X線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の通信異常について [JAXA]
平成28(2016)年2月17日に打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)は、3月26日(土)の運用開始時(午後4時40分頃)に衛星からの電波を正常に受信できず、その後も衛星の状態を確認できない状況が続いています。現時点で、通信不良の原因は不明ですが、短時間ではあるものの衛星からの電波を受信できたことから、引き続き衛星の復旧に努めております。
この衛星状態を受け、復旧及び原因調査に万全を期すため、本日、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構内に理事長を長とする対策本部を設置し、第1回会合を開催いたしました。ひとみの通信の復旧及び原因調査について全社的に取り組んでおります。対応状況、調査結果については随時お知らせいたします。
これは非常に心配な事態です。
米戦略軍統合宇宙運用センター(JSpOC)によると、ひとみ(ASTRO-H)のブレークアップは世界時26日午前1時42分頃(日本時間10時42分頃)とのこと https://t.co/kgSPt3rbyB
— isana (@lizard_isana) 2016年3月28日
通信が途絶したX線天文衛星「ひとみ」。28日20時20分、詳細を確認するため500mmで拡大撮影。機体の破壊が心配されますが、8等級までの破片は確認できず。小刻みな変光が見て取れ、姿勢を崩して複雑にスピンしていることが考えられます。 pic.twitter.com/XpOuvD2JHD
— 三島和久・アニリン・レモンパスタ部 (@C6H5NH2) 2016年3月28日
【参考】ASTRO-Hの近地点・遠地点高度の変化(新しいTLEがでていたのでグラフを更新) https://t.co/kLrLQpPAls
— isana (@lizard_isana) 2016年3月28日
地上からの観測報告では、明るくなったり暗くなったりを繰り返している(機体が回転している)のと併せて、1つの物体しか見えなかったとも報告されています。つまり「ひとみ」から発生した5つの物体は、地上から望遠鏡では見えないほど小さなもので、機体の大部分は残っている可能性が高いです。
— Shinya Torishima (@Kosmograd_Info) 2016年3月28日
米軍が「5つの物体が発生しているのを確認した」としているのは、望遠鏡ではなく、レーダーを使って検知したものです。レーダーを使えば、望遠鏡では見えない数cm程度の小さな物体でも、「そういったものが存在すること」は検知できます。ただ、その物体の正確な大きさや形、色などはわかりません。
— Shinya Torishima (@Kosmograd_Info) 2016年3月28日
米軍のレーダー観測によると、何らかの物体が「ひとみ」周辺に5つ発生したとのこと。これらが何であるかは不明ですが、「ひとみ」由来である可能性が高そうです。スペースデブリの衝突による影響も考えられますが、「ひとみ」の推進剤あるいは液体ヘリウムタンクの急激なリークによる可能性も指摘されており、いずれにしろまずは通信だけでも回復することが望まれますね。
あくまで希望的観測ですが、もしこれが推進剤などのリークによるもので、発生した物体が断熱材などの一部の外装であれば、機能を回復できる可能性は少なくないのではと思います。「ひとみ」は先月打ち上げられたばかりでバッテリは新品同様ですし、また液体ヘリウムが蒸発してしまっても5Kまで冷却可能な機械式冷凍機を備えており、その場合でも時間的制約付きですが観測ミッションを継続することは可能です。