人工衛星を利用した深海探査機の遠隔制御試験に成功 [JAMSTEC]

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏、以下「JAMSTEC」という。)、は、技術試験衛星VIII型「きく8号」(※1、図1)を用いた深海探査機の遠隔制御システム(図2)を開発、このシステムを用いた実証試験を実施し、潜航中のハイビジョンカメラ搭載小型深海探査機「HDMROV」(※2、写真1)を、陸上の基地局で海中映像をモニターしながら、「きく8号」を介して遠隔制御する試験に成功しました。(写真2)
これまでの静止衛星を利用した同様のシステムは、衛星通信装置の制約から、動揺の小さい大型の専用母船上での利用に限られていましたが、開発したシステムは、携帯電話程度の非常に小さな端末からでも「きく8号」搭載の世界最大級の大きな送受信アンテナにより直接衛星と通信できるという特長を最大限に生かし、衛星遠隔制御型の小型深海探査機を開発するとともに、探査機にも搭載可能な小型の追尾装置及びアンテナを開発したことにより、世界で初めて、漁船などの小型船舶を母船として利用できることを確認しました。

本システムを用いることで、陸上の研究室に居る研究者も乗船研究者と同時に深海調査に参加できるようになり、例えば観測対象について知識のある研究者の意見を聞くことで、調査方法や範囲を臨機応変に変えて調査を進めることが可能となり、調査観測の効率を向上させることが期待されます。

衛星回線の帯域を有効活用するため、生物を発見するまでは、データ容量の小さい解像度の低い映像で「HDMROV」を操作し、生物を発見した場合にはデータ容量の大きい解像度の高い映像に切り替えることで、陸上に居ても母船に乗っているのと同じように観測が行えることができ、非常に有効な研究手段となり得ることが確認されました。また、航行中の「臨海丸」から衛星を常時捕捉することができ、切れ間の無い映像伝送が可能であることが確認されました。

今回の試験では、母船が大きく動揺しても衛星の通信品質を十分確保できるように、画像サイズを640x480ピクセルに縮小して圧縮し、衛星回線の通信速度を64kbpsに制限して実験を行いました。その結果、衛星信号の受信レベルが十分得られていたことから、6倍の通信速度(384kbps)でも通信品質を保つことができると推測されるため、同様の方式でフルハイビジョンサイズの画像(1920x1080ピクセル)を伝送できることが期待できます。

小型船舶では揺れが激しく直接衛星間通信をするのが難しかったものが、衛星「きく8号」により実験に成功したそうです。 今回は解像度を縮小して行なわれましたが、品質的にはフルサイズの画像でもいけそうな模様です。