編集長コラム「デイビーのひと言」番外編:確実に泣けます! 映画「はやぶさ/HAYABUSA」鑑賞リポート [ロボタイムズ]

また、主要人物を演じた役者さんたちだけでなく、端役の人たちも立派にJAXAのスタッフを務めていたのもよかった。本当に〈はやぶさ〉の運用をしていたのではと疑ってしまうほど、どの人たちもリアルに演じていて、特に管制室でのシーンが印象に残っています。役名は特にないようですが、毎回コマンド送信を担当する管制スタッフの方は時刻や指定のコマンドを送信したことなどを口頭で伝えながら実行するわけですが、ドキュメンタリーにしか見えないほどです。JAXAのスタッフが監修したそうですが、こうまでリアルな空気が出るのも、端役にいたるまでのその場全員の気合いの入り方が違うからだと見て取れました。スタッフ役の人たちは全員が本当に自分たちは今この瞬間はJAXAのスタッフであり、〈はやぶさ〉を飛ばしているんだという信念のもとに、入魂の演技をしていたのが感じられ、素晴らしかったです。

それから、文部科学省の官僚で矢吹豊という人物を筧利夫さんが演じているのですが、こうした予算の部分にも踏み込んでいるところもよかった。〈はやぶさ〉が帰還時に一時的に音信不通になった時、「ロストした後に再発見された探査機はそれまで1機もない」ということで、どうやら文部科学省はこれ以上はもう予算をつけたくなかったようなのです。そこを、西田さん演じる的場室長が胃の痛くなる状況で〈はやぶさ〉が姿勢を安定させられる設計なので時間をかければ復旧するとなんとかのらりくらり的な感じで折衝し、さらに佐野さん演じる川渕プロジェクトマネージャーもウソも方便的に具体的な再コンタクトのための方策や再発見の確率のパーセンテージなどを提示して、文部科学省を納得させていったりするわけです。ドロドロというほどではないにしても、お金の部分にまで踏み込んで、どれだけ「税金を使って」探査機を飛ばすことにプレッシャーがかかるかというのがよくわかるのです。本当に〈はやぶさ〉が帰って来られて、しかも「日本の技術、ここにあり!」と世界にアピールできたり、日本中が明るくなったりと大きなプラスまでつけいてきたからよかったのですが、「失敗していたらほんと……」とシミジミしてしまいました。

このレポは熱い! なんと火星探査機「のぞみ」まで出てくるそうですよ。試写会の反応も好評ですし、ほぼノンフィクションでここまで徹底すればおそらく熱心なファンの鑑賞にも耐えうる出来が期待できそうです。詰め込んだ事でメリハリに欠けるという内容のレビューもありますが、そこでも述べられているとおり今回3作品が控えています。差別化を図るために様々な切り口で描写されるはずですので、よりどりみどりと言っていいでしょう。なんとも贅沢な話ですw