あの宇宙作戦はどこまでリアルなのか? ヱヴァ:Q冒頭作戦を佐原准教授に聞く [アスキー]

――今回、映画の宇宙考証に関わられた経緯とは?

佐原:相談を受けたんですね。試作段階のフィルムを見まして、まずはきれいさにびっくりしましたね。「動きがちょっと違うな」という感じは受けたんですけれど、そう思ったのはだいぶ後になってからで、そのまま出しても、たぶん誰も気づかないんじゃないか、と思うような完成度の高いものだったんです。それを見て、開発現場で「これはこうじゃないかな」、「このぐらいじゃないかな」とざっくり計算したりして。雑談しているような感じでざっくり絵をかいて「これはこうだね」とか「成り立つね」と。

 見事にそれを反映していただきまして、まったくそのまま忠実に、かつものすごくいい、しかも本当に重量感のあるものが動いている感じで、映画を観てびっくりしました。あの表現力はすごい。本当に圧倒されます。

宇宙考証って実際にどれくらい関わるものなのかと思ってましたが、依頼を受けた時点でかなりのクオリティのものが上がっていたそうです。大筋の添削という感じでしょうか? 公開後にご本人が検証記事を上げられてましたが、実際に映像を制作するのは現場の人ですからやはりあれだけのものを描ききったのはやはり見事という結論ですね。


あと後半にはご自身のお仕事についても。

――宇宙科学研究所では、衛星の開発はメーカーに出すのだけれども、発注する内容を自分でつくれないといけない、という話をうかがったことがあります。

佐原:確かにそうです。業者さんに、自分の思ったものをつくっていただくためには、ものづくりの立場に立った図面の描き方なり指示の出し方をしないといけないと思うんですね。単に3行くらいの指示で「こんなものをつくってください」というだけでは、思ったものと違うものが来るかもしれないし、何か問題が起こったときに対応できなくて、誰も解決策を知らないような状況になる。自分に足りないのは加工技術の経験だけで、それ以外の部分はやはり技術者として責任をもってやりたいなと思っていますね。

研究者とエンジニアという役割分担の違いはありますが、技術的に精通しているという点で共通しているんですね。ブラックボックスなら仕方ありませんが、丸投げでは決して成り立ちませんよね。