発が押し気味だったというふうにおっしゃってましたが、しっかりとモノを仕上げられたのは流石ですね。
記事ではISSにアプローチする映像でスラスタがぷしゅっと吹いているシーンが見えて感動したと話しておられますが、こちらにその映像が上がっています。



他にも「しずく」や星出さんの船外活動関連、リアルタイムOSなど面白い記事が載っていますので是非。