目指せ 『木星型』核融合 [東京新聞]

核融合反応を起こすには、燃料の水素を、一億度を超す高温のプラズマにして閉じ込めることが必要だ。温度の高いプラズマをいかに効率よく閉じ込めるかがポイントだ。

一九七九年に米国のボイジャー探査機が木星を調べて以来、木星の磁気圏には、非常に効率よくプラズマが閉じ込められていることが分かってきた。

いま最も研究の進んでいるトカマク式と呼ばれる装置の場合、磁場エネルギーの十分の一の圧力のプラズマを閉じ込められる。フランスに建設が決まった国際熱核融合実験炉(ITER)もこのタイプだ。ところが、木星では磁場と同じ圧力のプラズマが閉じ込められていた。最先端の核融合実験炉の十倍の効率だ。木星の周囲のプラズマは、木星の自転に引きずられて非常に速い流れをつくっていると考えられている。吉田教授は「高温のプラズマの周囲を、温度の低いプラズマが高速で流れているため、高温のプラズマが外に出られないのでは」と考えた。

ビルの入り口などで、風の壁をつくり、暖房した空気が外に漏れないようにする「エアカーテン」と同じ原理だ。

吉田教授らは、この考えを実証するため、木星の磁気圏をつくりだすプラズマ実験装置「RT−1」をつくり上げた。この装置は、直径約二メートルの真空容器の中に、直径五十センチのリング状の超電導磁石を浮かべ、ミニチュアの木星磁気圏をつくりだす。今年一月には磁気圏にプラズマを閉じ込めることに成功。今後は、プラズマに電圧をかけて秒速千キロの流れをつくり、高い効率で閉じ込められるかどうか確かめる。

「トカマク方式ではプラズマ温度は一億度が限界。木星型の方式なら十倍の十億度まで上げられる。まだ基礎実験だが、将来は重水素だけを使った核融合が実現できるかもしれない」と吉田教授は話す。

なるほどー