平成21年宇宙開発委員会(第29回) 議事録 [宇宙開発委員会]

HTV運用中の報告のようです。

JAXA(白木)】 今回、技術実証機という一発目であるということと、ランデブーで10m近くに飛んでいること。そのときにステーションと同じ位置を、相対速度が変わらないように保持しておりますので、HTVそのものの姿勢と軌道を維持するという、そういう制御の技術ですね。そこのあたりが今回、特記すべきことだろうと思っております。

【松尾委員長】 その制御の技術をもうちょっと言うと、センサなんですか、ロジックなんですか。

JAXA(白木)】 センサもありますし、ロジックというか、アルゴリズムもございますし、特にソフトウエアですね。センサも、最初遠くにいるときにはGPS衛星のデータを使ってGPS航法をやっております。30キロ近傍になりますと、相対GPS航法をやるということで、「きぼう」の中にGPSの装置を積んでおりまして、「きぼう」の方から「きぼう」の位置と速度情報を送ってきます。それと、HTVも自分で位置と速度情報をGPSからとってきて、両方のデータを比較しながら相対的な位置をコントロールして接近していくという、そこのところが非常に大きなポイントだろうと思っております。
300mぐらいの近傍になりますと、今度はレーザレーダで接近していきますので、そこも先ほどビデオで見ていただいてわかりますように、HTVがほとんど揺るがず姿勢を保持しておりまして、そこが特筆すべきところかなと思っております。

【青江委員】 その辺は外国、特にアメリカとの間の技術水準とでもいいましょうか、例えば揺らがずに制御する、あれだけのものが少しも揺らがないとでもいいましょうか、それはもうアメリカをしのいでいるのですか。

JAXA(白木)】 GPS航法を使って、軌道上でランデブー、ドッキングする衛星を、ETS−VIIで、過去、日本でもやっております。その後、アメリカなんかでもそういう衛星をやっていますが失敗している例がございまして、そこで何で失敗して今回はうまくいったかというと、特にGPS航法のところが、やはり一つのキーになっております。我々も今非常に順調と申し上げましたが、GPSのデータが、若干想定外のものが出ました。それはどういうことかというと、5個、6個のGPSの衛星のデータを拾って、それで自分の位置とか速度を計算するわけですが、GPS航法の場合、GPSのデータを自分の中で計算して将来の軌道を予測するような、カルマンフィルタと言っておりますが、そういった航法をとっております。それが若干、発散ぎみなことが起こりまして、どうしてだろうということで調査したところ、カルマンフィルタの特性によるということがわかりました。それをリセットすることで、初期値の誤差ゼロの状態に戻るということもわかりましたので、そういう処置をやりながら今回はうまくいきました。
アメリカのその衛星の例は、やっぱり同じようなことが起きて、結果的には燃料を使い果たしたというようなことも聞いておりまして、そういう意味では非常にうまくいっており、日本の技術としての高さを示せたのかなと思っております。

【青江委員】 あれだけの精度を保持し得る能力を持っているのは、今のところは日本とアメリカだけですか。

JAXA(白木)】 そうだろうと思います。ESAのATVも同じような航法を遠距離ではやっておりますけれども、最終接近がATVのドッキングという自分でぶつかっていくような方法です。それに対して日本の場合は、先ほどの最終接近ではレーザレーダでISSとの距離を保ちながら飛んでいくというところが大きな違いですね。

NASAのドッキング実験でトラブったのと今回HTVで起きたことはGPS航法特有の似たような事象だったそうです。今回上手く対処できたのは以前からノウハウを積み重ねてきたアドバンテージでしょうかね。

JAXA(虎野)】 実は、下向きに噴かなきゃいけないスラスタは4系と9系という二つの系ですが、今回、温度が規定値に近くなってきたのは9系の方、ナンバー9の方のスラスタでありまして、もう一つの4系の方は、ほぼ予定どおりの温度上昇だったんです。なので、今理事が言いましたように、予定よりたくさん噴いたので、当初計画よりは確かに温度は上がっているんですが、9系の方だけが非常にクリティカルな値に近くなってきた。4系の方はそれほどでもなかったという状況はありますので、スラスターの噴くパルスの関係もありましょうが、それ以外に熱艤装の関係で、もしかしたら熱がこもるような艤装をしていたのかもしれないということもあります。その辺はちょっと詳細に検討させていただきたいと思っています。

最終接近時にスラスタが加熱した件。片方の系統では同じ運用でも問題が起きなかったということで、設計変更が必要かもという話はこの辺のようですね。いずれにしてもこのトラブルのきっかけとなった検証試験は次回から無くなるので今回のようなことは起きないだろうという話。