地球磁気圏の影響で満月が帯電 [ナショナルジオグラフィック]

月の帯電現象を明らかにしたのは、日本の宇宙航空研究開発機構JAXA)が打ち上げた月周回衛星「かぐや(SELENE)」である。2007年に打ち上げられた「かぐや」は、月面上空わずか100キロを20カ月にわたり周回し、月の表面を初めて高解像度映像に収めた。使命を終えた「かぐや」は2009年6月、予定通り月面に向かって制御落下していった。

「かぐや」の撮影装置や観測装置から送られたデータは、現在も解析が続けられている。月磁場・プラズマ観測装置(MAP)のデータには、満月時に比較的高エネルギーの電子が月の表面に吸収されていることが記録されていた。

 解析チームは、月面上数メートル以内の領域で1カ月に1度、静電気が蓄積し、一時的な電場を形成していると結論づけた。「月の帯電現象は、地球磁気圏のプラズマシートと呼ぶ領域を通過する際に発生している」とチームはレポートしている。プラズマシートは、地球の磁気圏尾部の中間(赤道面)付近に形成される領域で、厚さは数千から数万キロといわれている。

 月は全球を覆う自分自身の磁場を持っていないため、プラズマシートを通過するとき、内部に閉じ込められ動き回っている太陽粒子に表面がさらされた状態となる。

 研究チームのリーダーで、京都大学大学院の修士課程に在籍する原田裕己氏は次のように話す。「月面周囲に比較的強力な電場ができるのは、月が地球の磁気圏内部に位置するときである。ただし、この電場の発生原因について結論は出ていない。地球の磁気圏尾部のプラズマや磁場の性質が関係しているはずで、月と周囲のプラズマの相互作用もあるだろう」。

 強力に帯電した月の表面は、将来の無人・有人探査にとって危険ではないだろうか?

 原田氏は、「深刻なダメージを負う可能性がある」と認めた。静電気は月面に存在する微細な“ちり”を大量に飛ばす可能性があるため、デリケートなレンズや電子機器が損傷する恐れがある。また、静電気が蓄積すると、予想外の放電につながることもあり得る。

ブルーツ波かと思ったら違った。有人活動においてもリスクを高める可能性があるそうです。ちなみにアポロ計画で月面に降り立ったのはいずれも満月ではないタイミングだったようです。