『太陽の簒奪者』を読んだ

ロケットガール』の作者つながりで読んでみました。 西暦2005年のある日、水星から何かが噴き出し始める!という奇抜なイントロ。 ロケガのライトノベルなノリとは打って変わって実に硬派で刺激的ですね。 直面する危機を乗り切るのは意外とトントンな描写なのですが、「奴らは何者!?」「何の目的で!?」というところを徐々に解明したと思えば次から次へと舞い起きるどんでん返し、やがてそれらが一直線に繋がる様は見事。 また、最終的にあのような形をもってコミュニケーションが確立したのはなんとも「複雑」であります。 この作品はファーストコンタクトものなのですが、まず来訪者が地球より内側の惑星から現れるというのは斬新に思いました。 そこから先の展開は、ほんの少しでも言ってしまうのは実に勿体無いですね。 ちなみに作品冒頭の水星の太陽面通過は実は去年のイベント。 何だか惜しい気分になった。 あと来訪者のユニークな描写も微笑ましかったですね。
ほんの300ページの作品ですが、水星圏での苦闘を描いた第1章を読み終えてまだ全体の3分の2も残っていた時には「まだ読めるのか」と思ってしまうほどに没頭していました。 野尻さんの文章は複雑な描写でもなぜかスイスイと読み進めてしまいます。 普段文庫1冊読み切るのに数週間単位かかる自分が2日で読み切ってしまった4冊目の本になりました。 さて、次は一緒に買った『沈黙のフライバイ』を読むか。


太陽の簒奪者 (文庫)
野尻 抱介 (著)
出版社: 早川書房 (2005/3/24)