小惑星探査機「はやぶさ2」の挑戦 第3回:宇宙のシンデレラ「はやぶさ2」が輝くまで [日経テクノロジー]

川口先生インタビュー第3回。今回はロケット探しから予算折衝の舞台裏までかなり突っ込んだ話になっておりますよ。

川口 ロケットを使える可能性があるところは全部赴いて、交渉しました。「Rockot」(ロコット、図1の右)を有するEurockot Launch Services社(ドイツとロシアの合弁企業)、新ロケット「VEGA」(ベガ、図1の左)を開発中だった欧州宇宙機関ESA)……。アメリカにも行きました。
 でもって、やっていることは極端に言えば無料の技術指導ですよ。例えば、欧州でVEGAの開発を主管していたのはイタリア宇宙機関(ASI)ですが、ASIは自分たちのロケットで太陽系空間へ探査機を打ち上げるためのノウハウを持っていないわけです。我々は、打ち上げのトラジェクトリを一つひとつ計算して、「ほら、そちらのロケットでも、このようにしてはやぶさ2を打ち上げることが可能ですよ」と示すわけです。

当初は、割ける予算が無いためにロケットはタダで引っ張ってこなければプロジェクトは進められないという状況。もう出せるものは全部出すという感じだったようですが、相手側としては取って付けた共同ミッションである感は否めなかったようです。

川口 2009年に入ると、当時の立川敬二JAXA理事長から「検討の状態で長い間引っ張っているのだから、新基軸を出そう」と、新規のオプションを検討するように、という指示がでました。

インパクタ―発案の契機となったのは立川前理事長の鶴の一声だったそうです。インパクタ―は「はやぶさ2」におけるハイライトのひとつ。つまづいてもただでは起きませんね。

川口 アメリカがもう方針転換しているのに気がつかずに、月探査をやるという会議を立ち上げてしまった。そこでかぐや2をやるかやらないかという議論をすれば、当然予算をどうするという話が出てきます。すると「はやぶさ2はどうするの」ということになるわけで、これで時間がかかってしまいました。

アメリカありきの将来計画ではハシゴを外されるとどうしようもありませんね。元々着陸機まで独自に考えていたはずなんですが。今だとISSなんかどうなるんだろうという感じですし、2010年に計画が中止されたGXロケット輸入禁止が取り沙汰されているRD-180を使用する計画でしたから、仮に順調に開発が進められていたとしてもこの状況でどうなっていたかは分かりません(これはちょっと結果論が過ぎると思いますが…)。