『国産ロケットはなぜ堕ちるのか』を読んだ

はやぶさ」関連でも大活躍したブログ「松浦晋也のL/D」の松浦晋也氏による著作を数冊購入してひとまず一冊読了しました。
この本は冒頭の1章でまず純国産ロケットH-II・H-IIAの打ち上げ失敗について語られ、それに続いて失敗の続いたオールインワン型衛星の敗因、トップの官僚主義的人事、技術開発する企業に対し見返りの少ない受注制度、アメリカとの政治的駆け引き―といった流れで日本における宇宙開発の問題点を総合的に論じています。
これを読んで改めて思ったことはやはり取って付けたような宇宙開発予算。 とある日本の技術者が米国の技術者にH-II全体の開発費が2000億であるという話をしたところ米国の技術者はそれが第1段エンジンだけの開発費と誤解し、ようやく理解した米国技術者に「クレイジー」と言わしめたほどという逸話も。 H-Iなど米国ロケット技術を導入したノウハウがあるとはいえ、相場の半額以下という必要最低限すら下回る開発予算でこれほど高性能の純国産ロケットを開発出来たことがむしろ驚きであるということを思い知らされました。
しかしながら技術の信頼性を高めるという点においては、過小な予算で実用化するために燃焼試験などの回数も大幅削減を余儀なくされたり、燃焼試験で浮上した問題点を応急的処置で対応せざるを得なかったりなど決して充分とは言えない環境で行なわれており、これらが打ち上げ失敗の間接的要因となったと言えます。
その点で言うと中国の宇宙開発は既存の技術を叩き台に度重なる失敗を(良いか悪いかは別にして)ものともせず改良に改良を重ね、信頼性の向上に成功した成果が有人ロケットの指定時間打ち上げ成功となって表われています。 さらに中国政府は宇宙開発分野に理工系出身者を固め底上げを図っていると言われています。 これらは、テストすらまともに行なえない日本と明確に異なる点でしょう。
とはいえ日本の国産ロケットがどれほど失敗したと言われても、新型ロケットを打ち上げれば最初の10機中1機や2機が落ちるのはどこの国でもあまり変わらないという事は意外でした。 またそれらは探査衛星という分野においても同様で、例えばNASAの火星探査は度重なる失敗を経て現在ローバーと呼ばれる小型探査ロボット投入に成功し現在も活動を続けています。 要するに、日本の宇宙開発はまさにこれからが正念場であると言えるのでしょう。 ただし、それには体制的・制度的問題が山積みであると、勉強できました。


もう一冊『スペースシャトルの落日』も買ってあるけど、『恐るべき旅路』も読みたいなあ。

 
『国産ロケットはなぜ堕ちるのか』
 著者:松浦晋也
 出版社:日経BP
(2004年2月)