降雨観測ミッション、17年目の後継機打ち上げ 全地球的な降雨状況を高頻度で把握 [日経ビジネス]

1か月前の記事ですが、打ち上げ直前の多忙で見逃していたので。

 しかし、実際の衛星開発と打ち上げ・運用には、どこの国でもなかなか予算がつかなかった。地球全体の降雨を観測することの重要性が、なかなか広く理解されなかったからである。1980年代、フランスの「BEST」などいくつかの構想が立ち上がったものの、そのほとんどが潰れ、日米が協力して進める「熱帯降雨観測ミッション(TRMM:Tropical Rainfall Mesurement Mission)」だけが生き残った。
 TRMMはその名の通り、世界で最も降水量の多い熱帯地域の降雨のみを重点的に観測するのが当初計画だった(軌道傾斜角16度の軌道に衛星を打ち上げる)。が、日本が計画に参加したことで状況が変わった。日本側の研究者が、毎年6〜7月に日本にやってくる梅雨前線の観測を主張したのである。結局TRMMは、軌道傾斜角35度の、ぎりぎり梅雨前線の観測が可能な軌道に打ち上げることになった。

 米国では1991年度から、日本では1992年度から計画に予算が付いた。しかし、それは必要最低限のレベルだった。2つの周波数を使うことでより精密な観測が行えることは1980年代末の段階で分かっており、基礎技術も完成していた。しかし予算の制約のため、TRMMは13.8ギガヘルツの電波のみを使う降雨レーダー「PR(Precipitation Radar)」を搭載することになった。降雨レーダーの開発と製造、及び打ち上げを日本が、衛星本体とその他のセンサーの開発・製造及び衛星運用を米国が担うという分担で、TRMMの計画は進んだ。

 21世紀に入ると、より広範な国際協力による全地球的な降雨観測体制を目指す動きが始まった。だが、それでもまだ予算状況は好転しなかった。2004年7月には、NASAが予算不足を理由にまだ健全に動作していたTRMMの運用打ち切りを提案、JAXAも同意する事態となった。この時は世界中の気象関係者・研究者が大規模な署名運動を行い、ぎりぎりのところでTRMMの運用が継続できることになった。

TRMMはこんな紆余曲折を経ていたんですか。二周波レーダーや全球観測は悲願だったんですね。