月周回衛星「かぐや(SELENE)」搭載の地形カメラによる南極シャックルトンクレータ内の永久影領域の水氷存在に関する論文のサイエンスへの掲載について [JAXA]

これは凄い。

シャックルトンクレータは、南緯89.9度、東経0.0度の月の南極近くに存在する直径21kmのクレータ。南極点近くに存在するため、ほとんど日光が当たらず、内部には永久影が存在する。永久影は、極低温となるため、水氷の存在の可能性が示唆されています。クレメンタイン衛星(1994年米国 打上げ)によるレーダ実験により水氷の存在が示唆されましたが、その後の詳しい実験では確認されていません。また、ルナープロスペクター衛星(1998年 米国打上げ)に搭載された中性子分光計により、シャックルトンクレータを含む南極域に水素の濃集が示唆されていますが、水素が水氷の形を取っているかどうかはわかっていませんでした。

これに対して、今回サイエンスに掲載された地形カメラの論文においては、次のとおり、水氷がシャックルトンの底部表面で露出した形で多量に存在する可能性がないことを明らかにしました。

地形カメラによって得られたシャックルトンクレータの地形情報から、クレータ内部は90Kより低い極低温状態であることが示しています。このことは、水氷が存在していれば40億年でも数cmも昇華しないはずです。その一方で、地形カメラが映し出したシャックルトンクレータの内部には、水氷と見られる高い反射率の場所は存在しませんでした。このため、クレータ底部の表面付近には、水氷は露出した形で大量に存在する可能性はないことになります。水氷があったとしても非常に少ない量で土と混ざっているか、あるいは土に隠れてしまっています。実際、ルナープロスペクター衛星からの推定では、水氷はあっても数パーセントと考えられており、本観測結果と一致しています。

地形カメラで永久影の内部がここまで見えるとは、感度良いなあ。 もし存在するとしたら、火星のように土の下に埋もれた感じになってる可能性もありますね。 そのへんはガンマ線分光計やNASAのLCROSS、もしくは将来の着陸機による探査で詳しく確認されるのでしょう。 NASAの有人計画にも影響しそうですね。 まあ永久影を持つクレーターは他にも沢山ありますので、これから行われる分析にも期待したいところです。