未来を切り拓く次世代ロケット「イプシロン」 目指すのは打ち上げシステムの革新 [TELESCOPE Magazine]

ちょっと前の記事ですが、森田先生のインタビュー。これからというところでM-V廃止になったのにもめげず、ついにここまでこぎ着けて見せた自信が漲ってますね。実際に直接お話を伺っていても凄くポジティブで落ち着いた語り口ですし、見ていて安心感があります。

M-Vの1段目は、金属製のモーターケースを使っていましたが、工程が複雑で高コストになっていました。ざっと20億円以上かかっていたのに、SRB-Aなら半分以下になる。これを使わない手はないでしょう。上段については様々な案がありましたが、M-Vの3段目とキックモーター(オプションの4段目として搭載できる小型の固体ロケット)を使うというアイデアは当 時からありました。そういう意味では、イプシロンというのは我々が宇宙研時代に考えていた"M-V後継機"に良く似た機体なんです。

いわゆるM-V Liteですね。ところでこの話から計算するとSRB-Aは1本約10億円がそれ以下という計算でしょうか。

イプシロンは未来のロケットに向けて、今なにが必要かをきっちり考えて、ロケットの性能だけではなく、ロケットの運用の簡素化にも注力しています。J-Iにはそういう観点はなくて、未来のロケットに向けて準備するどころか、逆に足を引っ張るような存在になってしまった。未来に対する展望やコンセプトが全く無かったというのが、J-Iの失敗の最大の原因と言えるでしょう。

あの頃はH-IIのSRBやらH-IIAのSRB-Aやらと変わったり、結構強引に組み合わせたようで結局後が続かなかったという流れだったようですが、イプシロンではH-IIAへのフィードバックを含めてより進化させるコンセプトが示されていますし、あわよくばSRB-Aの製造ライセンス部分を国産化しさらにコストダウンできればと期待しちゃいますね−。

──PBSの使い方を教えてください。

基本的には、3段目の燃焼が終わってから、4段目として最終軌道に正確に合わせるのが役目ですが、それだけだと、3段目の燃焼終了時に、誤差が大きくなっている可能性があります。すると4段目で修正するのが大変になってくるので、3段目の燃焼中からPBSを使ってロケットの姿勢を制御して、誤差を小さくする方法が考えられています。

3段目の姿勢制御としても機能するようになってるんですね。PBSのスラスタは元はH-IIAの2段目姿勢制御用ガスジェットですから応用しやすいんでしょうか。

──いずれ惑星探査も可能になるのでしょうか?

イプシロンの開発は2段階の構想になっています。まず第1段階として初号機を開発し、その後も改良を続け、2017年度には第2段階である低コスト版のイプシロンを実現する予定です。

低コスト化というのは、小型化・軽量化を含んでおり、低コスト化と同時に、打ち上げ能力も向上します。そこに小さなキックモーターを追加すれば、「はやぶさ」ほどの重量になるかどうかは別にしても、十分惑星探査ができるようなロケットになると考えています。低コスト版の機能は一部を前倒しで2号機に搭載して、実証しようとしています。2号機は初号機よりも打ち上げ能力がかなり増えるはずなので、その段階でも惑星探査は十分視野に入ってくると思います。

今のSRB-Aの推進剤の量は66トンですが、より高密度に充填することで70トンくらいまで増やすことができます。このくらいのことまでは当然やりますが、さらに進めるとなると、モーターケースを大きくする必要が出てきます。1段目の「3割増し計画」とでも言いますか、推進剤を3割増やして推力も3割大きくすると、M-Vの能力を超えます。こうなると、H-IIAに頼ることなく、イプシロンで金星探査機「あかつき」クラスの探査機を上げられるようになります。

希望としては、この大型化も低コスト版イプシロンで同時に実現したいと思っています。

うーむ、これはwktkが止まりませんねえ。1段目のSRB-Aはベストの性能よりコスパを取った選択ですが、逆に言えばさらなる性能アップの余地を残しているということですし、研ぎ澄まされよりシャープでスマートになったロケットが姿を現す瞬間を見るのが楽しみです。