相模原キャンパス特別公開2014に行ってきた 2014.07.26

さあ今年も夏の例大祭の季節がやってきました。今回も時間の都合で2日目のみの参加です。




朝6時。京都駅に向かうべく電車に乗り込みますが、既にめっちゃ暑くなっています。




京都駅の改札にて切符がダイナミックに詰まったため、1本遅れの新幹線に乗り込みます。こんなこともあろうかと時間には余裕を持ってスケジュールを組んでいたので開場にはまだ余裕で間に合う計算です。




淵野辺駅到着。相変わらず暑いですが、例年通り相模原キャンパスまで徒歩で向かいます。




9時40分頃、アクエリアスをラッパ飲みしながら相模原キャンパスに到着。すでに開場待ちの賑わいを見せています。




ここでお目当てだった國中先生の講演の整理券をゲットすべく並びます。ていうか暑い。




予定を10分前倒しし9時50分に開場。整理券配布も同時に開始され無事確保。待っている間JAXAうちわが役に立ちました。講演会は10時30分から向かいの国立近代美術館にて行われる予定なので、それまで少しブースを見て回ることにしました。





SPRINT-Aひさき」こと宇宙門松の模型が展示されています。空調効いててめっちゃ涼しい。ここでお話を聞いてみました。

  • 望遠鏡の斜めにカットされフードは地球から一定の角度を保ち光が入り込まない角度を計算している。
  • 月と水星は似ているが、月は地球に近すぎるため直接観測することは難しい。月面が入り込まないよう少し外れたところを観測することで月の希薄大気を観測することも検討。
  • 水星は太陽に近いのでエネルギーが10倍。観測するには工夫が必要。大気はナトリウム、肉眼では黄色に見える。
  • この模型はNEC製のハリボテ。試験モデルなどではない。
  • 望遠鏡から入った可視光をCCDカメラで捉えて姿勢制御に利用している。


 


姿勢制御などを計算している計算機は外側にくっついている箱状の中に収められており、その反対側にはちょうどバランスを取るように薄膜太陽電池などを実験する「NESSIE」が取り付けられています。



こちらは現在の「ひさき」。



横のブースでは「ひさき」の講演会が行われていたのですが、そろそろ時間が来たので国立近代美術館に向かいます。


宇宙科学セミナー「電気ロケット はやぶさ1号2号を支える技術/國中均」


録音・撮影はNGなためメモからの起こしとなります。國中先生は通路を練り歩きながらスピーチしておられ、時々質問もし、講演というより講義という感じでした。技術的にもガチな話があり、メモりきれなかった部分含めて濃い内容でした。

人工衛星は地球の周りを落ち続ける形で飛び続けている。エンジンの性能が良ければ動力航行が可能になる。
大砲を乗せた台車がある。大砲を撃つと反動で台車が動く。より大きく動かすにはどうするか? 質問。


火薬を増やす→求めていた答えとは違うが、もう一つの答えとしてとっておきたい(会場笑い)
弾丸を増やす→初期重量が大きくなってしまう。より遠くへ行くためには…
弾丸の速度を速くする→正解。これは「火薬を増やす」ことでも可能になる。


運動量保存の法則。大きな加速量を得るためには軽く・速く・沢山の燃料が必要になる。噴射速度を増やすことに心血を注いできた。
化学ロケット、液体水素では4.7km/sの速度でジェットが噴射される。電気推進では30km/s、必要な燃料はおよそ1/10になる。
日本の惑星間探査機、「ひてん」では重量の1/10が燃料。「のぞみ」では1/2、2km/sの加速。加速量の要求は増えていき、このままではほとんど燃料だけになる。「はやぶさ」では4km/sの加速量を機体重量の1/10の燃料で実現。
電気推進では太陽光による発電で動力を作り加速に用いることができる。高速噴射→低燃費→高比推力。低推力だが連続加速が可能になる。大きい推力で一気に加速するとアンテナなどが揺れるが、低推力でゆっくり加速すると揺れないというような利点もある。地球周回衛星でも電気推進に特化したものが出てきている。


電気推進の種類

  • DCアークジェット 電極はタングステン。非常に高温で、エンジンが赤熱している。
  • MPDアークジェット
  • ホールスラスタ 円環チャンネルでプラズマを加速。
  • イオンエンジン


MPDアークジェットは「たんせい4号」のスピンアップ実験で用いた。SFUにも搭載。日本以外はあまり行っていない。ホールスラスタは現在海外で広がっており、日本は出遅れている。是非JAXAでも行いたい。

ホールスラスタといえばロシアのモロゾフ教授。

イオンエンジンとは、プラズマを作りクーロン力でイオンを加速させる。グリッドには2〜3mmの孔がたくさん開いており、マイナスの電極となっている。中にはうまく通り抜けずグリッドにぶつかるイオンがある。これが壊れるメカニズム。数値シミュレーションで再現(シミュレーション動画再生)。グリッドを設計可能なツールができている。現在2〜3万時間、2年半以上連続運転できている。
最初1.8mmだったグリッドが運転開始から18000時間経過してもまだ使える状態。


プラズマは固体・液体・気体に次ぐ第4の状態。大変高温で、これによってもエンジンが壊れる。蛍光灯はプラズマイオンが蛍光を発するものだが、電極を溶かし、粉末が黒く付着する。これと同じような現象。


直流放電式イオンエンジンアメリカが開発しており、日本はそこから出遅れて始めた。この方式は電極が劣化するため、これを解決してやろうとマイクロウェーブに挑戦した。
マイクロ波放電式イオンエンジンでは電子サイクロトロン共鳴を用いる。磁力線の周囲を螺旋運動する電子に対し弱いマイクロ波を放射すると電子が加速していく。この方式の利点は、イオンには作用せず電子にだけ作用するところ。電子だけに作用すると高温イオンは作られず長寿命化に繋がる。もちろんそれは簡単ではなく、開発当初のものは宇宙で使える代物ではなかった。


ロケットは軍事に用いられたが、ついに月まで到達した。これらはドイツの人々が推し進めた。オーベルト、フォン・ブラウン、アーネスト・シュトリンガーの3人。シュトリンガーが実機を作った。2013年国際電気学会にてシュトリンガーメダルを戴いた。夜の羽田便で授与式に参加し1泊して帰ってきた。写真を撮ったが顔がむくんでいる(会場笑い)


はやぶさ」では小惑星イトカワを探査した。地球からでは光の点にしか見えない天体。これが凄い。地球からレーダーで観測したものでも長細い形までしか分からない。ランデブー観測してより鮮明に。更に接近して瓦礫までよく見える。さらにサンプルリターンすることで微粒子を手にした。写真で見ると「点」なのは一緒だが、観測分解能は+11乗から-10乗まで22桁向上したと言える。
はやぶさ2」では別の小惑星へ。更に高性能な観測装置を搭載し、より洗練された技術を用いて壊れないようにする。Kaバンドアンテナを搭載し、イオンエンジンは8mnから10mnへ。リアクションホイールは4つに。
イオンエンジンはだいぶ手こずりギリギリになったが間に合った。「はやぶさ2」に搭載され最終段階。現在は○棟で… 耳を澄ませば聞こえるかも?(会場笑い)

また、インパクタを搭載している。「はやぶさ」では外からそっと取ってきた。サンプルからは宇宙風化について分かった。「はやぶさ2」では内部からフレッシュな情報を持ち帰る。実機は完成している。


1.スペシャリスト(専門バカ)を目指せ。
2.成果を社会に還元する。(いつまでもバカやっているわけにはいかない)
3.未来は決まっていない。かつてイオンエンジンなんて上手くいくはずはないと言われた。今としてはそれは違った。
4.挑戦なくして未来は作れない。


将来の宇宙探査 「はやぶさ」を強化したものは従前。本命はソーラー電力セイル。木星スイングバイでトロヤ群へ。
有人小惑星探査。SLSで打ち上げる。電気ロケット運搬船・居住モジュール・有人カプセルと打ち上げるプラン。
10〜30年後、こういう仕事があるかも知れない。是非一緒に…自分はいないと思うが(会場笑い)、私の後輩と共に。


15〜16世紀頃、大航海時代があった。100〜200年がかり。今は宇宙大航海時代の入口。少なくとも「はやぶさ」で帰ってこられた。ISSには人が常駐している。まだまだかかるかも知れないが、その先駆けとなったのではないか。

質疑

太陽風を用いたものは
マグネティック・セイルというものがあるが、まだ実現はしていない。ソーラーセイルでは光圧を用いている。


―どのくらい未知の領域へ?
予算かかるが、まずは1999JU3へ。位置関係が良くないため、レーダー観測があまりできていない。


―何故JAXAへ入ろうと?
ISASにいたが、気がついたらJAXAにいた(会場笑い)


 


講演会を終え、再び第1開場に戻ってきました。ここにはいつものではなく有志が制作した「はやぶさ」模型が展示されています。よく見るとこれは以前万博記念公園で展示されたいたものですね! 川口先生と吉川先生のサインがあります。



 


ミッションパッチステッカーをゲット。




現在「はやぶさ2」はここまで形になっています。




小惑星表面にクレーターを生成するインパクタ。その様子を撮影するDCAM3について聞いてみました。

  • アナログとデジタルのカメラを搭載している。
  • DCAM1/2ではアナログだけを積んでいた。
  • アナログは高速撮影(2〜10fps)、デジタルは高画質(1fps)
  • 分離方法が異なる。IKAROSでは上から撮影するので縦軸でスピンさせて縦軸方向に放出したが、DCAM3は横から撮影するため横軸でスピンさせ縦軸方向に放出しないといけない。
  • 分離は距離・相対速度などを測りながら自律で行い、その後は本体が退避マヌーバを行いながらタイムラインで自動シーケンス。


ここで一度電気推進ブースに向かいます。超あっつい。




今日も宇宙服さんが歩いていますが内部は大丈夫でしょうか?




中庭ではローバが実演されています。



 


こちら電気推進ブースではDESTINYのペーパークラフトが配られていたのですが、既になくなっちゃっているようです。残念。



 

  • パドルのパネル1枚は70cm四方。
  • DESTINYに搭載するのはガラスタイプ。NESSIEもガラス。
  • 小型科学衛星3号機は7機の候補→2機に絞られ、年度末までに選定。2019年打ち上げ予定。

 


DESTINYをイプシロンフェアリング搭載した模型。これもどうやら有志の方が制作したもののようです。すげえ…



 


さて、こちらは「はやぶさ2」に相乗り予定のPROCYON。

  • ミッション期間は最大3年くらい。
  • イオンエンジンなどほどよし4号とほぼ同じ。違うのはキセノンジェットが付いている所。8箇所。
  • 目標天体はだいたい絞られている。
  • 目標天体にはフライバイ時に30kmまで再接近する。
  • 個人的な印象では、大型ミッションだと保守的になりがちだが、こういうものでトライ&エラーできる。

これが凄いのは、イオンエンジンを搭載していて複数の小惑星をフライバイ観測できるという所です。惑星探査ミッション自体はそんなにありませんが、だからこそその貴重な機会に相乗りして手軽な探査ミッションを追加できるというのは非常に面白いです。大型ミッションほど探査目標選びも慎重になります。ちょっと気になるけど本ミッションで選ぶほどでは…というものにも使えそうですし、楽しみです。



 

こちらはエンジアリングモデル。何かあったらフライトモデルに使うかも?とのことw


IKAROSブース

再び第1会場に戻り、IAKROSブースへ。エンドレストーク中の森先生に吸い寄せられてお話を聞いてきました。

  • 「あかつき」が金星に到着すると本格的にアンテナを使い始める。そうするとIKAROSに割ける時間が更に少なくなるため、予算よりもこちらの方が厳しい。
  • IKAROSは計算上冬眠に入っていると思われる。次回の運用は8月なので、その時に確定する。
  • 2016年8月2日に地球へ最接近する予定。
  • ソーラー電力セイルは来年プロジェクト化を提案。通れば2023年打ち上げ予定。2049年帰還。

 


こちらソーラー電力セイルに向けた検討状況。70m級セイルの制作手法を色々工夫しているようです。IKAROSでは4分割だったセイルを更に分割して8分割に。今年の夏には試作を開始するそうです。薄膜太陽電池はダミーを用いるとのこと。またこのセイルを収納するにあたって「モコモコ巻き」なるものを編み出したそうです。

  • モコモコ巻きとはセイルを折り畳んで巻き取るにあたってあえてたるみを持たせることで収差を吸収するというもの。これでズレることなく収納できるようになる。
  • トロヤ群探査では着陸機にその場観測機能を搭載する。その上でサンプル採取を実施し、本体にドッキングする。
  • 探査を行うのは20km級の小惑星になると思われる。このサイズになると表面はレゴリスに覆われていると思われる。
  • 氷の可能性もある。はやぶさシリーズと同じく、どんな表面にも対応できるプロジェクタイルによる採取が有力。


こちらは液晶デバイスを手動で体験できるものです。これは楽しいw 




おっと、こんな所に黒イカ発見。


赤外線ブース

こちらはNikon製の「あかり」主境試作品。
 

  • 炭化ケイ素で、フライトモデルは鏡面に金が蒸着されている。
  • SPICAの大きさの主境を制作する設備は日本にはないので欧州で作る。
  • 1000億のオーダーの国際分担なので足並みが揃わないと通りにくい面も。そろそろ決着を。


ん? これは…SPICA? 望遠鏡上部にあったパドルが後部に移動し尻尾のようになっていますね。

  • パドルは太陽光に暖められて400kほどになる。望遠鏡に熱が伝わりにくくするためのもの。
  • 打ち上げ後にバス部と望遠鏡の間のトラスが伸展する。
  • 推進剤のヒドラジンに含まれるアンモニアは生命探査の観測において邪魔になる。コンタミしないよう注意を払う。計算ではクリアできている。パドルに付着する分も問題ない。
  • 別の問題として、角運動量が発生する。これをクリアするのはこれから。


あかりちゃん最終巻ゲット! あかりちゃん最後までよく頑張った(´;ω;`)



 


こちらは気球に搭載し成層圏から電波観測を行う計画。VLBIも可能のようです。




 

お、ASTRO-Hの望遠鏡に搭載する反射鏡。このパーツが1台につき1278枚使用されます。



 


現在開発中のTSUBAME。ドニエプルで打ち上げ予定です。




 


再び第1会場へ。有人探査ロードマップ。ISSの報道について聞いてみたかったのですがお話中だったので先を急ぐことにしました。


月探査ブース

 


月探査ローバー。ロボットアームは前回展示されていたものと若干変わっていますね。ここで先日報道されたNASAとの共同ミッションについて聞いてみました。

  • NASAとしては極域探査を推している。
  • NASAにとって着陸機はやったことのあるもの。やったことのないローバなどをやりたがっている。
  • 分担については、NASAがミッション部を主導するなら打ち上げを負担すべき、日本が上げるならもっと日本ミッション部を増やして欲しい、という形。
  • 来年度予算を要求するため、あと数ヶ月で纏める必要がある。

実は去年お話を聞いた時は「もう無理かなあ」みたいな諦めムードでいらしたので、NASAがミッション部を主導するとはいえなかなか予算が出ない現状では渡りに船という感じだそうです。今度こそ通って欲しいですねえ。




「かぐや」で観測した重力マップを球形スクリーンに投射したものでしょうか。




観測データから3Dプリンタでクレーターを再現。




 
 


縦孔探査。クレーンで下りていくものから放り込むものまで検討中。





 
 
 


これまで見つかっている縦孔の数々。面白そうなのですが時間が無かったため写真のみ。


「あかつき」ブース

 




現在「あかつき」は来年末の金星再接近に向けて飛行中です。これは来年の自分の誕生日にどのような位置関係になっているかを表から割り出すゲーム。来年の自分の誕生日は… 食になるようですw





イプシロンブースにやってきました。ここで15時から森田先生の講演が始まるのですが… ちょっと頭がふらついてきたので休憩室へ。寝不足と気温のせいかな? 水分を取って休んでいたらマシになってきました。講演会が終わった頃を見計らって、森田先生に以前戴いたサインのお礼をしにご挨拶へ。憶えていて下さったようです。




ペンシルロケット。これは実機でしょうかね。




熱可塑性樹脂。何度も溶かすことができるので、固体推進剤を充填する時にクラックが発生してもやり直しが利くというものです。勝手に中身を見ても大丈夫だったんでしょうか?



 


ペネトレータ用モータ。これも実機ですか…



 


ここまで来たら多分これも実機でしょう。うん。


プラネタリウム作品『HAYABUSA2 -RETURN TO THE UNIVERSE-』を鑑賞


16時50分から上映される新作を見に来ました。まだ全国5箇所くらいでしか上映されていませんので、せっかくの機会にと思いチケットをゲットしておきました。




非常に素晴らしい作品でした。最初のシーンから鳥肌立ちまくり。ネタバレは控えますが、まず打ち上げ前にどこまで作品として盛り込むのかが気になっていました。 1999JU3への想像力をかき立て、「はやぶさ2」実現への後押しを描き、さらに打ち上げるロケットの解説にも力が入っていて大迫力。上坂監督はH-IIA23号機の打ち上げも現地で見学されたと聞きましたが、1回見ただけであそこまで描ききるのは本当に凄いです。逆に言えば、プロジェクトチームの人たちにとってはハードル爆上げかもしれませんがw ともかくクオリティは折り紙付きです。お近くで上映の際には是非!





今年も夏の祭りが終わりました。皆さんお疲れさまでした!





宇宙クラスタの皆さんで大挙して飲み会。焼き鳥おいしゅうございました。大変盛り上がっていたのですが、終電があるため途中退席。今日は有難うございました!




23時、京に到着。うーん、何だかんだで丸一日歩き回っていたようです。クソ暑くて大変でしたが、まあとりあえずいい天気でよかったですw