米国版「はやぶさ」16年打ち上げ 小惑星から試料採取 [朝日]

 米航空宇宙局(NASA)は25日、小惑星に接近して試料を持ち帰る探査機「オシリス・レックス」を2016年に打ち上げると発表した。日本の小惑星探査機「はやぶさ」の米国版にあたる。
 発表によると、探査機は20年に「1999RQ36」と呼ばれる小惑星に到着して試料を採取。小惑星の表面に金属球をぶつけて微粒子を舞い上がらせて採取する設計だった「はやぶさ」と異なり、ロボットアームを伸ばして50グラム以上を採取する予定だ。試料はカプセルに入れ、23年に米ユタ州の砂漠に投下させる。

ついにOSIRIS-RExプロジェクトが表に出てきました。金星探査機SAGE、月探査機MoonRiseを押さえての承認となるようです。

米、小惑星探査機を2016年打上げへ [ナショナルジオグラフィック]

 太陽系の理解を促進する無人探査ミッションの開発を目的とした「ニューフロンティア・プログラム」で、今回3つの候補プロジェクトの中からオシリス・レックスが選出された。

 落選した2つのミッションは、月の裏側からのサンプルリターンと金星表面への到達だった。どちらもニューフロンティア・プログラムの次の計画で再浮上する可能性がある。

 NASA科学ミッション部門の主任研究員ポール・ヘルツ氏は記者会見で、オシリス・レックスのミッションにほぼ10億ドル(約820億円)を投じることを最終的に決定したのは、運用とコストの面で科学的目標が最も実現可能だと思われたからだと語った。

 またNASAのチャールズ・ボールデン長官はオシリス・レックスを、バラク・オバマ大統領が提唱する、深宇宙に人間を送り込む計画の重要な一歩だと説明した。

 ボールデン長官はプレスリリースで、「小惑星や他の深宇宙を目指す将来の有人ミッションに道を開くロボット探査だ」と述べている。

 オシリス・レックスは、「1999 RQ36」という小惑星を目指して打ち上げられる。RQ36は幅が575メートルある岩の塊で、太陽から1億3300万〜2億300万キロの軌道を周回しており、地球の軌道から約45万キロ以内を通過する。
 地上や衛星からの過去の調査から、種類まではわかっていないが、RQ36は有機分子がかなり豊富だと考えられている。RQ36のような小惑星が生命の構成要素を地球にもたらしたのかもしれない。RQ36に接近して原初のサンプルを地球に持ち帰り、この問題に答えを出したいと調査チームは考えている。

 RQ36には2019年に到達し、光学カメラ、近赤外マッピング装置、熱放射分光計、スキャニングLIDARなどの機器を使って約1年をかけて調査が行われる予定だ。
 データの蓄積によってRQ36の正確な形と鉱物の組成に関する新しい情報が得られるほか、ヤルコフスキー効果と呼ばれる現象の理解が進むと考えられている。ヤルコフスキー効果は、小天体が太陽光から吸収した熱がその表面から放射されることによって、小天体がわずかに動くというものだ。

 RQ36に到着すると「サンプル収集などの活動が、映画レベルの画像品質の動画として、基本的にリアルタイムに近いかたちで」オシリス・レックスから送信されるとドレイク氏は説明する。「これをストリーミングで公開すれば、一般の人たちにも活動の様子を感じとってもらえる」。

NASA to Launch New Science Mission to Asteroid in 2016 [NASA]

The spacecraft gradually will move closer to the site, and the arm will extend to collect more than two ounces of material for return to Earth in 2023. The mission, excluding the launch vehicle, is expected to cost approximately $800 million.
The sample will be stored in a capsule that will land at Utah's Test and Training Range in 2023. The capsule's design will be similar to that used by NASA's Stardust spacecraft, which returned the world's first comet particles from comet Wild 2 in 2006. The OSIRIS-REx sample capsule will be taken to NASA's Johnson Space Center in Houston. The material will be removed and delivered to a dedicated research facility following stringent planetary protection protocol. Precise analysis will be performed that cannot be duplicated by spacecraft-based instruments.



1999RQ36は「はやぶさ2」が目指す炭素系のC型小惑星に近いもので、こちらも有機系のサンプルが期待されるそうです。サンプル採取機構はアーム式のようですが、何年も深宇宙を航行し、かつ小惑星タッチダウンの負荷に耐えるものというのはどんな感じなんでしょう。かなり気になります。60g以上の採取を見込んでいるようですが、それには小惑星表面の条件にもよりますし…そのへんはイトカワやテンペル第1彗星などを見てある程度確信を持っているのでしょうかね。というか先端のあのカゴみたいな部分がどうなってるのかかなり気になります。回収カプセルは彗星探査機スターダストを踏襲したものだそうです。あとは画像データを連続的に送ってストリーミング的なものにしようというのも面白いです。
しかし打ち上げ費用除いて8億ドル(ロケット込み10億ドル)というのは凄いですね。この円高でも650億円、というと「はやぶさ」の5倍、「はやぶさ2」の4倍以上に相当します。もちろん地上のバックアップ態勢とかが充実してるのもあるでしょうが、多分見た限りでは主推進系はイオンエンジンではなく化学推進でしょうし、サンプル採取機構以外はかなり保守的な設計になってるのではないでしょうか。
元々は「OSIRIS」として「The Origins Spectral Interpretation, Resource Identification and Security (OSIRIS) mission would survey an asteroid and provide the first return of asteroid surface material samples to Earth.」(世界初の小惑星サンプルリターン)という触れ込みでディスカバリープログラムに提案されたもののリスクが高いなどの理由で見送られてきました。そうこうしてる間に「はやぶさ」が帰還、サンプル採取も確認されましたが、OSIRIS-RExとして新たにスペースガードなどの目的を盛り込んで復活を遂げました。これには「はやぶさ」が実現可能性を実証したことと、コンステレーション計画中止後の現在のアメリカにおける将来宇宙構想として小惑星・火星をターゲットにしていることなどがあると思います。
いずれにしても強力なライバルが出てきたことになりますね。ニュースなどでは「NASAはやぶさ」などと言われていますが、海外のニュース記事でも「はやぶさ」を引き合いに出しているのが目立ちますし、つまり小惑星探査においてはJAXAはそういう立場になっているということですよね。…うーん、感慨深い。


ちょっと比較表を作ってみた。

探査機 はやぶさ2 OSIRIS-REx
主推進 イオンエンジン 化学推進?
打ち上げ時質量 600kg 1500kg
打ち上げロケット H-IIA アトラス5
打ち上げ時期 2014年 2016年
小惑星到着 2018年 2020年
地球帰還 2020年 2023年
目標天体 1999 JU3 1999 RQ36
観測ミッション レーダーによる地下構造観測/元素組成/鉱物/地形マッピングなど 鉱物/ヤルコフスキー効果測定/地形マッピングなど
サンプル採取 弾丸発射/衝突装置によるクレーター形成など(100mg以上) TAGSAM(60g以上)
小型ランダ Minerva2/MASCOT(ESA調整中) -


間違ってる部分などがあればまた修正します。