再び宇宙大航海へ臨む「はやぶさ2」 第3回:イオンエンジン・化学推進の改良点 [ISAS/JAXA]

 「はやぶさ2」搭載のイオンエンジンは、「はやぶさ」当時の設計を基本的に踏襲しています。「はやぶさ」では2つの大きなエンジントラブルが生じました。一つは初期に発生したイオン源1基のプラズマ点火不良であり、もう一つは1万時間から1万5000時間の運転後に発生した中和器3基の劣化や故障です。「はやぶさ2」では、これらの不具合の原因を推定した上で対策を講じました。前者に対しては、イオン源の推力発生効率の向上と点火確実性とを両立するように各部の調整作業を入念に実施しました。後者に対しては、中和器の長寿命化のために放電室内壁をプラズマから防護し、電子放出に必要な電圧が低減されるように磁場の強化を行いました。試作中和器で実使用環境を忠実に模擬した毎週1回のオンオフによる高温・低温のサイクルを印加する耐久試験を2012年夏から実施し、2013年度末には「はやぶさ2」で要求される1万4000時間の運転を無事に達成しました。今後も2014年末の2万時間を目指して試験を続行する計画です。

中和器は着実に耐久性を向上させているようです。8mN→10mNへの推力アップについては、キセノンの流量や電極の調整だけで実現したそうです。