米スペースX、日本の“4倍速”で有人飛行へ 有人宇宙船の価格破壊者、「ドラゴンV2」公開 [日経ビジネス]

 マスクCEOが提示する1座席の価格2000万ドル以下というのは、2001年の段階でロシアがソユーズ宇宙船のチケットとして提示していた価格と等しいか、それ以下ということだ。当時のソユーズの価格は、ロシア経済不調によるルーブル安と、なりふり構っていられないロシア航空宇宙産業のダンピングによって実現したものだったが、ドラゴンV2の2000万ドル以下は、米国内で技術開発を進め、積み上げていった結果の価格である。

 ソユーズの2000万ドルという価格で、富裕者層の地球周回軌道への商業宇宙観光旅行が始まった(2001年のデニス・チトーを始めにこれまでに7名が、ソユーズによる宇宙観光旅行を体験している)ことを考えると、ドラゴンV2は、ISSへの往復用途だけではなく、宇宙観光旅行をも大きく切り拓く可能性がある。

スペースX社、新たな有人版ドラゴンを公開 その名はドラゴンV2 [sorae.jp]

 スペースX社が現在、ボーイング社とシエラ・ネヴァダ社と獲得を目指して競っているNASAの契約はCCtCap(Commercial Crew Transportation Capability、商業有人輸送能力)と呼ばれるもので、その勝者は今年8月にも明かされる予定だ。NASAはここで1社以上を選ぶとしているが、財政事情もあり、3社すべてが選ばれることは無い見通しで、おそらくは1社のみになる可能性が高いと予想されている。今年4月の時点では、ボーイング社は20個ある規定の目標のうち17個をクリアしており、スペースX社は17個中の13個、シエラ・ネヴァダ社は13個中の8個となっており、ボーイング社がもっとも優勢だ。

 同社がそうしたリスクを犯してまでドラゴンV2を開発しているということは、彼らにとってドラゴンV2は、あくまで真の目標への通過点に過ぎず、そしてその真の目標とは、NASAからの契約獲得などではなく、彼らが度々語っている火星への移住など、人類の宇宙進出だからであろう。

ファルコン9Rにしても同様ですが、SpaceXにとってISSは単なるビジネスではなく宇宙開発の革新を目標に据えたファーストステップなんですよね。NASAJAXAといった官の宇宙開発の引き合いにも出されがちですが、輸送系に特化したSpaceXとミッション部を含めた総合的な開発を行っている官とではフットワークに差が出てくるんでしょう。といっても単に民間だからベンチャーだからという話でもないですよね。最もコストのかかる推進系では大きな冒険をせず、その信頼性を応用してフライバックという挑戦をしたりと「溜め」が上手く効いている感じがします。世界中が手に汗握って注視していることでしょう。
個人的には「イプシロン」がまさにそのアプローチで挑んでいるのではないかと思います。これらは単純な性能やコスト面での競争ではなく、運用における革新ですね。