JAXA、ハイブリッド風洞ダーウィン完成 調布航空宇宙センター [Aviation Wire]

 ダーウィンは通常の風洞実験(アナログ風洞)にスーパーコンピューターによるシミュレーション解析を組み合わせたもの。同センターにある「2メートル×2メートル 遷音速風洞」はマッハ1前後の早さ(遷音速)で飛行する航空機の空力特性の把握に使用されている。マッハ0.1から1.4の環境を作り出し、長時間連続で試験が行える。実際に空気を流して行う実験は信頼性が高い反面、風洞で使う模型を作るだけで3カ月かかり、模型1機あたり2500万円から1億円とコストが高くつくのが難点だ。また、風洞の壁や模型を支える支持装置があるため、実際に空を飛ぶ状態とは異なる点も考慮しなければならない。

 JAXAでは既存のアナログ風洞スパコンを融合したハイブリッド風洞として、2008年から12年までの5年間に6億円をかけてダーウィンを開発。アナログ風洞で得たデータに、壁や支持装置の影響がないデータをデジタル風洞から得て反映することで、航空機の設計の精度を向上できるという。また、インターネット経由で風洞実験に参加できるようになるため、従来1カ月かかっていた修正をリアルタイムに行えるなど、高効率化や利便性の向上につなげられる。

 また、アナログ風洞で用いる模型も、デジタル風洞で事前に形状を試行錯誤できるため、風洞実験の期間短縮にも貢献する。風洞施設のスケジュールは年度頭にはほぼ埋まってしまうため、実験のやり直しを未然に防ぐことも重要だ。JAXA風洞技術開発センターの渡辺重哉センター長は「風洞実験前にシミュレーションが行えるようになり、やり直しが減った」と話す。

JAXA 新風洞システム開発 [NHK]

JAXA風洞技術開発センターの渡辺重哉センター長は「国際宇宙ステーションから荷物を積んで帰還するための機体の開発などにこのシステムを生かしたい」と話しています。

先行投資は高く付きますが、シミュレーションを組み合わせることでリアルタイムに修正が可能になるのは試行錯誤が必要な時に非常に有用ですね。