宇宙管制室“指揮官”の、「超・交渉術」 [東洋経済]

東覚が戦う相手は、主にNASAのフライトディレクターだ。ISSではNASAが全体の取りまとめを担当。宇宙飛行士の作業時間、通信、電力を米国、日本、欧州、カナダでどう配分するかの最終決定権をNASAが握る。特に宇宙飛行士の作業時間は「激戦区」だ。

セオリーはない。だが、交渉のときに「ここまでは絶対に死守する」というラインは決めておく。そのうえで「なぜ今、宇宙飛行士がその作業を行う必要があるか」という根拠を論理的に伝える。緊急性や優先順位、実験ならばサイエンスの価値。宇宙実験の場合、30分後にその作業をしてもらわないと、意味がなくなるという切羽詰まった状況も起こるので、簡潔にわかりやすく伝えなければならない。

「相手だって、スケジュールなどさまざまな制約を抱えている。反対する根拠があれば、収めるところは収めてあげる。バランスが大事です」(東覚)。押したり引いたり違う角度から攻めたり。そのバランス感覚は経験でつかんでいくところが多い。東覚も最初はNASAに怒られてばかりで、要求しても“蹴られる”ことが圧倒的に多かった。だが負けられない理由があった。

15カ国が参加している超大型プロジェクトですし、主導権を握るのは大変そうですよねえ。特にNASAなんて大先輩ですし。そう考えると輸送能力を持っているというのはやはり大きいのではないでしょうか。その分責任重大ですが…震災時の対応も緊迫した様子がひしひしと伝わります。