鉄はどこから来たのか? -X線天文衛星「すざく」が初めて明らかにした鉄大拡散時代- [JAXA]

 鉄などの重元素は、宇宙の始まりであるビッグバンの時点では存在せず、星の中で合成されたのち、その星が最後に超新星爆発を起こすことで周辺の空間に拡散します。宇宙誕生から約30億年後(いまから約110億年前)に、星が大量に誕生し、星の大集団、銀河が沢山生まれたと考えられています。星々で生まれた重元素が銀河の外まで運ばれることは知られていましたが、この時代の重元素が銀河の中や近くにとどまっていたのか、あるいは銀河間空間をはるか遠方にまで大きく広がったのかについては知られていませんでした。全宇宙の鉄などの重元素の多くが生成されたこの時期、その重元素がどのように宇宙中に広がったのかを知ることは、すなわち、我々の身の回りの重元素がどこから来たのかを知ることに他なりません。

1000万光年にも及ぶ広い範囲について鉄の割合がほぼ一様であることから、鉄のほとんどは、銀河団が形成された時代よりも前に、宇宙に大きく広がりよく混ざっていたと考えられます。銀河団の誕生は宇宙誕生から約40億年後(いまから約100億年前)だと考えられていますので、いまから100億年以上前に、鉄などの重元素が星々から大量にまき散らされ、宇宙中に拡散した時代があったこと、現在の宇宙に広がるほとんどの重元素はその時代にまき散らされたものであることが分かったのです。

 主著者のスタンフォード大学ノロベルト・ウェルナー研究員のコメント:「鉄の分布が驚くほど一様であることをはっきり示せたことで、はるかな昔に重元素を大規模にかき混ぜる時代があることが確認できました。」(図3)

 観測プロジェクト提案者の一人で共著者のJAXAインターナショナルトップヤングフェローシップの、オーロラ・シミオネスクのコメント:「我々の起源はとても古かったわけです。皆さんの血液にも含まれる鉄の中には、遥かな昔100億年も前に、100万光年の彼方で作られ、宇宙を旅して来たものも含まれていることになります。」

遠大な話ですね。まさに千の風