小惑星探査機「はやぶさ」 ついに地球へ帰還! [JAXA]

特集ページが出来ていました。主要スタッフのインタビューや関連動画あり。

まず川口先生の記事。

やはり、往復の宇宙飛行を実現する技術を獲得したことが最も大きい功績だと思います。「はやぶさ」がめざしていた技術的な目標は、「イオンエンジンによる惑星間飛行」「自律的な航法と誘導」「小惑星のサンプル採取」「イオンエンジンを使用した地球スウィングバイ」「カプセルによる大気圏再突入」です。サンプル採取についてはまだ結果が分からないものの、この5つの技術をすべて獲得できたからこそ、往復の宇宙飛行が実現できたのだと思います。例えば、サンプル採取だけをしたいと思っても、その1つだけを実現するのは無理です。また、これらの技術は、将来のサンプルリターンや往復宇宙飛行、あるいは、もっと遠いほかの天体の資源利用などに欠かす事ができない技術ばかりです。それを獲得して、次の時代に橋渡しができるというのは、ものすごく大きな飛躍だと思います。

はやぶさ2」の探査機本体を大気圏に再突入させないで、できれば、太陽と地球のラグランジュ点に係留したいと考えています。ラグランジュ点とは、太陽と地球との間の引力が均衡しているポイントです。いつか、この場所に「深宇宙港」という太陽系を巡る航路の出発点、すなわち母港を建設したいと思っていますので、それに向けた飛行実証をしたいと思っています。将来的には、この宇宙港を拠点に、「はやぶさ」のような探査機を何度も再利用したいという構想です。これを聞いて、皆さんはなんて無謀なミッションだと思われるかもしれませんが、まさに「はやぶさ」こそが、このようなチャレンジングなミッションだったのです。20年、30年先の人たちが「はやぶさ2」を拾って帰ってきてくれること、そういう時代が来ることを願っています。

片道・ランデブ・タッチダウン・往復・リエントリという複数のブレイクスルーが必須条件でしたから、階段を数段飛ばしで駆け上がっていった感じですね。しかもどれ一つとして欠かせない。


こちらは國中先生の記事。

また、「はやぶさ」のように500kgクラスの探査機が発電できる電力は、およそ1kWと決まっています。その1kWを、3基のエンジンで分散して使えば、その組み合わせ次第で、推力をいろいろと変化できるという利点もあります。例えば、1基だけ駆動させれば330W、2台を駆動させれば660Wという具合です。また、地上で試験をするときも、1kWのイオンエンジンをつくって試験するよりも、330Wのイオンエンジンをテストする方が、装置もそれほど大きくなく簡単です。これらの理由から、イオンエンジンを4基に分けて搭載することにしました。

なるほど、ロケットエンジンクラスタ化と似た考え方ですね。しかも仮に動かせるエンジンが2基・1基と減っていっても「はやぶさ」のように時間で解決することも出来るので信頼性が上がると。もちろん必要に応じて性能を上げる必要はあるでしょうが。

私には「クロス回路」というアテがありましたので、まだ希望はありました。せっかく設けた回路なので、一度は使ってみたいと思っていたのですが、いざという時のためのものなので、なかなか使うチャンスはありません。そのため、イオンエンジンが異常停止したときには、「ついにこの時が来たな」と内心思いましたね。

これ映画のセリフで使えますよね!

実は、昨年の11月頃は、オーストラリア政府との交渉があまり進んでおらず、回収の準備がほとんどできていない状態で、このままだとミッションがうまくいかないかもしれないという不安を抱えていました。今だから言えますが、もしもオーストラリア政府との協議がうまくいかなかった場合、落下したカプセルを自分のトランクに入れて持って帰ってきてしまおうかと思うほど追い込まれていました。そのような窮地に立たされていた時にエンジンが壊れてしまい、もう帰還は絶望だと周りに言われ、とても辛かったです。
しかし、「はやぶさ」のエンジンが復活して帰還に向けて動き始めたら、急に道が開きました。皆がやっと、「はやぶさ」が地球に戻ってくることを本気で信じてくれるようになり、オーストラリア政府との話し合いも、そこからうまく進み始めたのです。周りが「はやぶさ」の帰還に向けて一気に動き出し、「はやぶさ」が世界中の目を覚ましてくれたという感じがしました。

あの時期あのタイミングで交渉を進めるのは確かにかなりきつかったでしょうね… あの復活劇はある意味状況を打開する前振りだったのかもw

先日NASAの「小惑星有人探査ワークショップ」に招待され、「はやぶさ」の報告をしましたが、とても評価が高くびっくりしました。今年の春にアメリカのオバマ大統領が、2025年までに有人小惑星探査をめざすと提案しました。「はやぶさ」は有人ではなくロボット探査ではありましたが、小惑星への着陸と、惑星間の往復を達成しました。そういう意味で、アメリカからの「はやぶさ」への関心は大きいと思います。

小惑星有人探査の分野からも注目を得ているんですね。


渡部先生の記事。

これまでアメリカは全長10km以上の小惑星をいくつか探査してきましたが、どれも表面はクレーターに覆われていました。イトカワは全長500mほどの小さい小惑星ですが、その大きさに関係なく、小惑星の表面はクレーターに覆われていると思われていました。ところが、イトカワの表面にクレーターはほとんど見られず、岩だらけの顔をしていたのです。また、イトカワは密度が小さく、内部がスカスカであることも分かりました。このような成果に世界中の科学者が驚き、日本の評価が一気に高まりましたね。世界的に有名なアメリカの科学雑誌「サイエンス」の特集号に「はやぶさ」の成果が紹介されましたが、日本の探査機の成果が、しかも、まだ探査が終わっていない時期に掲載されたのは、おそらく初めてだと思います。

あの1枚のイトカワの写真は衝撃的でした。その後自分がすっかり宇宙開発にのめり込んでしまうくらいにw ましてや大方の予想を覆す姿をしていましたし、完全に小惑星のイメージを変えてしまいましたよね。

Q. 「はやぶさ」の後継機についてはどう思われますか?

もちろん期待しています。「はやぶさ」はスタートにすぎないと思っていますので、この1号機の能力をさらに向上させた2号機を、ぜひ打ち上げてほしいと思います。小惑星は反射する太陽光のスペクトルによって、いくつかの型に分類されていますが、今回「はやぶさ」が行ったイトカワは岩石質のS型です。現在計画されている「はやぶさ2」では、C型のタイプに行くと聞いています。C型も同じく岩石質ですが、炭素などの有機物をより多く含む小惑星です。ですから、生命の起源につながる発見ができるかもしれません。この2号機をぜひ実現させ、その次の3号機ではぜひD型の小惑星に行ってほしいですね。D型は、氷などの揮発性物質を含むと考えられている小惑星です。
地球に落ちてくる隕石の多くは、小惑星帯から来ていると言われています。そのため、隕石の反射スペクトルの分析データから、小惑星の型にそれぞれ似たデータを持つ隕石をあてはめ、小惑星の成分などを推定しています。例えば、イトカワのようなS型の小惑星は、「普通コンドライト」と呼ばれる隕石と対応しています。しかし、D型小惑星に対応する隕石はほとんど落ちてきていないため、その成分はまだよく分かっていないのです。またD型は、私が研究している彗星と近い成分を持つと考えられていますので、とても関心があります。彗星は主成分が氷で、太陽系が誕生した頃の情報をもつといわれる始原天体です。

D型ヤバイですね。更に未知の天体ですよ。


最後は吉川先生の記事。こちらに「はやぶさ2」の動画もあります。インパクタでドーン!

Q. なぜ小惑星1999JU3が選ばれたのでしょうか?

1999JU3は、C型の小惑星だからです。小惑星はスペクトルの特徴によっていくつかの型に分類されると言いましたが、最も多いのがC型とS型です。C型は炭素系の物質を主成分とするもので、小惑星全体の約75%を占めるといわれています。一方、S型はケイ素を主成分としていて、全体の2割くらいを占めるといわれ、「はやぶさ」が行ったイトカワはこのS型です。この2つの型をきちんと押さえておかないと、小惑星全体のことを理解できないのです。
また、S型の小惑星は火星と木星の間の小惑星帯の内側に多く、地球に近づくものもいくつかあるのに対して、C型は小惑星帯の外側にあり、地球に接近するような軌道を持つ小惑星はあまりありません。ところが、1999JU3は、例外的に地球の軌道に接近するのです。その軌道は、「はやぶさ2」のような小さな探査機でも往復できるものですので、この小惑星が選ばれました。

もともと地球近傍の軌道を取るC型小惑星が希少なんですね。なのでタイミングがとてもシビアになる。

Q. 「はやぶさ」には見られない、「はやぶさ2」の新しいチャレンジは何でしょうか?

小惑星の表面に、人工的なクレーターをつくることです。「はやぶさ2」の本体に、小型の衝突装置を搭載して、それを、小惑星表面から数百mほど離れた上空で切り離し、ゆっくりと降下させます。その間に、探査機本体は衝突装置からは見えない小惑星の陰へ移動します。衝突装置の中には爆薬が入っていて、小惑星に衝突した時に爆発しますので、本体はその爆発の際に飛び散る破片から逃れるのです。衝突装置の爆発により、小惑星表面には直径数m、深さ50cm〜1m程度の人工的なクレーターができます。クレーターを作れば、地下の物質が表面に出てきますので、地表面だけでなく、地下の物質も調べられるというわけです。小惑星の地下は宇宙放射線の影響が少なくなるので、過去の状態をそのまま保っている可能性も高いのです。タッチダウンは、表面と地下物質について2回は行い、その両方のサンプルを採取したいと思っています。ただし、地下物質については、どのような人工クレーターができるのかやってみないと分からないという側面もあるので、可能ならば採取を行うという立場です。無理はしないことにしています。

人工クレーターは挑戦的。どんなクレーターが出来るか、これは表面の状態などにもよりますしやってみないと分からない所がありますが、とても面白い計画ですね。

はやぶさ」では本当にいろいろな経験をしましたが、特に、運用が大変でした。「はやぶさ」のイオンエンジンの運用は、毎日のように通信をして、「はやぶさ」の位置や速度を確認しながら、翌日、翌週の運用を決めていくという方法だったため、イオンエンジンを噴いている期間は全く休む時間がなかったと言ってもいいくらいです。常に軌道制御をしているような状態でしたね。ですから「はやぶさ2」では、イオンエンジンが改良されて自動運転になれば、常に人が介入しなくてもよくなります。運用者の負担をなるべく少なくなるよう工夫したいと思います。

なかなかピーキーだったそうですね。イオンエンジンの運用は本当に隅々までやり尽くしましたが、これを自律化出来れば随分楽になりますね。

そもそも「はやぶさ」は、2003年の打ち上げ当時は、一般の方にはほとんど知られていませんでした。2005年にイトカワに着陸した頃はそれなりに話題になりましたが、知名度はそれほど高くなく、一部のファンの方が気にしてくださった程度です。やはり、「はやぶさ」がこれほど多くの国民の方に注目されるようになったのは、地球に帰還してからです。正直に言って、帰還前には、これほど注目してもらえるとは思っていませんでしたが、皆さんに応援していただけるのは大変うれしいです。
なぜ「はやぶさ」の人気が出たかというと、やはり、チャレンジングな冒険的なミッションだったからだと思います。惑星に行って着陸してまた地球に戻ってくるという、世界で初めての新しいことに挑戦したことが、「はやぶさ」を魅力的にしているのだと思います。

すみません自分も2005年のタッチダウン祭で初めて知りましたw あの時とあるニュースサイトで取り上げられてるのを偶然見付けていなかったら… うーん、幸運でしたね。お陰様であの熱狂を最後までライブで見届けることが出来て本当によかったです。もちろん「はやぶさ2」「Mk2」の誕生も是非この目で。