すばる望遠鏡などの運営経費削減の危機に対するアピール [国立天文台]

えええー、「すばる」関連にまで縮減来てるのか…

最近、我が国の政府は、国の様々な事業に対して、国会議員及び有識者による業務評価、いわゆる「事業仕分け」を実施したところです。その結果、国立大学運営費交付金のうち特別教育研究経費は、予算要求の「縮減」と結論が出されました。国立天文台が実施するすばる望遠鏡の運営費、アルマ計画(国際協力事業:アタカマミリ波サブミリ波干渉計建設計画)の関連経費、及び、天文広域精測望遠鏡(VERA)事業が「縮減」対象となっています。この特別教育研究経費については、行政刷新会議の「事業仕分け」ワーキンググループでは、議論が無かったにもかかわらず、委員の採点結果で「縮減」が決定されるという事態でした。

特別教育研究経費とは、分かりにくい名前ですが、国立天文台など国立大学と同じ種類の研究所の経費のうち、毎年毎年の査定で決定される経費のことです。必要に応じて増額もありますが、減額もある経費です。国立天文台では大型プロジェクトの運用経費がこの枠組みに入っていて、すばる望遠鏡、アルマ計画、VERAなどが対象です。この特別教育研究経費は、単に「縮減」と結論されましたが、3割程度縮減されるかも知れないという噂もあります。実際、予算担当部署からは、1割、2割、3割縮減された場合、どのような事態となるのか詳細状況を求められているところです。最終的な政府予算として、どのようになるか現状では不明ですが、私たちは今後の方向性に極めて憂慮しています。

テレビのような家電製品は、電源を入れたり落としたりして使いますが、すばる望遠鏡など大型精密装置は、常時運転を基本に設計されています。つまり、簡単に運転を休んだりしますと、かえって故障が頻発して、再開ができなくなる場合がある精密装置です。従って、運転には、最低限必要な運転経費があり、経費の減額の幅によっては、観測所の事実上の閉所につながります。

アルマ計画は、欧州南天天文台(ESO:欧州14カ国作られた国際機関)及び米国国立科学財団(NSF)との協定に基づいた建設計画です。日本側の建設分担は、256億円で、約25%の寄与です。この他、運営費(アンテナ等を動かす経費)の25%の両方を分担することで、利用可能観測時間の25%が確保されます。縮減対象となった特別教育研究経費には、このアルマの運営費が対象になっています。この寄与が、約束どおり実現できませんと、我々は国際的な約束を履行できませんし、海外から受けている高い期待に応えられなくなります。

一方、すばる望遠鏡は、海外の研究者からも利用希望の高い望遠鏡であり、それこそ世界の研究者のための望遠鏡となっています。更に、VERAをはじめとする国内VLBI 観測装置は、韓国や中国の電波望遠鏡と連携して、東アジアのネットワークを作っています。このネットワークを続けることは、相手国の研究者に対する大きな責任と考えています。この様に国立天文台の活動は、国際的に大きな責任があります。

「すばる」は国際的にも非常に高い評価を得ているのは周知の事実で、そこから派生する研究にも大きな期待が掛かるわけですが、これらが十把一絡げにざっくり削られるとなるとこれは穏やかではありません。