映画『はやぶさ 遙かなる帰還』を観てきた

ということで早速観てまいりました。日曜のレイトショーという事もあってベストポジション余裕で確保。ややバレですがぶっちゃけこの題材でバレも何も無いと思うのでまあ大丈夫な気がしますw



前回のFOX版ではコマンドやら機材やらを完全再現、ノリは若干コミカルでおそらく3つの中では最も素直に作った作品だったと思います。その分映画としての起伏が物足りなかったという声も聞かれましたが、今回の東映版は承知の通り重厚な雰囲気かつドラマ性を持たせた「映画」として仕上がっていたと思います。もちろん再現性もかなりのものです。そして筋肉隆々なプロマネが主人公。


まず導入部分、最初「ん?」と思いますが、すぐにアレだと気付く人はマニアでしょうw 直後に整備塔からどっしりとした存在感を放つM-Vロケットが姿を現し、ランチャーが唸りを上げてセットされる。そして爆音と共に離床。正直この部分の描写がまず凄くて鳥肌。インタビューではスクリーン映えを考えて最初からだいぶ斜めに飛ばしていると言う話でどうなるのかと思ってみてましたが杞憂でした。次の鳥肌は再捕捉のシーン。何度も周波数を変え、ノイズの海に埋もれた「はやぶさ」の声を拾い上げる瞬間。クロス運転がついに成功した瞬間、そして帰還。ぶっちゃけ打ち上げからイトカワ到着、再捕捉からクロス運転などの間の運用はほとんど描写されないのですが、そのかわり要所ごとでじっくり盛り上げるという感じでした。専門用語などは全く説明しない代わりに(まあそれでも自分は大体分かるんですがw)ストーリーの部分で流れを語っている感じですね。


最も白熱するのがクロス運転(ニコイチ)を巡るやりとり。FOX版では「こんなこともあろうかと(原文ママ)」の一発で決定しましたが(そしてこれはこれで面白いんですが)、NEC森内が強硬に反対します。これは実際にあった議論で、モデルになった堀内さんがニコイチ運用を渋ったのにもAイオン源空焚きによる高温発生で絶縁体破損の危険、中和器電圧がモニタできない、ロックアップ(停電)の危険など機体に対するリスクがあったから。もちろん怒鳴り合ったわけではないそうですがw、重要なキーポイントですね。板挟み感がとてもよく出てました。
サブキャラとして朝日新聞女性記者が登場しますが、よく考えたらウーメラで「はやぶさ」の帰還を眺める役として非常に重要ですよね。現地の作業員は色々モニタしないといけませんから(それはほら、アレだw) 町工場のお父さんもいい雰囲気出てました。試作品がホイホイ出てくるところとかニヤニヤしちゃいましたしね。序盤で「本当に帰ってこられるかなあ」と不安げだったカプセル担当者が後半ウーメラでめっちゃwktkしながら「ここまで来ちゃったよ!」とか言ってるのも。あと雪を被ったうすださんが素敵でした。


CGは全体的に良く出来てたと思います。コントラストの強い宇宙空間の描写はなかなか雰囲気ありました。打ち上げシーンはロケットに関しては全てCG合成だそうですが、あれは文句なしの迫力でした。第1回タッチダウンのバウンドはもっとスローにした方が実際の超微少重力を演出できたと思いますが、「はやぶさ」機体内部に潜り込んだ描写はナイス。あとリアクションホイールにバッチリ書かれた「MADE IN U.S.A.」は噴きましたw
渡辺謙演じる山口PMはなかなか無茶振りキャラになってましたねー。モデルの川口先生も、帰還前後こそ情感あふれた話をされてましたが実際仕事する上では「物理的に無理」以外の反対意見は認めないという話すらある超シビアな方。だからこそラストショットを見て「はやぶさの涙でにじんでいる」と口にしたのを見たメンバーが「先生が壊れた」と慌てふためくのも無理からぬ話でありましたが、作中のラストショットの出し方もとても良かったですねえ。最後の最後にあれ。そりゃね、目頭も加熱するというものですよ。


ただビーコンが出てこなかったのはやはり残念でした。やはりあれはカプセルの産声ともいえる感動的な場面でしたから。あと、専門用語の説明は省くのはよしとして軌道位置などはサクッとでも描写した方が良かったんじゃないかなと。ほぼ日時でしか語られませんし、あとタッチダウン前の詳細観測も触れられてませんでしたしね(サンプル採取だけしに行ったように見える)。リアクションホイールの故障時期も時系列が実際とは違いますし(実際はイトカワ到着前に1基壊れた)、あまりよく知らない方はドラマとして割り切って観るのがいいのではないでしょうか。


そんなこんなですが、今作もなかなか見応えあったのでまたもう1回観に行こうかと思ってます。